Sorenante JoJo? Part1

Episode2
第一幕 開き

ハーイ、あたしよ、アイリー。
なんていうかさ、謎は謎のままなんだけどジョーンが居る風景にもだいぶ慣れた。

そりゃ、知らない人だったわけだし、おトイレには行かないし、寝るときの呼吸が
極端に少ないし、今でもだいぶ謎なんだけど、わかんないモンね。

教えて教えてーって言うことも出来るんだけど、そこはホラ、ね

やっぱり他人の人生じゃない?
あまり突付き回すのも失礼だし。

…え、なにルナ?
話が横道って?

うんもぅ、物事には順序があるじゃない。

ジョーンは初日からずっとあたしたちに(男連中にも)ご飯作ってくれてる。

イタリアの家庭料理なのかな?

野菜や魚なんかがメインであまり肉を使ってないの。
バランス取れてそうだし美味しいからいいんだけどね。

…え?  また横道にそれだしてる?

うーん、難しいなぁ、ルナはァ

横道ついでだけど、ジョーンは食事も余りとらないのね、
朝チョット食べて、後は夕食だけ。
それであんな体になれるのかなぁ?

おっと、怒られないように本筋本筋。

ジョーンは最初凄く目覚めの早い人だった。
ちょっとした物音ですぐ起きるみたいで。

…ところが一日一日過ぎてって、だんだん寝る時間も長くなっていったのね。
それでもあたしたちより早く起きてたわけだけれど。

ウインストンから聞いたけど、あたしたちがスモーキンの一件で
ジョーンとチョット深く関わったあの日は
ケントの成長にも一役買ったんだってね、

彼女は彼女なりに、つい先日まであたしたちに対し警戒というか遠慮をしまくってた

そういうことになるのかな。

表面は凄く穏やかだけど、きっとタイヘンな人生だったんだろうか。

でね、今日、今。

ジョーンが起きてこないのよ。
ルナが冷蔵庫の中身を見て困ってるし、あたしも困っちゃう。

何って、あたしたち料理まともに出来ないのね。
パスタの缶詰とか、余り加工しないでいいようなものばかりだったから。

冷蔵庫には食材が一杯入ってるけど、
ちゃんと調理しないと食べられそうにないものばっかり。
ここ数日買出しはジョーンの役目だったから、インスタントなものが一切ない状況。

「困ったわね…缶詰パスタの一つや二つくらい買ってきたっていいのに…」

ルナは去年までバリバリ大学生、学年でも上位の成績だった。
勿論殆ど一日勉強漬け。
母親は早くに離婚しアメリカだそうで、父親が何とか育ててきたけれど
料理だけは教えられなかったのね。

…え?
あたし?
まだ19だし遊びまわってたからなぁ…エヘヘ、

まぁ、つまりジョーンが起きてこないとご飯作れないよーって状況なの。

「起こしましょう、もう、それしかないわ。」

ルナが寝室へ。

狭い寝室にシーツで三つに間仕切りして一番手前がジョーンのベッド。
…声が聞こえるよォ?

「ジョーン、オキテクダサイ、朝ハ活動ヲ始メル時間ノハズデス」

この声って、オーディナリーワールド?
シーツ越しにはシルエットがぼんやり見えるだけなんだけど
(スタンドって特例じゃない限り一般には「見えない」わけだから
 スタンド使いのあたしたちでやっと「ああ、居るな」と思えるくらいなのね。
 そもそも普通の肉体って訳じゃないんだから本当に影が出来てるっていうよりは
 「あたしたちがそこに居ると感じている」影が見えているってところなのかな?)

