Sorenante JoJo? PartOne "Ordinary World"

Episode:Four

第一幕 開き

「…ああ…もう…やめてよ…ジョーン…」

「…いいじゃない、少しくらい…」

のっけから百合色満開?
と思いつ、ここは事務所、仕事待ちで
皆で詰めてる時にジョーンがルナの髪を櫛で梳こうとしたのね。
ハーイ、アイリーだよ。

事務所の皆がその光景にビックリしてる、
百合色満開だからじゃあなくてw

仲のよい女の子同士ならありえない光景じゃあないし、
実際寝ぼけが酷いときのジョーンの髪にあたしが
櫛を入れるときはあるしね、

その相手がルナだって事、
以前のルナだったら、本気で怯えて本気で怒り出してたろう。

しょうがないよね、人に汚されたっていう過去があるんだから。

いずれ氷河だって溶けるかもしれない、

そんな風にポールが昔言って、必要以上にルナに絡むのではなくて
時間に全てを任せよう、そんな風になっていた。

ルナだって、いつまでも人と殆ど関われないのは嫌だろうし、

そしてジョーンがあたし達の前に現れた。

確実に、ルナのココロは氷解してる。
だって、結局抵抗もせずジョーンの櫛を受け入れてるもの。
ルナはPCで色々やりながら、ジョーンが櫛で手入れのほかに
枝毛とか、長さのあってない場所なんかちょっと手入れもしてる。

ジョーンの肩にはリベラが乗っかってる。
リベラって人の背中を見ると飛び移る習性があるみたい。
あたしや皆は突然のことにビックリするし、
ルナはそんなに猫が得意じゃあないから
すぐ振り払うんだけど、ジョーンだけはリベラをそのまま
肩にのっけて生活してたりする。

ルナのブラウン系のブロンドは櫛で梳けば結構さらさらしてる。

本人、外見に特別な配慮はしていないようで、やっぱり基本的な
肌の手入れとか、髪の毛の手入れはやってる。

ただ、最低限の手入れのみでそれ以上のことはしてないだけ。

前の入れ替わり事件の後にジョーンはそれとなくあたしに言った。

「わたしが前例になるわ、そしてわたしが当たり前になれば、
 アイリーだって、誰だって肩を叩いたり手をとったりできるようになるでしょう?」

そしてジョーンが実践したのだ。

似た境遇を持つ二人だけに許された…今は「特例」なんだろうなぁ。

ちょっとジョーンが羨ましいかなと思ったそのときだった。
事務所の電話が鳴り響いた。

ポールが受話器を持つと、ジョーンも手を止めてそちらを見た。
ルナのPCにもメールの受信があった、
K.U.D.Oはサイトを開いてないけど、メールアドレスだけは
公開してるのね、多少の遠隔地からの依頼も受けているから、
写真なんかを送ってもらうのに。

「…ペットが行方不明…ですか?」

ポールの受け応えにルナがちょっと嫌そうな声で

「…うぁ…何の悪戯と思ったけど…きっとこれの事ね…」

つぶやいたルナのPCのメールに添えられた写真、
二十代から三十代にかけてと思う男の人の首にかけられてる

…ニシキヘビ…?(汗

「…はぁ、なるほど…アパート住まいで…3メートルの蛇が
 どこに行ったか判らない…
 それは困りましたな…、判りました、
 直ちに現場に直行いたします、住所をお教え願えますかな?」

ポールはそう言うけど、大丈夫、まっかしてよぉ!
ポールが交渉を進める間にあたしは「ベイビー・イッツユー」で
捜索を開始する。
何を探せばいいかもメールからわかるし…
うっは、でも蛇なのね…ちょっとなぁ…w

…うん、でも判った、殆ど身動きが取れてないけど生きてる
…場所もほぼ特定できたよ!
あたしは握った手の親指を立ててポールにウインクした、

電話が終わると

「よし、では狭い場所に挟まった可能性からジョーン君、
 怪我の可能性でルナは絶対必要だろう、聞き分けのあると思えない
 爬虫類と言うことで追跡調査のためにアイリーも必要だね、
 …まぁちょっと酷と思うが…女性三人組で行ってきてくれたまえ」

