Sorenante JoJo? PartOne "Ordinary World"

Volume on Extra:One

第二幕 開き

「ダビドフ、どうだった?
 俺のほうは…あと少しだぜ。」

「…そうだな、まぁ狭い世界でそれしか知らずやってきた連中
 …いい意味でも悪い意味でもそんなとこだぁーな。」

「そうか…やはりな…ん?
 ダビドフ、それはなんだ?」

俺は結構でかいトランクを片手に戻ってきたんだ。

「いやァ…俺もなんか集めてこよーかとね。」

「なるほど…」

レットイットビーが扉を完全に腐食させ、破壊した。
崩れ落ちる扉、そして俺たちは歩き出す。

技術者の奴らが俺らに慄いて逃げ惑っている。
上役に連絡をつけようとしてる奴も居る。

まぁ、別の場所から軍隊派遣するにしても、もう遅いね。

「さぁーて…いっちょやるかねェ。」

「タイミングが大事だぞ、俺の「現状維持」が決まる前に
 臨界突破なんてさせるんじゃあないぞ。」

「まぁ先ずは施設の天井の加工さ…」

俺はなるべく高いところにのぼり、天井、そしてその上に
あるであろう岩盤に向けてレディオアクティヴィストの能力を使う。

「どうするんだ?」

「さぁーねぇ、通用するか判らんが、なるべくサイレントに
 なるように沸点の高くて中性子吸収の高くて
 密度が高い物質…まぁハフニウム辺りから鉛辺りまでの
 重金属の天井と壁に先ずはするのさ。」

「…そうか…早くしろよ。」

ポロポロとまだ残ってる兵士なんかに応戦するため
ジタンが銃を撃っている。
この期に及んで武器を持つ腕を狙うとか
やってるのがなぁ、他の奴なら俺は
「殺せよ」と切れるかも知れねーが、

まぁ、なんとなくジタンは許せるかね。
こいつの紳士っぷりは筋金入ってそうだからな。
気が弱くてやってるんじゃねェなら敬意は払うさ。

「いょーし…
 じゃあ、でかい花火セットするぜ?
 出口を確保しとけよ?
 爆発の瞬間は数百万度のプラズマの中になるんだからな。」

「…そんな温度だと数キロ先まで逃げんと無意味な気がするが…
 まぁ判った。」

スタンドも使ってジタンはもう一度兵士達を殲滅した。

その間に、さァお待ち兼ねのレディオアクティヴィスト、
オメーの最大の力を見せるときだぜ?

炉そのものをどんどん核融合させる。
外側は一応鉛でコーティングしておいて、中はあらん限りの
核融合だ…!

俺に直接元素は見えねーが、レディオアクティヴィストを通し
それは判る…!

ふひひーっ
プルトニウム、アメリシウム、中略アインスタイニウム、フェルミウム、
中略マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウムに
ウンウン何とかって暫定名の重元素まで…
中心付近の原子番号はとうに120を越えたぜぇーwww
(ああ、核分裂性が失われるとなんなんで大部分は
 分裂性が確実に判ってるプルトニウム239にしたよ
 あと、ストレートに全てが爆発すると工場はおろか
 この国や近隣の国まで滅ぼしかねないんでね、
 未熟爆発で終わるだろう領域や、まぁ威力もすこーしは軽減させてある)

「ジタァァーーーーン!!!
 走ってとりあえず逃げるぜーッッ ヒャッハァーッッ!!」

ご機嫌な俺に眉をしかめつつ、奴は「現状維持」を使う!

通路に逃げ込み、いくつか角を曲がったその時だ!

もんのすげーーーーー閃光が俺たちを包み込んで、
俺たちの目が一瞬くらんだんだが
(潰れるまでは行かない、「現状維持」のおかげだ)
ジタンは俺を引き寄せなるべき小さくなって居ろと叫んだ。
叫んだんだが、殆ど聞こえやしねェ。

