Sorenante JoJo? PartOne "Ordinary World"

EpisodeFour

第三幕 開き

各売り場、そこかしこに潜もうと
もうあたしのベイビーイッツユーに追えないものはない

後は事が終わったらジョーンに直してもらえばいいとばかりに
特にウインストンは遠慮無しに潜んだ場所や潜めそうな広い場所を
破壊しまくってる。

どうやらそして1平方メートル弱くらいまでの
範囲にしか潜めないことも判ってきたよ。
(正方形じゃなくてもいいみたいだけど)

もう追い詰めたも同然。

床や壁に逃げないのはそれごと破壊されると
自分もそのひびとかの影響で怪我をするか
あるいは平面の中に閉じ込められるかするかするかららしい。

ルナはいつもの冷静さで分析している。

うーん、いつもの、なんだけど、今日はキレイにお化粧してるし
真っ赤なドレスにシックなコートを羽織った姿から
かなり「クール・ビューティ」だねぇ

結局犯人は、ジョーンの睨んだとおり屋上まで登っていった。

屋上は流石に広いから壁やら床やらに飛び込みやすいし、そこから
壁面を滝を下るように地面にまで戻れる、そうすれば
追っ手も撒ける、そう睨んだんだろう。

犯人もネタが割れたなら割れたで逃げ方を心得てるようで、
あたしは追跡可能だけど、結構上手い具合に
障害物を利用しながら潜行したり飛び出したりして

あたしらより一足先に屋上まで行っちゃった!

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「へへ…へへへへ…ここまでくりゃァ…後は一気に下るだけさ…」

つぶやく犯人。
屋上に出る扉を開けた犯人の十メートルほど先の柵の上に彼女は立っていた。

ジョーンだ。

幅5cmもない柵の上に普通に立つジョーン。
風に髪の毛や白いドレスがなびく。

多分、バランス感覚というよりは波紋の力で立っているんだろう、
獲物を捕らえたその瞳は、妖しくも、とても鋭かった。

「…逃げられるものなら…逃げて御覧なさい」

ジョーンがそれを言うと、犯人は一瞬後ろを振り返るけど
あたし達も階段で屋上に向かっている、
「潜行」するしか逃げ道はない。

人間は普通右足を軸としやすい、だから、ジョーンに向かって
左の方向、ジョーンからすると右の方向には動きが
一瞬遅れるはずだ、と彼が左に動こうとしたその時だった。

ぴしっ、っと彼の周りの…というか屋上中の床がひび割れた。

崩れない程度に、そして段差も隙間も最小限、だけど
完全にかけらとかけらの合わさった状態の屋上の
床のどんな大きなスペースも50平方センチメートル以下しか
なさそうだった。

犯人は左に展開しつつ、その状況にとてもあせったようだった。

「貴方がある程度の隙間や段差がなければ「飛び移れない」
 事は判ってたわ…わたしがただこの上で貴方を
 待ってただけだと思ってたの…?」

もう、犯人に逃げ道はない。

屋上にあたし達も出た。

床がひび割れてるんだけど、人が数人乗ったくらいでは
びくともしないようで、ウインストンが気づくまで
あたし達は普通に屋上に彼を囲むように展開しちゃってた。

「床を…加工済みだったようだね、流石はジョーン君だ。」

ポールが言う。

「どうやってここまで登ってきたの…?」

ルナが問いかけると

「波紋でフリークライミングよ、そのままじゃ目立つから
 オーディナリーワールドの力で光学迷彩してね…
 …さぁ…
 まずは盗んだものを平面化させて自分の体に付着させてあるわね…
 それを全て返しなさい。」

なるほど、ボディスーツのような「着る」スタンドの表面に
服の模様のように盗んだものや…あたしの荷物なんかも浮かび上がってる。

「………」

男は一瞬考えあぐねてあたしを見た…!

「…!」

男はあたしの服の表面に飛び込んだ!