「…ん…もう少し…いい夢を見てたの…何年ぶりかしら…だから…もう少し…」

ジョーンの眠そうな声だ。
色っぽい声してるなぁ。
でもまた寝てしまったらしい。
あたしルナと顔見合わせた。

ジョーンを起こすことより、
「オーディナリーワールドをちゃんと見たい」
って言う興味。

先日のスモーキンの時だって、殴る瞬間、とかはっきり見えたのそこくらいだったし
床を一瞬消した時は半分ジョーンに重なってたし。

「ジョーン…ジョジョ…」

オーディナリーワールドが困ってる。
本体とはかなり独立したもう一つの「存在」みたいになってる?
ジョーンは寝ているのに姿を現しているわけだから、間違いないんだろう。

あたし、シーツ(のカーテン)を一気に開けた。

「ジョ…」

寝ているジョーンを揺さぶるように手をかけているそれは
まさしくきっぱりはっきりすっきりどこまでも紛れもない
オーディナリーワールドだッ
女性型で鎧を身に付けてるような、でも実体じゃない。

「オーディナリーワールドだぁッ♪」

あたしと目が合った
(甲冑のデザインでパーツとしての目が見えないけれど、そう感じた)

「見られた…ッ!」そういう表情になって、顔を紅潮させるオーディナリーワールド。

一瞬の間が空いて、跡形もなくオーディナリーワールドは消えた。

「ああん、やっと「見た」のにもう消えちゃったぁー」

「…ショックだわ、本当に恥ずかしがってる…」

ルナはジョーンが出し惜しみをしているのだろうと思ってたみたい。
確かに、強いモンね。

「本体もどこか可愛いとこあるのに、スタンドはもっと可愛いねぇw」

「…信じられないわ、こんなに強い個性を持つスタンドなんて。
 一種の多重人格なのかしら…興味はあるけれど…それより朝食の方が問題だわッ」

ルナがお腹を押さえた。
お腹すいたんだねw
あたしも空いてるけど。

「ジョーン、起きてよぉ、
 あたしたち「食材」からじゃまともな料理できないからさぁー」

「イギリス人の半分が好きで半分が嫌いな「マーマイト」すらないわ、
 あたしは嫌いだから食べないけど、今それでもいいから欲しいくらいよっ」

ルナ、マーマイト嫌いなんだ、へぇ、デモなんかチョット面白いw
余りこう状況になったことないからw

「…ん…なぁに…? オーディナリーワールド…さっきもいったでしょう?
 ……お願いだから…」

そういって顔を寄せていたあたしの頬に手を当てた。
ジョーンはまだ目覚めては居ない。
目は瞑ったままだし、伝わるのよ、全然寝ぼけてる、
あたしをオーディナリーワールドと誤解したまま彼女がどうしたかって言うと

