Sorenante JoJo? PartOne "Ordinary World"

Episode Four

第二幕 開き

デパートって言っても、ハロッズとか高級なトコじゃあないよw
引き続き、あたし、アイリーがお送りしまーす

それなりに特売とかもやってそうな、普通のスーパーみたいな
デパートに寄ってジョーンがあれこれ探してる。

ただ、ジョーンってあれだね、何気に高級志向って言うか
絹製品ばかり見てるのね。

「絹が好きなのよw」

それだけの理由だそうだw
前の布は絹じゃなかったんだけど、それは財産切り詰めながら
どこまで一人で生活するかわからないからとりあえず
デザインだけで安いのを買ってたんだって。

ジョーンは選びながらつぶやいた。

「まさかまたこんな風に働いて収入を得る時がくるとは…
 …うん、まぁ…貯えはいつかなくなるから、いつかは
 働いてたのだろうけど、意外に早くその時期が来たわ…」

「…でもなぜまた働かずにいたわけ?
 18世紀から20世紀ならあたしもわかるのよ。
 毎年何かしら発見があったといっていいくらい
 科学技術の発展があったから」

ルナが聞いてきた。
それに関してはちょっとジョーンが恥ずかしそうに言った。

「…ええ…その…イギリスに来た理由が理由だったから…w」

「ジョーンが改めてイギリスに来たのは40何年か前だっけ」

あたしも会話に加わると

「ええ…w その…恥ずかしいのだけど…
 それまでは地道に少しづつ勉強しながらヨーロッパ大陸を
 点々としてたのね、忘れもしないわ、1963年、衝撃だったわね。」

「いい大人が恥ずかしい動機でイギリスに1963年…?」

ルナがそういうと推理したみたい、思い当たる節があったみたいで
漫画みたいなツッコミの顔になって

「…ビートルズね」

ジョーンがびくっとしたように反応した、図星みたいww

「ロックンロールとか…チャックベリーやリトルリチャード
 そういうのは少しく耳に入ってはいたのだけど…
 何ていうのかしら…ロックとポップ、ブルース、
 彼らなんでも自分なりで取り込んでて、
 …ああ、これも時代の一つの変わり目だなって」

「それでイギリスに渡ってきたんだ?」

あたしが言うと、ジョーンは赤らみながら頷いた。

「…それじゃあ解散までの7年間は見事な追っかけだったわけね…」

ルナに突っ込まれると、更に赤くなった、かわいいなぁw

「それからも音楽に関してはかなりイギリス中心だったし…
 わたしもね、生きるためにって色々楽器は嗜んだから」

そういわれると、ああ、なるほどって思った。
ルナも思ったみたいだけど

「…それ差し引いてもあたしらに出会うまでの20年か30年は完全に「サボり」だわね」

「恥ずかしいわ…あ、これにしましょw」

これ以上突っ込まれたくなかったのかジョーンはさっさと買うものを決めると
レジで清算した。
そんなジョーンを見守りながら

「…やれやれ…、案外、ミーハーなのね」

半分呆れたようなルナの言葉に

「いいじゃない、なんか、可愛いよw 今の嘘じゃないみたいだしw」

あたしが言うと

「時々ジョーンって子供っぽいのよねぇ、なんなのかしら?」

「…余り人とのコミュニケーションがなかったからかもしれないね、
 「仲間」はあたしたちで初めてみたいだし」

それをあたしが言うと、ルナがちょっと悲しそうな顔をした。
場を悪くしちゃったかな。

「…そうか…そうよね、オーディナリーワールドの
 極端な恥ずかしがりようも、言ってみれば彼女の心の鏡写しってわけだわ」

「ああ、そうだねぇ…あぁでもほら、そこはどんどん変わって行くよ
 あたし達も、ジョーンもね」

「…そうね」

そこでルナはちょっと微笑んだ。

ジョーンが戻りながら、包むのを断った布をそのまま頭に巻きつけながら
あたし達のところにやってくる。

うん、見慣れたジョーンの姿だ。

「貴女ならつばの短い頭の平らなハットなんかも似合いそうだわね、
 フォーマルな服にしたら、ほんとに似合いそうだわよ」

ルナの何気な感想に

「…ああ…そういう服もいいわねぇ…見に行こうかしら」

ジョーンは結構乗り気でフォーマルな服を売ってる場所に行った。
あたし達もね、それなりにやっぱきちっとした服も
必要になるかもしれないし、ジョーンと一緒に
パンツがいいか、スカートがいいかとか話あった。