「あッ…! この野郎!」

ウインストンがスタンドを出すも下手をしたらあたしも傷つけかねない状態だから
うかつに攻撃できないでいる。
男連中がかなりこいつを「憎き輩」と言う目で見たけれど、
あたしら女連中はむしろ思い切り呆れた顔をした

「やれやれって奴ね、アイリー。」

「おっけー、言われるまでもないよ」

ルナの合図にあたしの手から発した「ベイビー・イッツユー」は
そのままあたしの体に巻きついてゆく。
服の中から「そいつ」の驚いた顔が見える。

「…攻撃力も防御力もないスタンドだから
 破られる可能性は否めないけれど…彼は服の中に逃げ込むことで
 自分の逃げ道を塞いだようなものだわ。」

「いいよ、ちょっとの怪我くらい。」

ジョーンの言葉にあたしは何てことないって感じで言った
歩けなくなるんじゃあ意味ないからすその割れた足のほうは露出させて
片方の足にベイビー・イッツユーに絡めた。
胸の方まで数センチも空けないで縛り付けてるから

いやぁ

あたしにしてはちょっぴりエロスだねw
ウインストンがちょっと照れてるよw

「このまま頭か手を出すまで待ってればいいって訳よ、間抜けな奴だったわね。
 攻撃力のないスタンドなら人質になるって考えたのかしらね」

「くっそ…途中から絡んだとはいえ…俺達いいトコ無しだな」

ウインストンが頭をかきながら「そいつ」の様子を見てた。

「そうでもないんじゃあない? ジョーンは既に気づいてたようだけれど
 ある一定の隙間や段差がない平面には潜んだり
 飛び移ったり出来ないってこと確かめたんだから。」

ルナがそういうと、ウインストンはかえって困ったように

「…ああ…いや、その…ジョーン。 後で下のフロア全部頼むわ…。」

それを言うとジョーンは微笑んだ。

「わかったわ、お疲れ様w」

「そいつ」の限界なんだろう、あたしのチャイナから頭が出た。

「オーディナリーワールド」

ジョーンが言うとそいつを平面から引き出した。
これは平面の状態だと手をかける場所がないって言うことから
「引っ掛ける場所」として頭か手が出るのを待ってたのね、

…でもここからがまたジョーンの「陰」を見た思いがした。

引き出しただけじゃあなくてジョーンは「そいつ」に
オーディナリーワールドの連打を浴びせた。

「……!」

あたしら皆凍りついた。
問答無用に…とはいえ容赦は加えてるみたいだから
骨折とかまではしてないまでも元気に動きまわったりは
できなそうなくらいにはぼこぼこにした。

「…いや…まぁーよぉー…ほっときゃ逃げるかろくでもねぇー事やらかすかも
 しれねぇーからなぁー」

ケントがフォロー入れるんだけど…ねぇ…?
ジョーンは倒れたそいつの胸倉を掴んで無表情な…かえって怖い
感情も何も込めない声で言った。

「聞こえなかったかしら…? 盗んだものを返しなさい…。」

「そいつ」の体から荷物とか盗んだものがポロポロ床に落ちた。
明らかにジョーンに対して最大の恐怖を感じてる。
…確かに今のジョーンなら平気で人殺しでもしそうなほど無感情に見える。

「…まぁ…何にしても荷物が返ってきてよかったわ…やれやれだわね…」

ジョーンのやり方は怖いものがありつつも、平面化していつでも逃亡の図れる
相手だから、動き回れる元気を奪うことは決してやり過ぎでもないと
ルナは思ったんだろう、ア・フュースモール・リペアーも出さずに
足元の荷物やらなにやら拾い始めた。

…それにしても色んなもの盗んだんだなぁ…
高価なバッグやら宝石やら一眼レフなデジカメとかiPodとか…w

「「こいつ」の被害っていつごろからだったんだろうね?」

あたしが言いながら拾うのに参加し始めたら皆も拾いながらポールが言った

「…詳しい日取りはわかってないが…酷くなったのはここ数日らしいよ」

「…あなた…矢で射抜かれたわね?」

ジョーンが胸倉を掴んだまま「そいつ」に聞いた。
「そいつ」はジョーンに恐怖しながらも頷いた。

その時、床に離されてたリベラが何かをデパートの向こうに見たようだ。
ジョーンもその視線を追い、何かに気づいたみたい!

思わず緩んだジョーンの手に「そいつ」は最後の力で「その方向」に走り出した!