俺たちは超新星爆発か宇宙の始まりに遭遇したかのような
光と熱の空間に吹き飛ばされた。

「現状維持」の力も2メートル弱まで狭まってる。
普段なら球状に10メートルは使える技なのに、
やっぱり俺様の力はすんげーね。

「現状維持ボール」はそのうち蒸発して吹き飛ぶ
壁や岩盤やらを通過して遥か数キロ先まで
吹っ飛ばされた。

振り返ると、なるべくサイレントにしたのが功を奏してか
「いかにも原爆雲でござい」
って言うほどには見えねェ。

まぁ、巨大爆発には違いねーがな。

吹っ飛ばされる現状維持領域の中で俺はそれを見ながら
…どうやら、かなり邪悪な笑みを浮かべてたらしい。

「…ダビドフ、俺が居なくちゃ、この爆発でお前も
 諸共に死ぬんだ、判っているよな。
 これは必要な仕事だからこう出来たんだぞ。」

そう、作り上げた元素の持つ放射能くらいなら
俺のスタンドは操れる。
だが、その先の「核分裂の臨界突破」までは
コントロールできん。
いや、その能力はあるんだが、何しろ全てが一瞬だ。
俺がそうと判断し、操るまでの時間内に
全てが終わっちまってるのさ。

「…ん…ふっふ…ああ、そーだなァ…」

だが、人生で初めての俺の本気だ。
しかもただ強烈に爆発させたんじゃあない、
威力や範囲をコントロールしながら、だ。

「…いやぁ…我ながらちゃんと出来てるな、ってなァ」

「…ああ、そうだな…お前の才能は素晴らしいよ。」

それが善か悪かを抜きに、ジタンは素直に俺を褒めた。

「…嬉しいねェ…ところでジタン…
 えれー勢いで爆発して効果範囲が狭いのは判るんだがよ…」

「…ん? なんだ?」

「オメーさんが俺を引き寄せてるからまだしもだが
 ここで俺がオメーの肩に手を掛けたら、
 …俺には男と一緒に居る気がしねぇんだよな…w」

この期に及んでそのネタか、そんな怪訝な顔にジタンはなった。
俺は左手がトランクで埋まってるから、右手を高く掲げて
「いや、俺ァ何もしてねーし、もしそうしたらって意味だぜ」
という意味を込めニヤけつつ眉をしかめて見せた。

「…お前という奴は…その気があったのかよ…」

「ちげぇーよぉ…おっと、そろそろ着地だぜ、ちゃんと衝撃も
 現状維持で受け止めてくれよぉ」

「くそ…」

俺に対して怒鳴りたくなったが、それどころじゃあない。
ジタンは対着地衝撃用に精神を高めた。
爆発の勢いとか全方向から来るようなのより、
こういうののほうが微妙に気を使うみたいだな。

サッカーボールのように…とはいかねぇ、
かなり効果範囲をゆがめつつ、数回のバウンドで
そんなに派手に転がらないように奴はコントロールしたんだが…

荒野のど真ん中、弾んで少し転がる間にでかい岩があったんだが、
奴の視界にそれが入らなかったらしい、

「おい…ちょっ…ジタァァーーーン!」

コントロールし損ねて、領域は砕け、俺たちは岩に叩きつけられた。

「いってぇええー…しっかりしてくれって…」

後頭部をしこたま打っちまった。
脳細胞何個死んだかね?

「…うぅ(奴もあちこち打ち身をしたらしい)…済まん…
 だがこれもお前がヘンな冗談を抜かす…」

ジタンの顔が真顔になって、俺を見つめ、言葉に詰まったようだ。

「…おい…ダビドフ…お前…「何を」集めたんだって…?」

ゴゴゴゴゴって音を背負いながら、奴の焦りが見える。
俺は何のことだと言いかけて左手に抱えてた
トランクを見ると、蓋が開いてたわけだァな。

「…お前…ゲイかと思わせて実はロリコンなのか…」

そう、俺はあのガキを持って来てた。
ああ、いや、だが違う!

「あぁああぁあ…違う違うちげー、ちげぇえええーーーーよ!」

流石にあせっちまった、ロリータコンプレックスって看板は
たとえ冗談でも背負いたくねェェーーー!