ルナはスカートをはかない。
理由はわかるよね?
うん、辛い経験から穿けなくなったの。

とはいえ、殆どウインドウショッピング、

ただ、フォーマルはともかく普段着をちょくちょくピックアップして
皆で一つ二つ買った後にあたしたちは宝飾品や化粧品のコーナーに差し掛かり
ジョーンが何気なく言った。

「ねぇ、ルナ、ちょっと化粧してみない?」

「え???」

素っ頓狂な声をルナが上げた。

「ううん、なんとなくよ。 ソバカスとかのある、普段の顔もわたしは好きだけど
 もし、どこか正式な場にでるなら、化粧だって必要でしょ?」

「そ…そりゃそうだけど、なぜ今なのよ?」

ルナが動揺してる、以前なら門前払いな話題だったろうけど、
動揺したって事はジョーン的には「あ、行けるな」って思ったみたいよw

「アイリーも、その時になっていきなり化粧をしたって
 板についてないっていうか、落ち着かない雰囲気バリバリかもしれないし
 「化粧をした自分」っていうのをちょっと見てみるのも経験と思うのよ」

「っていうことは、ジョーンが化粧してくれるの?」

あたしが言う。
あたしも化粧をしたことはあるはあるけれど、軽くちょいちょいっと
やったくらいだから、しっかりとした場所に出るような本格的のは
やったことがない。
ルナも大学生になったばかりくらいの頃に少しした程度って
言ってたから、やっぱりちゃんとしたのはないだろう。

「ええ、任せて、貴族相手の着付けなんかもやってたわ。」

ホント、ジョーンは何でもやってるし何でもできるなぁ。
250年なりちゃんと無駄にしないように生きてきたんだなって改めて思う。

ルナは困惑しつつ、一つ条件を出した。

「じゃあ、貴女も勿論そうするのよ?」

「わかったわ」

「あと、「このまま帰りましょう」って言うのだけは無しね!」

あ、それに関しては先手を取られちゃった、ジョーンはそんな顔をした。
あはw でもなんか、いいかもw

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ジョーンは店員さん相手にサンプルをいくつか見せてもらって
一つを手に取りまずは自分のメークから始めた。
ただまぁ、ジョーンってきれいな肌してるから、あまり
代わり映えないのかなって思ったら

「素肌の光の反射と基礎化粧後のファンデーションの乗った肌とでは
 全然違うものよ」

ジョーンがそういうと、なるほど、すっごいきめ細かい、ほんとに
「キレイ」って感じ。
基礎化粧はしてるけど、ジョーンの選んだそれはジョーンの肌の質とかに
ちゃんとあったものを選んだらしい、勿論あたし達にも
それぞれに選んだ物を差し出した。

アイラインやアイシャドウ、チークやマスカラ。
ジョーンがどんどんゴージャスになってく

「こんな感じよ」

なるほど…なんかこう、クレオパトラって感じだねぇ
エキゾチックな…色んな人種の掛け合わさった
その顔立ちは6ヶ国語だったか操ったっていう
クレオパトラを連想させた。

ジョーンは次にあたしにも化粧をした。
店員さんがアドバイスしたがってるようだけど、
ジョーンの化粧品選びは的確らしくて口を挟めないみたいw

「アイリーは童顔だから…あまり濃くない方がいいわね、
 素を活かす感じで…」

出来上がったあたしの顔は、でもやっぱり普段ちょっと気になる
肌の赤みの違う度合いとかがちゃんと平均化されてて
目とかは余り強調されてないけど、うん、でも
確かに普段とは結構違うなw
うふ、ちょっと大人な気分かもw