「ちょ…ちょっと…!!」

ルナが声を上げた。

ズキュゥゥゥウウウン

キスをしたのだ。

「ちょっと、あなた何してるのよッ!!」

ルナが間に割ってあたしを引き離した後ジョーンをゆさゆさゆさゆさ揺らして起こした。
すっごい眠そう。 目が半分閉じてる。

「…ほぇ?」

「「ほぇ」じゃあないわッ! あなた自分が何したかわかってるのッ!?」

「ああ、ルナぁ、別にあたしなら気にしてないよォ、舌入れなかったしねw」

「あああ…(ルナは顔を真っ赤にした)…なんてことッ」

「…ああ、アイリー…ごめんなさいね」

すっごい眠そうだけど、とりあえず理解はしたみたい。

「ううん、別に、このくらい挨拶の範囲じゃない?」

「あなたマジ? マジでそれ言ってる? ホントに気にしてないの?」

ルナが執拗にあたしに問う。

「寝ぼけてたんだもの、仕方ないじゃない。」

ホントに気にしてはいない。

「…信じられないわ…口を合わせるキスが挨拶だって言うのもそうだけど…
 …ジョーン、あなた毎朝そんな風にしてるわけ?」

「……まぁ…ええ…そういうことも…」

強烈に寝ぼけてる。 何か可愛いw

「究極の自己愛…いいえ、普通ならそうかもしれないけど、
 あれだけ強い個性があるんだし…あなたひょっとしてレズビアン?」

それを聞いたジョーンは寝ぼけてるけれど、やっとちょっと表情が出来て微笑んだ。

「そういうわけじゃあないわ…今までずっと、
 そばに居たのがオーディナリーワールドだけだったから」

ジョーンがベッドから出た。
ルナが貸したパジャマ姿の彼女。
元々ルナが着てゆったりだから貸したんだけど、
ジョーンが着たらあれね、胸だけぱつんぱつんだねw

「…男性にしろ女性にしろ…恋愛はわたしには出来ないわ…無理。」

そう言って、

「(壁がけの時計を見ながら)…ああ、もうこんな時間なのね、ごめんなさい。
 今朝食作るわね」

彼女はキッチンに行った。

ルナはまだチョット混乱してるみたいだ。
純情なオマケにルナはスタンド使いになった経緯が経緯だから、
ちょっとでも性的な意味合いを含みそうなものには敏感なのね
それはまぁ、いつか話すから。

「…ずいぶん寂しい事言うんだなぁ、ジョーン。 美人なのに。
 そばに居たのがオーディナリーワールドだけだったとか。」

ルナもあたしのつぶやきにやっといつもの冷静さが出てきたみたい

「…そもそも彼女は幾つなんだろう、ウインストンと同じくらいかと思ったけど…
 何かもっともっと長い時間を歩んできたような深さを感じたわ…」

「あと、何人なんだろうねぇ?
 チョット色黒いからアフリカンも入ってそうだけど、
 でも顔立ちのそこここに西欧の形もあるしなぁ?」

「…それもそうだわね…まぁ混血なんでしょうけど…
 …その辺はあんまり突っ込むと失礼かも」

「なんかジョーンって、突っ込むに突っ込めない事情いっぱいありそうだよね。
 ミステリーっ」

「…空気みたいに普通に馴染んで来たけど、馴染めば馴染むほど…判らないわね」

何か本格的に料理始めてるジョーンの後姿を見ながらあたしたちはとりあえず隣の部屋、
事務所に向かった。

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「…朝からピザかね…」

事務所の食卓でポールがつぶやく。
あたしたちの目の前にはサラダとちょっとしたスープとそしてピザ。

「いいんじゃねぇ? けっこういけるぜぇー?」

がっつくケントは余りこういうことは気にしてないみたい。
やっぱジョーン、寝ぼけてるんだなぁ…w

ウインストンは東洋人のやるような手を合わせて日本語で
「いただきます」とつぶやいてから食べだす。
ホント日本すきなんだなぁ。
それって何?「ブシドー?」
以前聞いたら「違う、神道だ」といったけど。
わかんないわw

まぁ朝からピザとはいえ、ちゃんとそこにご飯がある。
神に感謝というより、寝ぼけてはいてもジョーンに感謝。

「…そういや、ジョーン君はどうしたんだね?」

ピザとはいっても、かなりあっさりと作られていて
チーズもソースもカロリー低そうなのを使ってあって、
ポールはまんざらでもなさそうに結構がっついてる。

「…強烈に寝ぼけてたから今シャワー浴びさせてるわ」

ルナがそういった。

「シャワーって言うより、彼女浴槽につかるタイプみたい。」

細かいことだけど。
少し間が空いて

「…それより疑問だわ、ジョーンって一体何者なんだろうって、急に思った。」

ルナがつぶやいた。

「…俺も思った。」

ウインストンが口を開いた。
いつも食事中は雑談しない人なんだけど、やっぱり男連中も相当気になってたらしい。

「え? そんな気になるかよォ? 別にいーんじゃね?」

…例外が居た、ケントは幸せな精神してるよなぁ、チョット羨ましい。
あたしだってルナに「バカバカ」言われてるのに気になってる。
そもそも気にしだしたのあたしだしね。

