L'hallucination 〜アルシナシオン〜

CASE:THIRTEEN - SideA & B -

第二幕

Side B

土曜午前、本郷は真駒内駐屯地の方から面会と言う事で会議室に呼ばれた。
めんどくせぇなぁ、と思いつつ、ノックをして名乗り、入りますと声を掛け
入室すると、これがまた上座の位置に二人…三十代ほどの男女が居る。

「北部方面隊、特科隊…第一とか十一ではなく狭い部署なんですがね…
 今まで悪魔退治などで動いていた部の…芝 弥須貫(しば みすぬき)と申します
 こちらは…」

と言って女性の方が

「同じく特科隊の副である、狩 治佳(かり・はるか)と申します」

「あー、北海道警察警備課内特殊配備課の課長やってます、本郷 洋光であります…
 それで今回はどのような用件で…」

「いえ…ここのところ手荒い物を含めて貴方方にだいぶ動いて貰っていた訳ですが
 まぁお陰でこちらも隊員の損耗を極力防げていますし…先日の
 動物センターですか…そちらの方も良くやってくれたと思います…」

本郷は頭を掻き

「立派に職務を果たしたとは言え機動隊員にも苗穂の自衛隊員にも
 犠牲者や怪我人は出してしまいましたがね…」

「こちらの見立てではもっと事が大きくなる予想もあった物ですから…
 最小限に防げたと思いますよ…」

「どうやってその見立てを出しているんです? 藻岩山封鎖のあれ以来
 正直不思議でしてね」

「そういう事を含めた「特科」だと思ってください、情報収集に余念はありません」

「そーですか…まぁ何の巡り合わせか関わった人物の成長も促していますし
 こちらもこちらでそれなりに収穫はあるからいいんですがね…」

そこへ狩が銃弾を一つ持ち本郷に提示する

「これがどうやら今回祓い以外の犠牲者を押さえた最大の要因と思われますが…
 これがどう言う手法で作られたモノなのか…ただこれをそのまま
 コピーしただけでは効力を発揮しない様子なのです、と言って、
 この弾丸の頭に彫られたこの印…これその物はだたの彫り物です…
 これの製法が知りたく…」

本郷はちょっと下を見て二人を見据え

「そりゃぁ、無理ですな、それに関して「何発欲しい」と言う事は私も
 口を挟めますが、これの製造に関する事は十条弥生…ご存じとは思いますが
 彼女の口添えがなければ動かせないことですんでね」

「そうですか…では、こちらでその弾が欲しい…と言っても?」

狩の言葉に本郷は片眉を上げつつ

「今後何か大量に使う予定でも?」

「あるかも知れませんわ」

「ま、そうですな…ないとは言えません…ですが…今十条弥生は
 出雲に出張中…彼女の意見も聞いてみません事にはね、何しろ発案者で
 最近までそれを一人で使いこなしていたのは彼女なんですから」

そこで芝が少し俯き、でも不敵な笑みで

「そうですか…仕方ありませんな…札幌が警戒区域内になったと言う事で
 こちらもこちらで色々研究はしているのですが、それをそちらには
 容易に渡せないのと同じ事…と捉えていいですか」

「別に綱引きの積もりは在りませんがね、ただ常々何の研究をなさっておられるのでしょうな
 とは思っては居りますよ、教えてくれまでは…ちょっと言えませんが…」

本郷は出来る事なら質問を一つしたかった、カズ君事件の際、与野家の封鎖を
いち早くやって弥生に現場検証もさせなかったと言う事は
「魔術の研究でもなさっておられるのでしょうか」という質問だ。
だが…それをすれば上手くはぐらかされた上に何か圧力が掛かるだろう予感があり
彼はそれを飲み込んだ。

芝は本郷に向き合った後しかし矢張り不敵に微笑んで

「…まぁ、それはそれ、これはこれと言うことで今回は治めましょう、
 今回の動物センター事件についてはその後の方も宜しくお願いしますよ、
 既に国交省にも連絡が行って前向きに検討されているようですし…」