ジタンはどう判断すべきか、半分俺を疑いながら、考えあぐねている。

「違う、違うぞー!
 光源氏計画とか、そんなんじゃあねー!」

「…紫式部かよ…」

「このガキの「能力」だ!」

能力、その言葉に、ジタンも少し冷静になったようだ。

「そうか…そういえば能力者がいたんだったな…」

ジタンは、また「現状維持能力」を使った。
キロメートル範囲じゃあ、放射線の雨アラレだからな。

「このガキの能力は…俺を止められるもう一人に
 なれるかも知れん…勿論上手く成長したらだがな…」

「どういう能力なんだ?」

「味方の平均能力を引き上げ、敵の平均能力を下げる、
 そういう能力らしい。」

「へぇ…なるほど、流石のお前も確かに苦戦しそうな奴だな。」

「現状じゃあまだ俺の本気は止められないね、だから…
 こいつには強くなってもらうぜ…」

「というか…その子をどこへ連れてく気だ?
 お前まさか本当に光源氏計画でも…」

「ちがーーーう!!
 まだ決めてねーよ!ぶるぁぁあああ!」

と、そんなやり取りの間に、ジタンが「えらい事に気付いた」
って表情をしやがった、俺をからかうとかじゃあない、
何か心底やばいことに気付いたようだった。

「…おい…その子を…絶対社に報告するな…」

「…あぁ?」

「そうだ…迎えの政府の奴らにそのまま極秘で引き渡せ、
 その子を絶対にプレジデントに会わせてはならない…ッ!」

言われて俺も…気付いた。

「結果的に得た能力の平均を上げて…あるいは
 最適化もできるかも…しれねーンだな…」

俺の事だけ考えてこのガキ連れてきたが…
そうだ…思えばなんて爆弾持って帰ってきちまった…!
今すぐ殺した方がいいか…?
俺は少し考え、スタンドを出したが、
レディオアクティヴィストの腕をレットイットビーが止めた。

「どうあれ、救った命だ…俺の目の前で殺すなんて野暮はやめてくれ。
 それに、お前を止められる奴が増えるのもいいことだと思う。
 お前の葛藤は強い、俺なら耐えられるか判らん。
 「もしも」のために、その子を連れてきたお前の気持ちは理解する。」

俺の鼓動が早くなる。
俺は奴の…フレデリコとか言う本名のプレジデントのスタンドを直で見た。
その恐怖が俺の中に新たな葛藤を生んだ。

「…くっそ…所詮俺は群れの中でも一匹狼に近いらしいなァ」

「自分を責めるな…知らせなければいいんだ。」

「…そうか…まぁ…そうだなァ…」

「…確かにとんでもない才能の持ち主だ…
 ある意味、この国に埋もれさせるのも、
 あの爆発で殺すのも惜しいと俺は思う。
 この子が成長してジョーンと組めば…
 逆に奴を倒せる大きなチャンスになる…」

「ジョーン? ああ、あの「女」か…
 その女も俺を止めることが…?」

「…現状では判断不可能だし、お前の本気に敵うほどの
 能力かは疑問なんだ…疑問なんだが…」

「…なんだよ、どうかしたかよ?」

「…600年を生き抜いた彼女だ…あるいは「隠された」
 でかい能力があるんじゃあないかと俺は思ってる。」

「…俺の聞き違いか? もしもーし…600年とか言いやがったか?」

言ってからジタンは少しやばいと言う顔をしたんだが、

「…ともかく、長い年月を生き抜いてきたんだ、
 俺が彼女を知った二ヶ月弱で全てを知ったとは思えない。
 …それにな、生きた年月だけを問うなら、俺たちは
 もっと化け物の下で働いてるんだぜ…?」

「…あ? …あのー…もしかしてそれって…」

「確実な証拠は無い、だが、ジョーンの証言と
 俺が調べたところによると…650年は生きてるんだぜ…」

「…マジか…とはいえ、600年も650年も俺には
 目くそ鼻くそなんだが…」

「ジョーンの方は…元々そういった傾向の強い能力だといえる。
 何か目的を持って、死にたくても死ねない体だと言うのは間違いない。
 …だが…プレジデントの方は…」

「…そっか…奴の欲と執念の産物だもんなァ…
 いよォ…オメーさんそこまで掴んでなんでBCを抜けない?
 今ならまだK.U.D.Oに乗り換えられるぜ?」

ジタンは思いつめた強い表情をした。

「プレジデントが確実に滅ぶところを目の当たりにしなくてはならない…
 その為には奴になるべく近いほうがいい。
 そしてそれを皆に伝えなくてはならない」

こいつ、「能力を活かすべく」BCに鞍替えしたんだが、
いつの間にかかなり強い正義感で居座ってたんだなァ…

「…なんて奴だよ…オメーさん…絶対尻尾は出すんじゃねーぞ…
 かなりの難易度だが…奴に従いつつ、奴の寝首をかく方法を
 考えなくちゃあならねーなんてのはよォ…」

「…ああ」

「…俺がチクらないことを祈っててくれや…」

「そんなことをすれば俺はお前を殺す、全力で。」

俺は奴の目に強い光を見た。
こいつ、本気だぜ。

…はは、なんだか嬉しくなっちまって思わず笑い出しちまった。

「はははァーーーッ! いいぜ、オメーさん、
 どーやらマジだ、心配すんなよ、俺はチクらねえよ、
 チクらねェが、多分どーやら…いつかオメーさんと
 やりあう日がきそうな気がしてきた、
 バレたバレないじゃあなくってよぉ! はははァー!」