ルナも

「貴女、そのままおすまししてたら結構お姫様かもね」

何て言ってるw

他人事のように言ってたルナの番が来ると、ルナはちょっと決まり悪そうに
目を瞑りながらジョーンの化粧を受けている

「…そういえばソバカスはどうしましょう?
 勿論化粧で隠せるけれど、オーディナリーワールドで消す事も可能よ?」

そういわれると

「…うーん…まぁ…今はいいわよ。
 なんていうかな…やっと自分が少し許せるくらいになったばかりだし」

「…そう、そうね、ソバカスのある貴女もわたしは充分好きだけれどね」

「…貴女やっぱりレズなのかしら…」

「…違うわ…w」

そんなやり取りの間、あたしは結構ルナの顔がどんどん変わってゆくのに驚いてた

ソバカスもなく、眉間に皺もよってなくて、
キチンときめ細かいファンデーションで色を整え
チークやシャドウやアイライン、マスカラに…
ジョーンったら調子に乗ってイヤリングまで付けさせてるよ?

「さぁ、いいわよ、でも余り怪訝そうな顔はしないでねw」

ルナってすぐ眉間にしわよせるからねw
メガネを外してる状態だから、ジョーンはルナの目の前に鏡を差し出した。

…そこには女優とまでは言わないけど、雑誌のモデルくらいなら
普通にやれそうなくらい美人に生まれ変わったルナがいた。

ジョーンも凄く満足そう。

「それ、帰る前に洗っちゃうの勿体無いよー」

あたしが思わず本音ポロリ。

ルナも、自分の顔をちゃんと見るなんてここ二年位なかった。
なんとなく選んだ基礎化粧して、なんとなく髪に櫛を通す
そのくらいの事しかしてなかった、そんなルナも
「これが自分なのか」
って感じに驚いてた。

「いつか、自分のことをもう一度好きになってあげてね」

ジョーンはそういってルナに微笑みかけた。

「うん、これならルナ文句なく社交デビューできるねっ
 帰るまで勿体無いからドレスも着させようか♪」

あたしが言うと

「いいわねw セーターにオーバーオール以外の服にさせたいw」

ジョーンも乗ったw

「ちょ…ちょっと…やめてよ…!」

「いいわ、条件付でもw」

「あたしチャイナ!」

あたしは自ら進言したw

「ああ…わたしもチャイナが良かったんだけどなぁ」

なんてジョーンが言うけど

「ジョーンのプロポーションだと特注必須だよ?w」

「…そうねぇ…、デパートを出るまでの間の扮装には間に合わないわね」

「うう…あなた達がそうまで乗り気だとあたしもなし崩しになるじゃない」

「いいじゃないw ルナだって、ちょっといいかなって思ってるでしょ?w」

結局、あたしはチャイナでジョーンは白いシックなドレス、
安めのアクセサリーなんかも色々買って散りばめつつ、
ルナの出番だよw

ジョーンはルナに真っ赤でシンプルなドレスを勧めた。

「あなたはシャープな人だから、そういうのが合うわ、間違いなく。」

試着室に入ってもなかなか着替えることの出来ないルナに
ジョーンはカーテンを少し開けて中を覗き込み、

「オーディナリーワールド!」

ちょっぴり乱暴だけど、ジョーンは一時的にもとのルナの服を
着られない状態にしちゃったw

「な…なにするのよー!」

念入りに化粧した上からでもわかるくらい真っ赤になりながら
ルナは動揺したけど、でもきっかけを作られては仕方がない

「…もう…ちゃんと服戻してね」

「帰る前に、ちゃんと戻すわ」

2年ぶりの化粧に2年ぶりのスカート、というか、ドレス。
やっぱりこれって、ジョーンがいるから許せた行為なんだろう
ルナが着替えて出てくると、ルナの細身の体に
シンプルな赤いドレス、出かける前にジョーンが髪の毛をいじってたから
化粧とあわせて、ルナ、ホント別人みたい。

恥ずかしそうにしてるけど、でも内心まんざらでもないって感じ。
うん、こんな感じで気負いもなく着替えるようになれればいいね、
今日はこのデパートの中だけの特別だけれど。

…何ていってる間にそのルナが気づいた。
メガネをかけるんじゃなくて、目にあてがいながらあたしに言った

「あら? アイリー、貴女手荷物減ってない?」

「え?」

あたしは今買ったばかりの普段着の入った三人分の袋と、
着替える前の三人の服をまとめて入れてる袋に自分のバッグも入れてた。
なんで三人分のって、大人しくしてるけど、今まで話題に出なかった
お猫様籠はジョーンが持ってるから。

…着替え前の服とあたしのバッグの入った紙袋が…ないよ?