ジョーンが「しまった!」と言う顔をした。
その男が向かった方向に一番近い位置にいたのはルナだった。
「その男」の肩を掴み

「ちょっと!いい加減にしなさい!」

ルナはまだ気づいてない様子で純粋にその男を止めた。
そのルナの背中に注意がそれたのがいた。
リベラだ。
言ったよね?
背中を見るとかけ上げる習性があるって。

「ルナッ! 彼と一直線上に並んではいけないッッ!!」

ジョーンの叫びと共に、リベラがルナのドレスを駆け上がり、肩に乗る。
ルナはリベラにビックリしつつ、ジョーンの言葉にもビックリして
「そいつ」の肩を掴んだまま振り返りながら後ろに体勢を崩した、その時だ!

「そいつ」の叫び声と共にそいつの左足の太腿辺りが爆裂した!
その一瞬の光景にあたしが固まるんだけど、ウインストンが即あたしの目を塞いだ。

…から、ここから先、ウインストンに交代するね。

「なんだねッ!? 何が起こったというのかね!?」

ポールが叫ぶ、そして次の瞬間だ。
俺も見えたぜ、今の爆裂に関係あるのかないのか、視線の先に光る鈍い光!

「まだ終わっちゃいねぇッ! スタンドを出すなり防御をしろッッ!」

突然のことに、ルナは完全に頭が回ってねぇ様子だ、仕方ねぇ、
こいつはまだ修羅場ってモンにそれほど耐性がないからな。

俺が「風街ろまん」を出して効果を出そうとするや否や
その光は一直線にこっちへ…多分「犯人の男」めがけて跳んできたんだと思う。

ただ、ルナの体勢は崩れていたし、そいつの肩を掴んだまま後ろに倒れこむ様子だ。
ジョーンもオーディナリーワールドを出しているが、とりあえずルナ本体の無事を
確保するよう動いてる。

ケントの方にちょっと目をくれるとケントもフォー・エンクローズド・ウオールズを
出そうとはしてる、だが、飛び道具が発射されたってのを見てからじゃあ
余りに遅い!

だがそれは人間の誰にも当たらなかった、
その鈍い光…「矢」が当たったのは…猫だッ!!

猫の悲痛な叫びと血、そして胴を貫き、俺たちの後ろに飛んでいったはずの「矢」は
いつの間にか方向転換し、「射た奴」のところに帰って行く!!

くそッ! なんだ!? どういう能力だ!?

「風街ろまんッ! 暗闇坂むささび変化ッッ!!」
「チキショーメェーッッ!!」

俺の風なら数十メートルは追いかけられる!

「ウインストン君…! それでは…」

ポールが叫ぶ、言われてから俺も思った…
暗闇坂むささび変化は近い距離なら風を往復させ何度も切り刻むことが出来る。
しかし、弓で射た速度で遠ざかる「矢」に対してそれは一度しか攻撃できない、

矢は真っ二つにした、しかし「破壊」までは出来なかった!

「リベラッッ!!」

結果的に「その男」の処刑のために放たれ、ルナが肩を掴んで体勢を崩したことで
ちょっとルナの肩から浮き上がった格好になったリベラに矢は当たった。

ジョーンの叫びはかなり悲痛だった。
ルナが「自分の所為か」という顔になったが

「オーディナリーワールド! …貴女のせいじゃあない、この子のヘンな癖を
 治せなかったわたしが悪かったのよ…ッ!」

確かに、ジョーンはかなりリベラに甘かった。
多少の「おいた」も微笑んで流してた。

「だが、ジョーンのせいってわけでもねぇよ、おい、ケントッ! 壁を盾にしながら
 調べて来い! 明らかに二箇所から攻撃があった!
 そしてルナ! スタンドを出せ! ジョーンの「修復」が終わったらお前の「治療」だッ!」