あたしらが立ち上がるとジョーンが言った

「大丈夫よ、わたしは爬虫類は特に苦手じゃあないわ。」

余裕の笑みで言う、さっすがぁ、ちょっと助かったw
そう胸をなでおろしたその時にまた電話が
今度の電話はジョーンがとった。
名乗りは省略w

「…ええ、家出…ですか?」

うは、またあたしの出番?
いっそがしいなぁw

ジョーンがとりあえずメールアドレスに捜索する人の
写真を添付して送るよう言うと、送られてきた写真には
そこにはまだちょっとあどけなさの残る
…そうだなぁ、15,6歳の男の子が映ってた。
名前も聞いてあたしが捜索を開始する間に
ジョーンが電話で聞ける限りの細かいことを
聞き出してあたしに教えてくれる。

正確な年齢、身長、体重、家出の直前に何があったか、普段はどうか、
何が好きか、何が嫌いか、居なくなった時間に行動範囲。
写真からじゃ見えない部分で、これはベイビー・イッツユーにも有益。
ジョーン、あたしの能力もよく判ってるなぁ。
まぁ、普通に捜査に必要なことなんだけど、ベイビー・イッツユーも
そういった細かい情報から的を絞るからね。
姿だけ判ってればってほど、人探しって簡単じゃあないんだよ。

少年は、家族と勉強や進路のことで大もめしたらしい。

「ん…いた…市街のどっかビル…までいかないかな、
 でもちょっと高いところの…階段を使って上まで登ってる。
 時々立ち止まってるみたいだけど…」

それを言うとウインストンが

「…このやろう…自殺する気か…?」

空気が変わった、そりゃ、まずいね。
あたしはビルの位置を教えた、どこ向きの壁の階段の何階部分に
いるかっていうのも。

「…ジョーンが欲しいところだが、ここは俺の風とケントの壁が
 最悪の場合を回避できるかも知れん、
 まだ最上階じゃあないし…あのビルなら走って俺なら2,3分
 ケントやポールでも5分ってとこだろう
 ポール、あんたも説得係だ、こっちは男3人組で行くぜ!」

「うっしゃ、4分でたどり着いてやるよぉー」

「…仕方ないね、命が掛かってるとあっては私も全力疾走だ」

「…また留守になるわね、帰ってからのジョーンの仕事が増えるわね」

出かける準備をしながらルナがそういうと、

「…じゃ、今回は同行してもらいましょうか…w」

ジョーンも毎回毎回では能力の無駄と感じたんだろうね、
こんなこともあろうかって隣から籠をもってきて
肩に乗っかってたリベラを中に入れた。
中でリベラがちょっときょとんとしてから
「なにすんのよぉー」ってニャーニャー鳴き出すけど

「うん…一人になったら寂しいくせに…そこも「貴女の場所」よ」

ジョーンが諭すと、聞いたのかなんなのか一瞬黙った。
たぶんあたし以外にも全員思ったと思う
「猫使いだ…」ってw

おっと、こうしてられない、男女二派に別れて、行動開始っと!

--------------------------------------------------

ひぃー、4分つったけどよぉ…やっぱきちぃな、
俺だよ、ケントだぜぇー

現場についてみると、ビルの外の階段を確かに誰か上ってらぁ

ウインストンは既に階段を追ってる、風があれば
ガキが落ちてもよぉ、とりあえず階段に戻すことは出来るし、
俺とポールはエレベーターで最上階まで先回りすることにした。

…途中で落ちる可能性はあるがよぉー

ポールが言うには
どこから落ちるか迷っているときは確実と思われる10階以上、
そうでなければ屋上まで上がるはずだってんだよな。
まぁ、間に合えば挟み撃ちに出来るなぁー

しかしウインストンの風は階段上がるときとか「風」で
楽できるからいいよなぁー
俺のトランポリン壁だとタイミングと射程とよぉ
訓練がまだ足りねーから下手したら俺がお陀仏だ、
練習しとかねぇーとなぁー

エレベーターで12階の最上階、んで階段使って屋上に上がっても
俺とポールはまだ息が上がってるよw
思わず目を合わせて二人で苦笑しちまったw

屋上のスペースは…誰も居ねぇ?
階段の方に走る。

「居た…11階だね…」

ポールが手すりから少し身を乗り出してガキの居所を突き止めた。
ウインストンも10階まで迫ってる。

「ジェイ=P=S君だね!?」

12階におりつつ、身を乗り出しながらポールがガキに言うと、
ジェイとかってガキは驚いた、んでお決まりの

「来るな! 来たら飛び降りる!」

やれやれだよなぁー

ポールのマインド・ゲームスが現れる。

「君の家族からの依頼で君を捜索してたのだ、
 いいかね?
 君は家族を心配させているのだよ?
 そこのところは理解し給えよ…」

スタンドの力ってーよりまず俺達は義侠に燃えた一般市民でもねーし
ずばりオメーを探しに来たんだよって感じでジャブだ。

ガキはよぉ、お決まりの
「親は何もわかってくれねぇ」とか
「自分の人生には夢があるのに別の悪夢を見させる」とか
「自由がない」とか
まー、おおよそミドルティーンの考え付きそーな文句を言うわけよ。
俺もちょっと前までそんな年代だったがよぉー