「どうも魔階(フロア)って奴は大人数を受け付けないようなんで、済みませんな
 こちらにも一旦事件を治めた者としての責任もありますから」

狩 治佳がこれも不適に、席を立ちながら

「ご健闘をお祈り致しますわ」

本郷が頭を下げて返礼し、その間に二人は会議室から去った。
本郷は会議室を出て特備課に戻るまで一言だにしなかった。



時間にして午前十一時、特備に戻った本郷はやっと一息深いため息をついた。
あやめがそんな本郷に

「そんなに緊張しました?」

「…オレの勘がアイツらただモンじゃねぇと言ってるよ…」

「そうですか…それより…国土交通省の方から連絡がありまして…
 どうも今回派遣できるバスターは…一人…との事です」

「ハァ? 舐めてんのか? 討伐隊は普通五人編成、
 大掛かりな物で二十人編成という話だがよォ?」

「…どうも「強力な者が潜んでいるようではあるが、通常編成フロア」
 と言う事でこちらにも祓い人が居るしと言うことで一人と言う事に
 落ち着いたようですよ」

「おい、アイツら今弥生が出張中って事知っててそれ言ってんのか?
 …くっそ…じゃあ次は俺の番だな…、お嬢ちゃんもかわいいも今日は
 授業があって昼過ぎにならないとこっち来られないらしいし…
 昼抜きで弥生のマンションまで集合、ダイニ辺りで軽く済ませて
 昼には突撃な、向こうにもそれ伝えとけ」

「判りました…でもホントに本郷さん行くつもりですか?」

「たりめーだ、部下であるお前が先にフロアとやら経験済みっていうんじゃあ
 この先俺がこの手の事件の指揮執るったって何も判らねぇままだしな!」

あやめは苦笑しつつ

「じゃあ、向こうにもその旨伝えますよ」



そして十一時半頃、本郷・あやめが待つマンション入り口(向かい合わせで二箇所在る)
の東側で待っていた時だった。
南側を向いていたので後ろから制服姿の葵が「おまたせー」とやって来た。

「おし、お嬢ちゃんは八軒駅から来るだろうから南側にでておくか、
 六月だってのに今日ちょっと日陰が涼しすぎるぜ」

天気はいいが、北海道は雪こそは降らない物の六月でも結構冷える時がある。
三人が日向で待ち続けていると、お昼に十分前と言う頃、裕子が電話をしながら
矢張り南側からやって来た。

「暢気なモンだなぁ、お嬢ちゃん」

「ええ、ああ、申し訳ありません、「あの方」からの直通で中々益のある情報も
 あった物ですから」

葵が

「あの方って?」

あやめがハッと気付いて

「もう毎度名前だけはいつも見ているあの人ですか?」

「はい、(手で塞いでいた電話口を開いて)今回の後始末人、外での監視係含め
 揃いましたわ、では、今から二時間と言う事で宜しくお願い致しますわ」

「まさか…その派遣される一人って…」

あやめの呟きに、マンションの余り目立たない壁に何か空間的な渦を巻き
「穴」のような物が開き、そこから一人の人影がやって来た。
日向からでは暗くて見えないその人物、シルエットからの第一印象は「細い」だった。

そして全員の居る日向の方へ向かうにつれ見えてくる詳細、
女性物のスーツ・スラックスにブラウスもそれに合わせた女性向けの物、
ブラウスの開いた胸にはペンダントが光るが、それは勾玉。
そして、左手には日本刀を改造したような刀を持っていた。
イツノメのような大きな刀では無いので、反りは上にしていて、
そして見えてくる顔は、整っては居るが物凄くキツイ目つきにソバカス、
目がだいぶ悪いのだろう度のきつそうなメガネには何らかのメカニックが
右側面に邪魔にならない程度の大きさで着いており、真ん中から何となく分けた
髪の毛を何となくショートカットにしているような、二十代中程の女性だった。