ルナはびくっとしたように俺の言葉に従った。
ケントが壁を出して屋上の縁に近づくと、ポールもそれに付き合ってる。

「ああ、アイリー、お前はまだこっち見なくていいからな!」

アイリーは俺の左腕に目を隠しながら少し震えて

「う…うん…」

この様子じゃあ、「矢の使い手」を捜すってのは不可能だな…それ以外の
「足をいきなり爆裂させた奴」もだ…

ジョーンが猫の処置を終えた後、「犯人」の吹き飛んだ脚を見た。
そいつもだいぶ苦しがってる。

「…詳しい話は聞けそうにないわね…
 多分「わたし」がどんなものかを見極めるための罠として利用されたのだろうけど…」

それを言うと、オーディナリーワールドはそいつの足を接いでやった。
骨と、神経の一部と筋肉の一部のみ。

「…あなたが「利用されたのだろう」とはいえ、あなたの犯した犯罪は
 一般の警察にどうこう出来る問題じゃあない…
 残酷だとわたしを恨めばいい、数年はリハビリに励まないと
 いけない程度にしかわたしは状態を戻してあげない。
 …ルナ、「彼」の傷口もふさいで上げて」

数年再起不能(?)になってもらうって訳だ…
確かにスタンド使い特化の捜査班なんてのはまだこのロンドンには無ぇ。
確かに残酷かも知れんが、ベターな選択だろう。
ルナは「自業自得だと思いなさい…」と言って
やや辛そうだが傷口を塞いだ。

俺はアイリーの目を塞いでた左腕をよけると、

「…リベラは!?」

アイリーは真っ先に猫に駆け寄った。

「…傷は完璧に治したわ…ただ…「矢のウイルス」はゼロに出来ない…」

ルナが辛そうに言う。
それこそがジョーンの弱点…ということなんだよな?

ジョーンは走ってケントたちを追いかける、
「矢の使い手」は向かいのビル辺りからで、逃げ道の経路や能力も考えて
(能力がまだ不明な点も考えて、かな)
追うのは不可能と見るや、

ポールが

「あそこだよ! もうすぐ壁伝いに地面まで降りてしまう!」

有効な中〜遠距離攻撃の無いケントたちは「他にもまだいるかもしれない」
といった警戒もあって、何も出来ずにいたようだ。

ジョーンが柵を乗り越え…飛び降りた。

「…おいッッ…!! 何やってんだジョーン!」

俺が遠くから声をかける形になったが、
どうやらジョーンは波紋やオーディナリーワールドの力を駆使し、デパートの壁と
隣のビルの壁を巧みに利用し、下まで一気に降りていった。

「…彼女は…本物の鍛え上げられたスパイのようだね…」

ポールがそのぶっ飛んだ行動に頭を横に振りながらお手上げだって感じで言った。

「先に降りた奴、びびってジョーンに何か投げつけたぜ?」

ジョーンは一瞬警戒すべきか迷ったらしい、それがちょっとしたミスだったようだ。

投げつけたのは水入りのペットボトルらしいんだが、急に爆裂して
中の水も半分水蒸気って言うか霧のようになった後、また爆発した!
ただ、ジョーンも「爆発するんだろう」という勘が働いたようで、
その被害にはあわなかったが、だが逃がしてしまった。

俺も縁によって

「おい、大丈夫か?」

と、下に向かって声をかける。

「…ええ、」

と声がしたが姿がよく見えん。
「オーディナリーワールドの光学迷彩」って奴か?

「ケント君、射程目一杯にトランポリン壁…出してくれるかしら?」

「…お、おう」

ケントが言われたとおりにすると、壁の二メートル上くらいのところまで
既にジョーンは登ってたが、光学迷彩を解き、トランポリンの上に軽く飛び移ると、
一気に屋上まで戻ってきた。

…ハイパーな奴だな…マジで。

「ありがとう、ごめんなさいね、逃げられてしまったわ。」

「いや、仕方がない…相手がスタンド使いだと「まずどのような能力か」を
 見極めないとならないからね」

ポールが諭す。

「…ええ、ただ…水を分解して再結合させる能力だってことだけは判ったわ…
 電気を使った能力なのか…それともスタンド特有の「そうだからそうなのだ」的な
 力なのかまでは判らなかったけれど…」

ジョーンは「奴」に近づき

「あなたの足も…体の中の水分を分解して再結合って言う感じでしょうね。
 …完全に殺す気ならば心臓より上を狙うんでしょうけど…判らないわ…
 貴方を足止めさせた上で…矢で頭を貫く…今回はそういったシナリオなのだろうけれどね」