正直、うぜぇよ、俺個人の感想だが、多分ウインストンも
そー思ってるだろうな、大事なトコが抜けてっからな、こーいう奴はよぉ

ポールのスタンドもこういう手合いは若干苦手のようだぜ?
そりゃ、そーだ、理を尽くして説得なんて、
そんなのが通用するならとっくに親がやってるだろうからなぁー

ただよぉ、自殺を見過ごすわけにはいかねぇーし、
正義感ってーか、死にたいのに死ねないジョーンが200年だか
頑張って生きてンのによ、高々15年の自分の人生でちょっと上手くいかないからって
それで全部終わった気になれるのはよぉー

そりゃ、やっぱそーとー甘えだぜ?

まぁよぉ、俺も覚えがあるが、こーゆー時ってダービーの馬みてぇに
前一直線しか見えねぇよーに半分目隠しされたよーな状態だからな、

俺も覚えがあるだけに、うぜぇんだよ。

「そうか…では、落ちたまえよ、自分の人生に決着をつけるといい」

ポールが突然言い出した、
俺はちょっとあせったんだがよぉー、ウインストンが下から俺に目配せだ。
ああ、判ってるって、いつでも「壁」は出せるぜ、オメーも「風」大丈夫だろうな?

こっからは、だが芝居だ、ウインストンはこういうのをよく判ってるってーか

「おい、折角見つけたのにこのまま見過ごす気かよ?」

とかポールに声をかける。
本気で言ってるんじゃあねーってのは「風街ろまん」が待機してるからな
俺達にはまる判りさ。

「仕方ないだろう? 自分にはまだ色んな可能性もあるというのに
 何か一つだけが自分の道と信じてそれ以外を否定し
 自由がない、なんて、親の金で生きているのに当たり前のことを
 騒ぐのだからね」

ポールが言う、そう、ガキってのはよぉ、
多少の自由と引き換えに大人になるまでのよぉ、
「安全」ってやつを保障されてるもんじゃあねーの?
コミュニケーションってーかよぉ、そーゆーのが上手くいかねぇ
ってのはあるだろうよ、そりゃ、俺もいらいらする。
仕方ねぇんだ、親子っつったって別の人格を持った
別の人間なんだからよぉー

そいつもよぉ、冷静に自分が甘えてるって言うのは
頭の片隅にはあったらしいや、一瞬動揺した。

…ここでよぉ、一瞬ひるんだところを取り押さえたりするのが
王道ってやつなんだろーがよぉ、
俺達は違うんだなぁー。

動揺したそいつにウインストンは容赦なく風を浴びせた。

ガキが不意のことに「死にたくねぇ」って感じの慌て声であがきながら
バランスを崩し、そして一瞬落ちる格好になった。

「フォー・エンクローズド・ウオールズ! 跳ね返せッ!」

俺の壁がジェイとかってガキを受け止めると、屋上に向かって跳ね返した。
正確な位置はウインストンが風で調整して、屋上でもう一度
俺の壁が衝撃を受け止める。

正直、スタンドが使えねー一般市民にゃワカランやり方なんだがよぉー。

…俺達は屋上に行った。
そいつは一瞬死にかけた恐怖で固まってた。
(何故か無事なのにも頭がまわらねえ様子だ)

「さぁ、これで君は一度死んだね。
 一瞬でも死を味わったろう
 怖いよね?
 だが、君は生き残ったのだ、
 生き残ったからには君はもう一度道を探し
 何度でもやり直さなくてはね、
 死の感覚なんて、味わいたくはないだろう?」

ポールが語りかけ、ジェイを起こした。

「最初から自分の道が決まっててそれしか進まない奴は…
 そうだな、よっぽど恵まれてるか…
 余程自分を殺した不幸な奴だろうな。
 親の引くレールは実は結構分岐点があるんだぜ?
 大学は行け、とか、その後は何になれ、とか
 色々言うだろうがよ、そこはお前…
 分岐点ごとに自分で進路を曲げることだって出来るんだ。
 親だってまぁまず決心が固ければ押されるもんだしな」