「…そういえば先日ジョーンの持ってた硬貨を処分したんだが…
 イギリス中の古銭商は彼女のことを知ってるだろうといわれたよ」

ポールのつぶやき。

「それって?」

あたしが聞く、ストレートに言ってもらわないとわかんないわ。
あたしが言いまわす分にはいいのよ、うん。

「…彼女が最初にその古銭商のところに顔を出したのが…43年前とのことだ…
 当時から見た目は20代真ん中…どういうことだろうね」

その言葉であたしたちは凍ったけど、それぞれ思った感想が違った。

「…やっぱりな、そのくらいの人生経験ありそうだと思ったんだ。」
ウインストンだ。

「…スタンド能力からするといつまでもその年代をキープさせることは出来そうだわね…」
ルナの冷静な分析。

「…ということは彼女は少なく見積もって70歳…か」
ポール。

「70ってオメー…つまり…ば…ババアかよォ?」
言わなくてもこれ誰言ったか判るよね…w

「ああ、呼吸が少ないのも代謝に関係してるかしら…
 …スタンド能力以外にも秘訣がありそう」
ルナが追加した。

「あんな70歳ならちょっといいなー、厳しくても「修行場」って処行こうかしら?」

「修行場?」

あたしの言葉にポールが聞き返してきたから、先日のスモーキンのこと話した。

「特殊な呼吸法の修行場? そんなとこがあるのか? イギリスに?」

ウインストンが聞き返してきた。

「聞かなかったわよ、あの時そんな細かいとこまで聞けるほど余裕なかったもん」

「ああ、あと…古銭商が言ってたんだがね…
 「彼女は14世紀のコインと共に生きた証人かもしれない」って言ってねぇ」

ポールが場に止めを刺した。

「…いくらなんでもそれは…」

ルナがつぶやいた。

「肉体的にスタンド能力で可能だとしても精神が持たないと思うわ…それに…」

それに?

「14〜20世紀初頭なんてペストは流行るわ魔女裁判があったわ戦争はひっきりなしだわ…」

ルナはそこまで言って、黙り込んだ。

「…でも…」

「彼女に真実を聞いてみないことにはなんともだね」

話が迷宮に入りそうになるとポールはいつもその扉をさっさと閉める。
そこんところ、思い切り良すぎと思うんだけど、いつもそれで
変な流れになりそうなのを止めてるわけだから、結構好き。
あ、好きって言っても、恋愛の意味じゃあなくってね。

そんなこんなでジョーンがやってきた。
トレーにティーポットと猫のご飯乗せて、足元には「早く頂戴よぉー」ってばかりに
ニャーニャー鳴いてる猫がジョーンの足にまとわりついてる。
かわいいw