ジョーンがそれを言うと「そいつ」はジョーンにびびってたなんてモンじゃあないびびり方をした。

「…お…オレは…「矢」の奴に上手くすりゃあなんでも望みがかなう力を得られる
 って言われて…ただ…このデパートでだけやれっていわれただけ…だ…」

「…あえて矢に貫かれた「勇気」…と呼んでいいのか判らないけれど…
 その度胸は評価してあげるわ…だけどそれは犯罪…どうあっても許されるものではないわ」

ルナがジョーンのその台詞に

「…さっき貴女…「自分を見極めるため」って言ってたわよね?
 …ちょっとうぬぼれが過ぎる気がする発言だけど…
 でも貴女もずいぶん大盤振る舞いに色々見せちゃったわね…」

「…わたしによって何かが変わったと言うのならば…確かめに来るのは当然と思うのだけど…」

………

「おい、それってまさか…!!」

俺が思わず言うと

「黒幕はBCってこと!?」

「…他にどこが考えられる? ジタンが探ってるのは正にわたしだしね…」

「…だから安全が危うくなるってあたし言ったのに…」

ルナがこぼすと

「ジタンは最大限わたし達に気を遣ったと思うわよ、
 多分情報としては殆どゼロなんじゃないかしらね、
 彼の性格からして核心のつかめない情報を報告するとも思えないし」

「ああ、それは言えてるな…ってこた最大言えるとして
 「結構な使い手のジョーンが来て、K.U.D.Oは変わった」くらいだな
 …だからこそこんな派手な茶番仕組んだんだろう…」

俺も付け加えた。

「…まぁ…いつかはあいつらとも仕事の面でも競合するときが来るだろうとは
 思ってたけれどね…まだ…少し早いわ…」

ルナの正直な感想だ、俺も…そう思う。

「疫病神にならないように…わたしは何でもするわ…」

「疫病神だ何ておもっちゃいねぇーよぉー」

ケントが言うと

「そうよぉ、ジョーンのおかげであたしら…特にケントやあたしなんか自信もてたんだから」

アイリーも援護射撃だ、
…貧乏に甘んじるならジョーンは来るべきではなかったのかもしれない…
だが…永遠に何も変わらないこともない、
遅かれ早かれ、こんな日は来たんだろうと思う。

「ちょっと展開が急だが…仕方ネェよ、今までの俺たちがのんびりしすぎたとも思えるからな。」

俺も言った。
ジョーンはうつむいてちょっと微笑んだようだ。

そして、リベラの傍に。
今のところほぼ元気を取り戻したリベラは何があったのかよく判らんって顔で
ジョーンに抱き上げられた。

「ウイルスを常に一匹で保つことは出来ない…
 それに近いことは出来ても…
 …リベラは矢によって選択を迫られる運命にあることは変えられない…」

そう悲しむジョーンにルナが言った。

「容態が急変しないようにだけ気をつければいいわ…
 貴女と…あたしにならできる。
 あとはもうこの子の生命力が抵抗力を生み出すのを祈るしかないけれど…」

「…そうね…ごめんなさいね…リベラ…」

ジョーンはリベラを撫でながら、少し天を仰ぐと

「…じゃあ、皆…ここを直すから…下に降りててくれないかしら。
 犯人の引渡しとかもお願いね…
 ポールかウインストンなら警視庁にスタンド使いの警官なんかも
 知り合いがいるんじゃあないかしら?
 とりあえずスタンド使いだっていう情報だけでいいと思うし。」

「ああ、判った、ジョーン君。
 どのくらい時間掛かるかね?」

「それについては…2〜4階の状態を見てみないとなんともだわね。」

それ言われると俺が今度は決まりが悪い。
だが、そんな事言ってる間に屋上のほうはひびが目立たなくなり出してる。
ジョーンにほぼ重なってるが、オーディナリーワールドが力を使っている