ウインストンが言うとよ

「ただよぉー、とりあえず希望じゃなくてもテメーで働く
 トコまではやっといたほうが無難だぜ?
 一度働いた後なら文句いわねー事多いしよ、
 それでテメーである程度夢追う金があればなおさらだよな。」

「夢は金で買うものではないがね、悔しいことに、
 夢で人生の全てが賄える人間なんて一握りも居ないと思うね。
 王族は裕福かもしれないが、自由はない
 ホームレスは自由とプライドを持ってるかもしれんが
 人生の選択は決して多くはない
 学生の本分は学ぶことだ、自由は制限されるかも知れんが
 そのかわり、君の遥かな未来には無限の目標があるものさ」

ポールがいったそれは、いつかジョーンが俺達に似た事言ったな。

「ああ…俺の…なんてーか師匠みてーなのがいてよぉ、
 言ったんだよ
 俺達は皆手探りで真っ暗ン中進んでる。
 だけど遠くに星のように光る希望が見えるから
 どんな遠くてもそれを目指せって感じのよぉ」

覚えたてのその言葉を俺が噛みながら言うとよ、
ポールもウインストンもチョット「おっ」って顔すんのな、
いいじゃんかよ、

ガキが俺達を見回す。
ポールはその目の意味をわかってたよーだ

「…私たちも皆手探りで未だに迷いながら進んでいるよ。
 人生にそんな早くから決着に向かって一直線に
 進めるような人間は、まずいないと思うね。
 生きがいは生きながら少しづつ見つけるものさ。
 まずは帰って、家族とよく話し合うことだね、」

ジェイは観念したよーだぜ?

とりあえず、泣き出しそーなのを男三人で連れ歩いちゃ
犯罪みてーだもんな、どっかのカフェで落ち着かせるさ。

ほい、それじゃー女三人にバトンタッチだぜぇー

---------------------------------------------------------

ほい、またアイリーだよ。

モニターによるとあれからまったく蛇は動いてないし、
現場近くになるにつれメートル単位、センチメートル単位で
場所も特定できてくる。
なんてったって蛇じゃない?
ニシキヘビだから毒はないけど、3メートルの蛇がアパートのどこに居るとも
わかんないっていうのは住人にも警察にもいえなくて
「探しものならK.U.D.O」って話を聞いて電話してきたらしいよ

依頼者からそれを聞くとジョーンもルナもあたしを見て微笑みかけるの

嬉しいね♪
えっへん

さて、嬉しいのは置いておいて、
現場現場っと

そこは依頼者の下の階の下水管かな?
うーん、ターゲットも微妙なら居る場所も微妙だね…w

下の住人にだけは事情を話して、ジョーンがあえて「絶対大丈夫」といって
細かくモニターした部屋に行く。
住人の人には「一応もし万が一」といって部屋を締め出した。
スタンド使って壁やらなにやら一瞬壊すからね。

「オーディナリーワールド!」

前よりはかなりはっきりと、全身がちゃんと見える位置に
彼女は現れた。
お、これもジョーンがあたし達に馴染んできたっていう証拠なのかな。
小さいことの一つ一つがなんかちょっぴり嬉しいね。

オーディナリーワールドはまず「音の遮断」を施して
そして壁を殴りぬけた。

「なんかオーディナリーワールドの殴るときの音の響きって
 ギターをこう…ギュゥゥウーーンとか指を滑らしたりキィィーンとか
 ハウらせたりする音に似てるねぇ〜」

あたしが言うと

「…ああ、そういえばそんな音ね。
 なにかの音に似てると思ってたけど、なるほど、エレキギターの音か」

ルナが言う。

壁の一部が粉みたいになって散るとそこに下水管が現れた。

「…まぁ少しくらいと思うけれど…一応なかの水も浄化しておこうかしらね」

ジョーンがそれを言うとオーディナリーワールドは下水管に触れて
能力を使ってるみたいだ、ジョーン自身は少しくらい不潔なのは
構わないみたいだけど、ねw
あたしもルナも、ここの住人さんもいい顔はしないだろうしねw

そしてオーディナリーワールドはもう一度、今度は下水管を殴りぬけると
縦に半分割ったように開けて…うっひゃ…いたいた、蛇ちゃん!