あたしたちに紅茶を振舞うと、猫にご飯をあげるジョーン。
そんな平和な風景にバカが一人疑問をぶつけた。

「なァ、ジョーン、オメー70歳?」

ケントっていつもこう、思ったことはつい口にするの。
ウインストンとルナに思いっきり頭ぶたれて「何するんだよォー」とか言ってる。
当たり前じゃない、ホントバカね。

ジョーンはこちらに顔を向けていつもみたいに微笑んだ。

「そう見える?」

「見えねぇー」

「ああ、もうこの際だ…」

ポールが頭を抱えた、地味に気になって居たんだと思う、ケントがバカな質問したから
聞くべきだろうって思ったんだと思うのね。

「ジョーン、古銭商は皆君を覚えているだろうと言ってたんだよ、指紋から判る、とね」

ジョーンはそれを聞くと、夢中にご飯をがっつく猫の頭や背中を撫でながら

「…指紋かぁ…気にしたことなかったから拭き忘れちゃった
 それにしても…覚えられてるものなのね…」

「君が14世紀の硬貨と共に生きた証人かもしれないと彼は言ったんだ、
 ジョーン、君は14世紀の人物なのかね?」

「14世紀…? まさか…w」

それを聞いてあたしたち正直ほっとした。
70歳くらいっていうのは間違いなさそうな気もするけど、ルナとウインストンは
そのくらいなら納得できる範囲みたい。

でもジョーンが今度はその場の止めを刺した。

「15世紀よ。」

いつもの静かな微笑で普通にジョーンが言った。
ここロンドン? って言うくらい辺りが静まり返った気がした。

「…笑えない冗談だわ。」

ルナが切り捨てた、でもやっと切り捨てたように言った。

「冗談だよなァー、アハハ。 良かった、オレ一瞬どうしようと思っちまったw」

流石のケントもジョーンが500歳過ぎてるなんてのは受け入れがたかったようだ。
あたし? この場はケントに賛成だし同感。

「まぁいいさ、女に年を聞くなんて無礼をしたな、済まなかった。」

ウインストンは食事を終え、また手を合わせ「ご馳走様でした」と言った。
そして真相がどうあろうと関係ねえって態度で示した。
彼のこの辺の「最低限のデリカシー」がチョットいいのよねw

「わたしが20代真ん中に見えるのならそう接していいのよ、それこそ
 年なんて関係ないって言う態度でも、というよりそれがありがたいわね」

彼女の少ない手荷物の中に市民登録証というか身分証明書があって、
あたしたちにそれを示した。
ジョーン=ジョット 女 1981年生まれの国籍はイギリス。
彼女はこれを真実だとは言わなかった。

「役所の記録は全てこれにしてあるわ、
 別なところからつつかれるかもという配慮からだけれど
 …だから記録からわたしの正体を探るのは不可能よ。」

ポールは後で役所で調べようと思ってたみたいで、チョット気まずそうな顔をした。

「…いいよ、あんたが経験豊富なスタンド使いだって言うのがオレ的には重要だ。
 だが一つだけ聞いていいか? 呼吸法のことさ」

「ええ、なあに?」

ウインストンはもうジョーンの正体の話はやめようと決めたみたい。

「それはどこにあるんだ? イギリス国内じゃあないよな?」

「ああ、場所までは言わなかったものね、イタリアよ。 ベネツィアにあるの。
 あとは…チベットの山奥に総本山があるらしいのだけれど、そっちは知らないわ。
 ベネツィアのほうは…70年ほど前のスピードワゴン財団についての記録をよく読むと
 ジョセフ=ジョースターに関連してチョットだけ内容に触れられるわ」

「ジョセフ=ジョースター…また大人物だわね、
 確かに若い頃厳しい修行をしたって伝記か何かで読んだわ」

ルナだ。

「スピードワゴン財団って聞いたことはあるけど、そんなことまで勉強したんだ」

あたしが思わず言うと。

「スピードワゴン財団の設立が100年ほど前だもの、近代史に分類されるわ
 あの時代は二つの世界大戦が絡んでるし、創設者のR=E=O=スピードワゴンが
 イギリス人にもかかわらずドイツとも技術的提携をしてたって言うんで
 ちょっとした闇歴史なのよ?」

ああ、難しい話になってきたw

「…財団とナチスの関係は確かに技術的な提携ね、
 元はメキシコ国境で彼が失踪してナチスが保護した後に
 一つの宝石の争奪にまつわる対立から来てたようだけれど。」

「…なに、ジョーン、詳しいわね。」

「ええ、まぁ…w
 闇歴史って言うのは「表向き」なのよね。
 提携しないと片付けられない「事件」が絡んでたのだけれど。」

「…どこでそれを…ってその時代まさか生きてたから…?」

「”生きてた”ってだけじゃ知りえないだろ?」

ルナの推測にウインストンは言った、確かに。 そうだよね。

「…といって関わったわけでもないのだけどね、まぁ…歴史が動きそうな事件は
 知っておきたかったから。」

ジョーンがそういった、嘘は言ってない感じ。
「純粋に知りたかった」
そういう雰囲気がある。

「へぇ…じゃあさ…」

ルナは幾つかの世界的事例で20世紀初頭の大事件についてジョーンに質問を始めた。
ああ、学生の頃の向学心が戻ったみたい。

そういえばジョーンもね、色々本を買い込んで読み込んでる。
ルナの教科書とかの資料も。
先日もスモーキンの事件の後宝石関係というか「石」にまつわる本とか買い込んでた。
ジョーンが言うには
「科学的な組成や効果をなるべく詳しく知っておかないと
 上手くすばやくスタンドで操れないから」
ということなんだけど。