「裕子って誰?」

「あ、はい、わたくしです」

「あの時は悪かったわね、貴女のお陰で最悪の事態は防げたわ」

といって握手を求めてきた。
その表情は微笑んでいて、険を取ればそこそこ魅力的ではあるかも知れない。
…にしても目つきは悪いw
彼女は改めて全員に向け言った。

「何か半分担当にされたから派遣されたわ、百合原瑠奈よ、宜しくね」

全員がそれぞれ自己紹介をすると

「あの女は出雲に出張らしいわね…残念だわ、こう言うすれ違いは」

弥生のことだ、弥生は弥生で彼女の存在を気にしていたし、
やはりこう、ライバル的な何かを感じるのだろう。
百合原瑠奈の振る舞いは…まるで弥生から「享楽さ」をそぎ落として
真面目一辺倒にしたような、鋭さだけを残したらこうなるって感じの印象であった。

「言っておくけど、あたしはバスターの中じゃあそれほど強い方じゃあないからね」

ええっ、と全員が声を上げる。

「実力だけならS級と言われていても上がったら上がったで面倒だからA級で留まってて
 更にその上のSS級なんて神とも渡り合えるのは来ないわ。
 そう言うのが来ると言う時はもうこの街が魔界化一歩手前みたいな事態になってからね」

本郷が困ったなという風に頭を掻き

「だが…それでもお前さんが選ばれたには情報担当者になった以外にも理由はあるんだろ?」

瑠奈はちょっと意外そうに本郷を見て

「その通り、あたしじゃあなくてあたしのパートナーがね、今回のボスになるだろう
 敵に対しては結構な強さを発揮できるオマケに……ああ、そうだ、現場に向かう前に
 みんなにこれを渡しておくわ、基本的なOSしか入ってないけど…」

それは腕に装着するタイプの小型PCだった。

「悪魔召喚プログラムに派生する追跡・ターゲットロック機能もある、
 それがあれば基本余程相手が特殊技能を持ってたり反射の特徴やスキルを
 持って居ない限り百発百中になるわ、特に中〜遠距離攻撃をするなら必須
 そしてこれが最も大事、自分の命が尽き果ててから選択を選べる。
 自分の今までの経験を幾らか捨てて入り口で体力消耗状態で復活とか…
 でもそんな事したら損よね、折角積み上げた経験失うなんてさ。
 うちの子の最大の売りはそう言うデメリット一切なく
 完全な状態で生き返らせる能力を持っていること」

皆が(何故かあやめまで)それを装着しながら驚いた。
死からの完全復活、そんなスキルがこの世にあるのか、と。

「恐らく今回のボスはケルベロス…とはいえ、アナタ達も見たんでしょう
 ライオンのような姿の悪魔では無い、もっと特殊なケルベロスよ、
 動物の命に関して特に崇高な目的も何もあった物ではない召喚劇の名残には
 大体コイツ…ほぼ90%間違いない、そしてソイツは強いわよ」

葵がその言葉の一つ一つを飲み込みつつも、

「二時間って制限があるんだよ、早く行こう、勿体無いよ」

瑠奈はそんな逞しくも純粋な少女の心配顔に笑みで応え

「現場に着いてから、アナタ達祓い人には教えなければならないことがある
 ああ、普通の警察の人は意識しなくていいわ、祓い人オンリーね」

「ということは…魔階(フロア)での祓いの気の操り方、と言う感じでしょうか」

あやめの質問に瑠奈は真剣な表情で

「そう、それを伝え忘れたばっかりにあの女に大変な借りを作ってしまったわ、
 それでもやり遂げちゃったんだから凄いんだけどさ」

「あやめさんが素早く揮発するそれに気付いてくれたお陰だよね」

「うん、まぁ…割とずっと弥生さんの側に居たのが功を奏したというか…」

瑠奈はその話を聞き逃さず

「…と言う事はアナタは鍛え方次第によっては祓い…とはまた別系統だけど
 バスター的な能力は持てるかもね、今回突入するそちらの本郷さんも
 とりあえず見立てて置くけれど、今後「日常」と「非日常」が
 もっと曖昧になる時が来るかも知れない、その時のために…
 今魔界と玄蒼市では翻訳スキルなんかをある程度警察の中でも特別に選ばれた人に
 訓練することも視野に入れて検討中なのよ」