オーディナリーワールドとジョーンが蛇ちゃんを下水管から引き抜くと
オーディナリーワールドは逆の手でもう一度殴る。

管が何で出来てるのかを察知してるのか、管はすぐふさがった。
とはいえ、ルナが言うには

「殴ったときに分子一個、戻すときに更に一個、欠けてるのよ」

だって、うーん、やっぱりよくわかんない…w

ジョーンは体や首に蛇ちゃんを巻きつけた。
うーん、エロスだねw

「…原因はこれね、」

ジョーンが指差すそれは脱皮しかけた皮だ。

「なるほどね…脱皮するのに狭いところを使って脱いだ経験から
 またやろうとしたけど…体が大きくなってたから動けなくなったって訳か。」

ルナが言うと、
オーディナリーワールドが蛇の神経を逆なでしないよう残りの脱皮の皮をはがした。

チョット無理やりで蛇の皮膚に傷がつくけれど、そこはね、

「ア・フュー・スモール・リペアー!」

ほら、きれいきれい。

〆にオーディナリーワールドが壁も戻して…ほい、いっちょあがりっ

「…いやぁ、もうあたし達なんかサイキョーって感じだねぇ〜」

仕事を終えて、費用も受け取った後、アパートを出たところで
あたしもうなんかすっかり調子が上向いて居る事を素直に口にしちゃった。
うん、それは油断に繋がるんだって判ってるんだけど…w

ルナはそれを言いたそうに苦笑の面持ちで居るんだけど、何も言わなかった。
ジョーンがそしたら微笑みながら言った。

「ええ、わたし達なら大概の困難は越えられるわね、
 気分が上向いているときは、上を見ていていいのよ。」

本当に優しいジョーンの顔だ。
あたし達はこの人を超えなくちゃいけないんだけど、
…うん、もうちょっとだけ、ジョーンのそんな言葉と
そんなジョーンの背中を見て居たいかなぁ。

…なんてその時だ。
チョット強いビル風が吹いてジョーンが思わず自分の頭に手をやった。

「…ああ、ターバンはこないだあげたんだっけ…」

なんかもうずーっと、寝るとき以外つけてたから
その行動が身に染み付いてたみたい。

「…なんならさぁ、買いにいこっか?
 あたしもちょっと服とか見たいし」

「そうねぇ…彼らの方はどうなったかしらね、わたしかルナが
 必要な状況じゃなければ行きたいところだわね」

「え、ちょっとまって、何であたしが出てくるのよ?」

ルナがチョット不意を突かれたように言った。

「なにいってるのさ、一緒に行こうよ〜」

あたしがそう言いながらポールに電話した。

『ああ、仕事としてはまだ完了してないがもう大丈夫だよ
 保護してあるからね、ただまぁ、彼も積もり積もったものがあるだろうし
 このままじゃあ帰れそうにないというから、今現場近くのカフェでね、
 ウインストンやケントとなんだか話し合っているよ、
 わたしはまぁ、依頼者への電話とか事務所のチェックがあるから
 会話には加わってないがね、』

なるほど、大丈夫だったなら、あたしたち三人でデパートに寄っていいかなって
聞いたら、留守電もメールも特にないから、構わないって事だった。

あたしが電話している間もジョーンがルナを誘っている。

「ルナもね、これからあるいは社交界ってところに顔を出さなくちゃいけない場合も
 来ると思うのよ、そこまで行かなくても何か企業のパーティーとかね。」

「貴女がでればいいじゃない…、貴女の方が余程うってつけだわよ?」

「ええ、わたしが表にでていればいいときはそうするわ、
 だけど、わたしが裏方で捜査をしなくてはならない場合もあるでしょ?」

「…うん…まぁ、スパイなんて技能あたしにはないから…でも…」

以前のルナだったら一も二もなくばっさり話題そのものを切り捨てたろう
馬鹿馬鹿しい、って。

「今すぐ全部そろえてって言うんじゃあないわ、今日はどんな感じか
 ちょっと見に行きましょうよ、わたしが食事で体調管理をしている限りは
 プロポーションにも大きな変化は付けさせないわ」

「じゃあ…見に行くだけよ?
 …確かにこの調子ならそれなりの企業のそれなりの調査も出来そうな勢いだし…」

「お、ルナがその気になった♪ いこいこ♪」

「アイリーには何で言わないのよ?」

気づいたようにルナがジョーンに突っ込むと

「ただのパーティーなら勿論アイリーにも、ただもし
 裏方で何か探るのなら、アイリーも裏方ですからね」

「ああ…ん…そうか…」

「いいからいいからw まずはジョーンのターバンでしょ?
 そのついでにちょっとって感じでいいじゃないw」

あたしがルナの背中をちょっと押した。
ルナが嫌がる様子がないなら、もっと押すよw

こんな風に充実した気分でデパートに向かうあたし達に、
でも、この後ちょっとした騒動に巻き込まれるなんて、
この時は思いもしなかった。

第一幕 閉じ 戻る 進む