「まぁ…なるべく早く行くわ、店員さん達は売り場には絶対に戻さないでね。」

俺たちはその言葉を聞くしかない。
ちょっとさっきまでのハイパーで冷徹なジョーンから一気に気が抜けたって感じの
その様子に俺や…ルナや…皆もちょっと気になった様子ではあったが
警察に通報し、事情を話し犯人を引き渡しした。

スタンド使い警察っていうのはいるは居るんだが…知り合いじゃあなくってな、
ちょっと苦労したんだが、売り場に誰も入れさせないって言うのは
まもっとかねぇとな。

俺たちが舞台裏でジョーンを待ってた。
4階、3階、2階、かなり異様な速さで終わったようで、最後の最後に
「なぜだか」監視カメラが息を吹き返すって訳だ。
監視員とかが不思議がってるが、
「プロの技で、捜査上、一時的に目を塞いだのは
 信じないわけじゃあないが騒がれないためだ」
としか言えんかった。

「…何? ジョーンったら…異様に早いわ…」

ルナの呟きが聞こえるや、一階も復活した。
確かに普段カップを直すときや壁、床を直すときなんかを考えると
広いデパートの中を満遍なく直してまわす…
…なんてのは相当骨の折れる作業のはずだが…

あ、ちなみにルナもアイリーも化粧を落として服も着替えちまってる。

俺的にアイリーはもうちょっと見てたかったが、
「ルナにとっては男連中に見られただけでも大ハプニングなんだから」
そう言われると、納得せざるを得ねぇ。
結構イカしてたぜ?
って言いたかったんだが、それすら傷つけかねない言葉なんだな。
面度くせえ奴だなと以前の俺なら思ってたろうし、実際思ってたが

こないだの「人格入れ替わり」で俺も女の大変さは味わっちまった。
多分、俺の体がアイリーだったのだとしても似た被害にあった可能性はある。
ジョーンの服装が媚惑的だとか、そういった面もあるかも知れねぇが
ああいった連中は服装など余り気にしないと後でジョーンから聞いた
なるほどなって俺も思った。

俺が女に生まれついてたら、どうだったろうな。

…考えたくも無ぇが…

それでもフェミニズムがなんたらって方向に走らなかったのは
唯一ルナの賢明だったところだって俺は思ってる。
…おっと、脱線しすぎたか、ジョーンが戻ってきた。
リベラは今のところ普通だが、猫籠に納まってる。

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帰りの道すがらルナは早速ジョーンに噛み付いてた。

「効果早いわよ? どういうこと?」

ってな

「…かなりスタンドパワーを使ったわ、…それでいいかしら?」

確かに、ジョーンの顔には疲労の色が濃い。
一晩くらいならリベラも大丈夫だろうという思いからか、
相当力を使ってデパートを直して回ったらしい。

ルナはちょっと納得がいかないようでジョーンに更に聞いた。

「まぁ…他誰も出来ない能力だから早い分にはありがたいけれど…
 貴女まだ隠してることない?
 隠してる能力無い?」

「…やっぱり貴女は鋭いわね…でも隠したくて潜めてる力じゃあないの…
 …こう言って置くわ「奥の手」に近いものなのよ…
 わたしもかなり疲労するし、「する程度」如何によっては
 数ヶ月単位で力が半減以下になるわ」

「見せたくても「その状態」にすることでスタンドパワーを使うのか…」

俺が間に入ると

「そういうことよ…だけどこれもね…いつか見る事になると思うから…」

ちょっと弱々しくジョーンが笑う。
いつか見る事になる…なんだかそう遠くない気がするな…怖いことに

「…ジョーン…最後にその「奥の手」っていつ使ったの?」

アイリーが慎重に聞いてきた。

「…200年前よ…ちょうど…」

ジョーンが二百年封じてきた奥の手…か…
ルナはちょっとどうしていいか判らないような顔になったが

「とにかく、今日は寝て。
 力が半減以下になるほどには疲労してるようには見えないし
 貴女もそのつもりだったろうし…
 明日…明後日辺りがリベラの山場でしょうから。」

「ええ…」

雲行きが怪しくなってきたな。
だが、俺たちも徐々に覚悟は出来てきたぜ。
ジョーンお前は「自分が疫病神にならないように」と言ったが
逆かもな、お前にとって俺たちが疫病神にならないようにもしなくちゃな…

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