「あれ? あれあれ??」

あたしはそんなに移動してない、荷物を手放した覚えもない

どういうこと???

そんな時に少し離れた場所、あたしは行ってない場所の方から
あたしの携帯の着信音がなった。

「…気づかなかったけど…すりとられた!?」

ジョーンがちょっと険しい顔になる、ジョーンが
気づかないなんていうのは彼女のプライドがちょっと許さなかったらしい

音を追ってゆくと、ファッションフロアの色んな服が並んだ
一角から急に男が飛び出してきた!

「そこよ!アイリー!ベイビー・イッツユーを!
 何かおかしいわ! なるべくあの姿を覚えてモニターして!」

「おっけー! あたしのケータイ返せー!」

服の波に紛れてまた「奴」は姿をけした。
ケータイは「奴」が姿を現して逃げてる時に手にとって
着信音を消してる動作が見えたから、もう音では追えない。

「…幾ら服が沢山並んだ売り場だからって
 移動がまったくわからないほどに姿をくらますことは…不可能だわ…」

ルナが分析を始めた。
あたしのスタンドがおおよその位置を掴んだ。
その場に行き、服が沢山かけられた場所の下を覗き込んだり
後ろに回ったり、あるいはと上を見たりしたけど、いない

…でも反応はこの辺…

そんな時、ルナの携帯がなった。
あ、ルナも携帯買いなおしたの。
相手はポールだった。

『ああ、アイリーがでないから君にかけたよ、アイリーに何かあったかね?』

「…今…かなり謎な「スリ」にあったのよ…まだ完全に逃がしてはいないけれど」

『…今君たちのいるデパートは君たちの向かった現場近くのデパートだろう?』

「ええ…それが?」

『…いや、今そこからちょうど依頼があってね…最近その…謎の男による
 スリが多発してる…と』

「…ちょっとタイミング悪かったわね…」

『そのようだね…その男は全身特殊な服を着てるかのようで
 人相が判らん、しかしそんな特殊な服を着た人物は
 デパートの外には出ていない…「彼」が何者で、できればそれを
 突き止め捕まえて欲しい…それが依頼なんだが…』

「依頼されるまでもないよー!あたしのケータイ取られちゃったのよぉー!?」

あたしの叫びでみんなの意識がルナのケータイ越しのポールの方に
向かったその時だった、またこの服が沢山かけてある場所の
あたし達から死角の場所から「奴」は走り出し、逃げだす

「!」

ジョーンが白いすその開いたドレスをはたつかせながら
全力疾走で追いかけた。
すっごい速い…!

でも、追いつきそうになったその時、ちょっとした角を曲がったところで
また姿を見失ったらしい。
でも…

「ジョーン! その辺にいるはずだよ!? どうしちゃったの?」

「…ありえないわ…消えた…?」

あたしとルナもジョーンのいる場所へ。

「ちゃんと「奴」が見えてるわけじゃあないから…完全な位置は
 判らないけれど…でもこの売り場の一角にいるんだよ…」

ルナが改めて足元を見たりしてる、ジョーンも同じようにしながら

「…ルナ…どう思う? 貴女の推理を聞かせて」

「…スタンドだわ…あたし達は間違いなくスタンド使いに盗みを働かれてる。
 …小さくなるスタンドかと思ったけど…そんなのあなたの視力の前じゃ
 意味のない能力だものね…」

「相手の動き…そういえばちょっとヘン…歩くとか這うとかいうんじゃあないわ
 ゆっくり泳いでるって言うか…それに近い動き」

「……」

ルナもジョーンも考え込んでる。
折角キレイに化粧したルナも、
眉間に皺がよっちゃってて勿体無いなって思うんだけど
それどころじゃあないんだよね…

「ルナ…探偵免許は貴女の服…オーバーオールの中よね?」

ジョーンが聞くと

「ええ…「取られた状態」って事になるわね…でもなぜ?」

「…良かった…わたし持ってて」

え?