ぽかーんとしてたケントが。

「まー、いーやなァ。」

彼なりにチョット考えてたらしいけど、あきらめたみたい。
ケントですらあきらめたんだ、そんな感じでポールが紅茶を口に運んだとき。

電話が鳴った。

位置的に近かったからジョーンが電話をとった。
いつもはポールかルナの役目だから皆チョットびっくりした。

「はい、こちらK.U.D.O探偵事務所でございます…はい、捜査のご依頼ですか?」

お、仕事?

「…ええ、本日11時ですか…?」

ジョーンは受話器の口を塞ぎ一呼吸置くタイミングを取った。
零細企業だもの、暇なのよ、でもジョーンは徒にメモ帳を開くと音を立てたのね
スケジュールの管理でもしてるかのような「そぶり」

「…お待たせいたしました、
 本日は10時30分より一件依頼の方が見えられるようなのですが…
 お急ぎなのでしょうし、こちらの方でも都合を付けますから…9時半…
 つまり今すぐお見えになられないでしょうか?
 迅速であればそれだけ事が大きくならずに済みますし…」

おお、何か芝居してる。
でも電話の相手も急ぎは急ぎだけど「今すぐ」っていうのは仕事の関係なんだろう、
難しいみたい。

「…ええ、当方は確かに重大事件を扱うような探偵事務所ではありませんが、
 依頼にいらした方々の願いは一緒です、事の重大さには大小はありません。
 いますぐいらしてください…当方は何でも屋探偵ですが、
 それだけにあらゆるノウハウがあるといってもいいですから。」

うわぁ、大風呂敷というか、凄いこと言ってるなァ…w
あたしなんかは結構楽しんでそれを見てるけど、ポールやルナは
断られやしないかとはらはらしてるみたいw

「…そのようによろしくお願いいたします。
 はい、必ず秘密は保持し、迅速に依頼を遂行致します。」

相手が電話を切るのを待って、ジョーンが受話器を置いた。

「今すぐ食器そのほかを片付けて、
 9時半は移動手段的に無理だけれど9時45分には見えられるそうだから。」

おお、何か大風呂敷&勿体付け&信用作戦成功したみたい。
しかもなんだか重要事件っぽいよ?

「ジョーン、君、今度から電話番になってくれないかね?」

ポールが言った。
ポールのスタンドは交渉スタンドだけど、電話線越しにはその効果がないからw

「っていうか…余り俺たちを持ち上げんなよ…手に負えないヤマだったらどーするんだ」

「やり遂げてみればいいわ、命を懸けてね。」

ウインストンの台詞にジョーンがすっごいことを言った。

「…わたしなりにあなたたちの能力を考えたの、かなりバランスも取れているし、
 かなりこういった稼業に「向いてる」と判断したわ、できるはずよ、いいえ、できる。」

なんか、気が引き締まるなァ…緊張しちゃう。

「上を見なくちゃたどり着けない所がある。 そーいうことね」

ルナは純粋にジョーンの言葉を「格言」というように受け止めたみたい。

「人生は手探りよ、あたりは闇だから自分の周りしか判らないけれど
 遠くに小さく光る星のように地平線の向こうに目標があるものよ。
 あなたたちはそれを目指さなくてはならない。」

「それってなんだよォー?」

「向上心と希望は失うな、ということだよ、ケント、いーからオメーは引っ込んどけ」

おお、ウインストン、今日は何かカッコイイなぁ。

ひょっとしたらこの事務所始まって以来の大事件かもしれない、
確かに気は引き締めないとっ


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