と言ってから「さ、向かいましょ」と皆に歩くよう指示を出す。
新川通を渡ってダイニを通り過ぎ、空き地を過ぎたら直ぐそこが現場だ。

「…ここね…なるほど…確かに歪んでる」

「お昼どうするの?」

葵の質問に

「あたしとしてはこのまま突入してやることやって余った時間で済ませるなら
 済ませたいと思ってる」

確かに時間制限アリの彼女らしい選択だ、ちょっとお腹は減ったけど、
みんな我慢してそれに従うことにした。
そして、一見工事現場に見立てたそこの警備員さんにあやめが、

「あの…今からちょっとこの世の物じゃないような風景や生き物が見えるかも
 知れませんが…迂闊に話しかけず、話しかけられたらフレンドリーに
 応えてあげてくださいね」

「は?」

「判らないでしょうけど、直ぐに判りますから…w」

あやめの言葉に瑠奈が早速翻訳の魔法を使う。
学校の時は阿美が唱えて門を触れて開ける、と言う手順だったが、瑠奈は
魔法を唱え(物凄い早口だった)それを投げるようにすると、その魔法の波が
建物全体を覆うように広がって行くのが誰の目にも判る。

そして五人が建物に入って行くのを警備員が見送ると、そこには確かに
小さい猫が直立して剣を武装しているようなのとか、小さい緑色の犬とかが
居るのだ、犬に至っては浮いている…警備員は目を疑いつつ
あやめに言われた注意点を念仏のように心の中で唱えた。

「場所はお分かりですの?」

裕子の問いに

「ええ、もうあそこしかないって感じで」

「魔法陣?」

葵の問いに瑠奈が

「外れ、その下の階の…ちょっと広い部屋ね」

「ああ…円行さんとケルベロスが居て始末された…」

「そういう、怨とか暗い心、祓いやバスターの力にも反応しやすいのよ、
 すんなり話が終わったなら魔法陣の場所が出入り口になったんでしょうけどね」

「ふ〜ん、さすが詳しいんだね」

「これで飯食ってるからね、こっちも必死だわ」

話せば話すほど弥生に似た…でも弥生から柔らかさを90%削いだような人だ。

そしてその部屋の前に来た。
ここで瑠奈が裕子と葵に

「いい? 今からあたしの言う言葉を一言一句発音もそのままに覚えなさい。
 と言うだけだと不親切だから、紙に書いてきたわ、発音記号付きで」

裕子と葵が「これ何語なんだろう」という感じでぶつぶつ唱え始める

「これはあたしには用無しの呪文だから例として言うわね」

といってその言葉を流暢に、でもゆっくり目に喋って見せた。
なるほど、と二人ともそれぞれの工夫で流暢に言えるように少し練習してた時だった。

あやめのスマホに着信が。

「弥生さんからだ…何かあったのかな」

『あの女そっちに居る?』

何て言うか、勘の鋭い人だなぁ…と思わずあやめは呟いてから

「ええ、目の前に居ますよ、変わりましょうか」

すると瑠奈がちょっと大きめの声で

「ちょっと一旦電話切ってくれる? こっちから掛け直すって」

「…と言う事で、掛け直すそうです」

瑠奈はすぐさま、メガネ型端末を操り弥生に電話を掛けたようだ
「あれ、電話にもなるんだ…」と現場組は感心した。

『もはや直でお目見えすることは期待できない運命とは思いつつ、
 ちょっとアナタに直で進言したいことがあってね、こちらで起った事件以外に
 他で起った魔の出現に関してもモニタリングってしてるのかしら?』

瑠奈は一瞬考え

「それはあたしの領域じゃあなくて檜上さんの領域だけれど…
 日本全国隈無くとなると大変なのでログはあると思うけど、…リアルタイムで
 全てを掴んでるとは言い難い状況かも、何しろあっちも二人しか居ないから」