「ジョーン!? 貴女探偵免許ないって…」

それをあたしらが言うとジョーンは静かな、無表情になって

「…勿論偽造よ…ちょっと最近空いた時間に個人で探し物をしてたから
 その為に作っておいたのだけど」

ジョーンってなんかこう品性方向って感じするんだけど、
時々物凄い「裏」が見え隠れする。
こういうときのジョーンってなんかちょっと怖い

ジョーンは下着の横の紐に挟んであった免許を取り出して店員に言った。
(偽造ってわかんないほど精巧だった…)

「K.U.D.O探偵事務所の者よ、今依頼が入ったわ、そして今
 犯人がこのフロアにいる、貴方達は客を避難させて
 そしてなるべく店員の貴方達も逃げて頂戴
 …というか…このデパートを一時的でいいから
 わたし達三人と犯人だけの状態にして欲しいの
 …何故かというと…犯人はとんだイリュージョニストかもしれないから」

ジョーンのその言葉に店員さんは大童になって
言われたとおりに行動を開始した。

この混乱に乗じて犯人が動いていないのはあたしの
ベイビー・イッツユーでモニターできてる

「…とりあえずこのフロアーから…」

「何をする気?」

正体のつかめない相手にジョーンはちょっと本気になったようで
ルナが聞いた。

「このままじゃあ埒が明かないわ…だから…そうね、まず
 監視カメラにも一時的に死んでもらおうかしらね」

「…まさか貴女…!」

「オーディナリーワールド!」

効果は見えないけど、多分このフロアーの一定の範囲の
監視カメラを切ったんだろう、そして

「アイリー、どこの服の束の辺りにいるかしら?」

「…そこだよ?」

あたしが指差すと
オーディナリーワールドが拳をハンガーで一杯服が吊るしてある
場所の先頭から最後の方まで一気に殴りぬけた。
勿論服はばらばらだ。

今まで見たことがない程攻撃的なジョーンだ。

「あっ…動いた!」

あたしはモニターしながらだから実際には見てなかったけど

「そこよ! あたし達の死角の位置から出たわ!」

ルナの指摘した指先に「奴」は流石にちょっとあせったように逃げ出した!

「…判りかけてきたわ…どんなスタンド効果か…」

ジョーンの目つきは、獲物を捕捉した獣のように鋭くなっていた。

「どんなスタンドだと思う?」

ルナが聞く。

「…ごめんなさいね、確信を得るためにもう一度攻撃を加えたいわ。」

オーディナリーワールドが逆の手で壊れたり破れたりした服を殴ると
一応は元に戻った。
(ジョーンが後で言うにはほんのちょっぴりほつれた糸くずを
 捨てることで服としては完璧に戻っている、といった)

ジョーンは別の服の沢山吊るしてある、犯人の逃げた服の束に歩み寄った。

「床や天井といった場所に逃げないのが狡猾でもあり…そして弱点といったところね」

ジョーンがそれを言うと

「…自分を平面化して平面から平面へ飛び移ることが出来る能力…!」

ルナが気づいたようだ。

「なるほど…服の表面を泳いで渡ってるわけだ…」

あたしもつぶやく。

「多分ね…そして…攻撃によって自分の面積以上の場所を失うか…
 あるいは…「泳ぐ」の表現にふさわしく…平面の状態では
 息が出来ないから息継ぎに立体に戻るか…」

それを聞くと、あたし達今まで結構固まって行動してたけれど、
服の沢山吊るされた束に死角を作らないような配置になった。

そんな時だ、

「おい!お前ら無事か!?」

ここは一階、販売員用出入り口のほうからやってきたのは
ウインストンたちだった。
(通常出入り口はすでに封鎖されている、
 元々閉店近い時間だったのでそれほど大きな混乱もなく
 どうやらお客さんも上手く誘導されて今このデパートの中の
 裏方以外はあたしらと犯人だけのようだ)