『そう…実は私今日ふと思ったのだけれど、魔法陣展開騒ぎの後の魔階(フロア)が
 開く時、他のタイミングが合えばどこかに魔もほぼ同時に出現するのでは無いか…
 っていう推論、理由は八岐大蛇は出現しそうなのにしてない、
 貴女と会話していると言う事はまだ貴女は魔階へは突入していない
 …これを…実証出来ないかとね…』

会話は何となく漏れ聞こえていた、みんなもなる程と思った。
百合原瑠奈の表情は「やはりあの女侮れない…」と言っている。
ライバル心を燃やす表情だったが、努めて冷静に

「…判ったわ、ただし魔階を開いてしまうともう連絡は取れないからお互いの判断でね
 そして貴女にも…もし今度魔階騒ぎが起った時のために、祓いの力を
 魔階でコントロールする呪文を教えておくわ、余計なお世話などと言わずに
 聞いておきなさい、いいわね?」

弥生に対してこの強気発言…スゴイ…

『判ったわ、ドンと来なさい』

そこで今度は瑠奈はそのアルファベット化した綴りの一つ一つをいい、
更にそれの発音記号も一つ一つ言い、そして最後にその全てを
流暢に「例」として示した。

そんなんで伝わるのか…と思ったが、瑠奈のメガネ型デバイスの向こうから
聞こえて来る弥生の呪文の詠唱は、確かに瑠奈の例そのままであった。

『フフン、覚えてやったわ、有り難う、これで次は楽になるかもね』

「こんな事で借りを返したとは思ってないわ、また機会があったらね」

『ええ、出来ればお目にかかりたい物だわ』

「こちらこそ…では…」

瑠奈は通話を終えた

「フィミカ様ですら覚えるのに手間どい…まぁ、あの人は特殊が過ぎるか…
 沙織と宇津女の二人も次第に次第に慣れて行くところから始めたというのに、
 何て女…間違いなくSS級だわ…ああ、沙織と宇津女は四條院と天野ね。
 (裕子と葵に)もうそろそろ、とりあえずでも唱えられる所まで持っていった?」

「とりあえずこんな感じでどうでしょう」

と、裕子が先ず言い、次に葵が言ってみせる。

「…うん…、多分行ける、その紙、持っていなさい、次の機会でまた使えるように」

二人がいい返事をした所で、問題の部屋のドアを開けた。
そこは、片付けが一度済んでキレイになって居る物の、真ん中ほどに何か
碑文のような物を刻んだ碑石があり、その前には、葵やあやめは見たことのある
「魔階案内人」が居た。

「あやめさん、少し離れるか…出来れば一旦建物の外に出て、
 巻き込まれるかもしれないから」

「あ、うん、判った葵ちゃんも、みんなも、しっかりね」

それぞれがあやめの言葉に応え、あやめが建物の外に出て外からこちらに
手を振ったのを確認してから四人はその部屋に立ち入った。

「お待ちしておりました、百合原瑠奈様、そして…この間見掛けた子も居ますね」

魔階案内人は瑠奈を知っていて、葵も知っている、こないだの学校のと同じ奴?
瑠奈は事も無げに

「今回のあたしは特別だわ…この四人で頼むわね」

「この魔階は結構厳しいですよ、本当にその四人でいいのですね?」

「構わないわ、あたしはその為に来た」

「では…12000魔ッ貨…宜しくお願いします」

瑠奈は苦笑気味に笑って

「やっぱり中の上から上級向けか…判ったわ、プレートを頂戴」

「へい…毎度…では、御一行のお帰りをお待ちしておりますよ」

四人がプレートの前に立ち

「いい? あたしがこの門を開いたら裕子も葵ももう一度あの呪文を唱えなさい
 中に入ってからでないと意味を成さないからね」

裕子と葵が頷く、本郷はスライドを引き一発目を装填し、残りの弾丸や
換えのカートリッジを確認した。

そして、門は開かれた。


第二幕  閉


Case:Thirteen 登場人物その2

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