「あ、ウインストン! 今やっと犯人の能力が
 判りかけてきたところだよ!」

「判りかけてきた…ということはスタンド使いかね?
 …と…君たちやけにめかし込んでるね?」

いつもは目は瞑り加減なポールが珍しく目を見開いた。

「お、ルナがちゃんと女だぜぇー?」

改めて指摘されるとルナはまた顔を真っ赤にして、
でも、かなり怒ったように体を隠すように手を組みながら

「なによ! しょうがないじゃない、着替えは盗まれたんだから!」

ジョーンは女物の丈の長いコートを近くから手に取り
(勿論売り物だ…)
ルナに羽織らせた。
シックな色のコートだ、真っ赤なドレスが映える。
ちょっと鋭い、怖いジョーンのままなんだけど、
ルナのことは真っ先に考えられる余裕はあるみたい。
無造作なようで、ちゃんと選んで着させてる。

「あ…ああ…ありがと…」

激昂しかけたルナだったけど、そんなジョーンの何気ない
気遣いが彼女を落ち着かせた。

「アイリーのチャイナの話題にも触れたいところだが…
 追い詰めているのか? 犯人はどこにいる?」

お、ウインストン、うれしいねぇw
あたしにも話題振ってくれる?
でも、そんな場合じゃあないんだよね

「犯人は、ここだよ」

あたしが指差したそこはただ服を幾つもハンガーで吊るしてある
普通のキャスター付の陳列柵。

男連中はいっせいに「???」って顔になった。

「物質の表面に二次元として「潜行」するスタンドのようよ」

ジョーンがそういうと、
また問答無用に陳列柵をオーディナリーワールドで殴りぬけた。

男連中がちょっとビックリしてる。

あたし男連中にひそひそと

「ジョーン、いつの間にか荷物を盗まれたことに気づかなかったのが
 結構ショックだった見たいなの、だから今本気モード」

それを言うや否や、壊された服の破片というか、飛び散った
服の影から犯人が現れ、走って逃げるようだ!

「あれよ!自分が平面化する面積以下の場所には潜んでいられないって訳!」

ルナが指を指すと、犯人の進行方向にケントが

「フォーエンクローズドウオールズ!確かめてやるぜ!」

壁を出現させる、
犯人はちょっとビックリしたようだったけど、急に止まれない、
仕方なく壁面に「飛び込んだ」
そして、迂回するように後ろに泳いで渡っていってまた抜け出したようだ

「当たりのようだな、そして泳ぐ速度が速くないから
 平面化はあくまで隠れながら進む手段なんだろう!
 追うぜ!」

ウインストンが言うと皆一斉に走り出した!

ネタが割れては犯人も基本的に走って逃げ、誰も見てない瞬間を狙って
平面に逃げ込まなくちゃいけないから、結構必死だ。
犯人はエスカレーターを駆け上ってゆく。

あたし達もエスカレーターを駆け上ってゆく。

…と

「…う…あ…」

ジョーンがエスカレーターの動く階段に足をかけられないでいる。

エスカレーターを駆け上りつつルナが振り返って

「…ジョーン…? 貴女…ひょっとしてエスカレーターに
 足をかけるタイミングがつかめない…?(汗」

ジョーンは汗一杯になってこくりと頷いた。
本気モードだったジョーンが一気にPCでタイピングが出来ない
ジョーンのようになっちゃった…w

「婆さん(ばーちゃん、ババア)か!? 貴女(お前、オメー)は!?」

皆いっせいにジョーンに突っ込んだww
ジョーンは恥ずかしそうでもあり、とても困った風でもあり言った

「仕方ないわ…わたしは別ルートで追うから、皆は彼を追い込んで…!
 多分彼は屋上に逃げる気よ、そこから一気に地上に降りる気だわ!」

ジョーンはお猫様籠を開けて、オーディナリーワールドに
リベラを託した。
あ、ちなみにリベラは親猫の資質を引き継いでスタンドが見えるらしいよ。

皆、やれやれって顔をしながら、犯人を追った。

ネタが割れたからには、もうあたしの追跡からは逃れられないよ?

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