俺の中に眠る力に飢えた獣が、首をもたげた。

「…そうだな、そんな日が来るかも知れん、
 …個人的には避けたいんだが…」

「…止しておけよ、俺とオメーさんは…馴れ合うようには
 出来ちゃいねーンだ」

「馴れ合いじゃあないよ。
 …そうだな…奇妙だがお前にほんのちょっぴり
 情が沸いてるって言うかな…」

「プロポーズかよ?」

「…結局そのネタを引っ張るのか…お前って奴は…」

「2005年から同性婚も認められたしねェ、心は広く持たなくちゃぁー」

「………ゴメンだ。」

「あーらららァ、振られちまったァ、それともなんだ?
 本命が他に居るとか?」

「そのネタを引っ張るな…」

「へいへーい…ひはは…俺もお前に奇妙だが
 情を感じてるよ、愛情じゃあなくってなァ!
 勿論今までのは冗談だよ! 高尚な冗談!」

「思いっ切り下世話なんだが…まぁいい、歩くぞ。」

ジタンは歩き出した。

「おい、どこまで歩くんだよ?」

「…そうだな…南はあっちで…北に向かうとして国境を越えねばならんだろうな、
 ちょっとサイレントにしても…この場は放射線が危険だ…」

「国境って…こっからだとどこが近いかねェ」

「どこだろうな、まぁRあたりのH市近辺が妥当かな。」

「おいおい…何キロ歩くんだぜ?」

「仕方ないだろう…あれじゃあ迎えも近寄れん。」

ジタンは爆発の方向を指差す。
キノコ雲一歩手前、政府の迎えは何が起こってるか
判ってるだろーから、なるほど、近寄れねェかな。

「あれだと…近隣諸国も影響受けるかねェ?」

「受けるだろうな…まぁこの辺の国はまずいことは
 隠すのが常識化してる奴らだ、あからさまに核爆発が
 ありました、なんて絶対言わないだろうな。
 ウインストンの憧れて止まない日本も。
 仕方ないが日本もそんな国の一つだ。」

「…そうか、オメーさんの本命はウインストンか。」

「…お前…」

レットイットビーが湧き出る。

「いやいや…冗談だよ…
 だが、何かしらウインストンが引き合いに出てくるからな、
 気をつけたほうがいいぜ?」

俺が言うと、奴も少し自覚したようだ。

「…判ってるさ」

やれやれだァーな…、なんにせよ、
早めにこっから去らねぇとな。
俺たちはこの場を後にした。

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ウインストンとジョーンがくしゃみをしやがった。
ウインストンはかなり豪快だがよぉー。
ジョーンはまぁ、女らしく、レディーらしく
手を充てながらかなり抑えたね。
ああ、ケントだぜぇー。

「ああ、ちっくしょうめ…誰ぞ噂でもしてんのかよ…」

「突然のくしゃみにはそういういわれがあるものなの?」

はしたない事をしてしまった、という感じに鼻を押さえてるジョーン。

「例の「日本では」って奴じゃあないの?」

事務所内、とはいえ、もう日付が変わる頃だ。
ルナが本に目を通しつつ、二人に言ったわけよ。

「ああ、まぁ地方によって回数とかで言い方は違うようだが…」

「ウインストンの噂をする人ってジタンくらいしか浮かばないんだけど…w」

アイリーがテレビを見つつ、呆れたように「日本では論」に乗っかった。

「ジョーンもジタンね、多分。 ウインストンとジョーンの
 二人を引き合いに出せるのは彼だけだから。」

ルナも乗っかった。

「どういう噂になってんだか…ちょいと寒気がするんだが…」

「…わたしは寒気まではないわね…」

「何本気で会話してンだよぉーw オメーらはよぉーw」

オレ、ちょっと可笑しくなっちまってつい突っ込んだ。
ジョーンは時々なんか妙に世間知らずで楽しい奴だなぁー

「まぁ、二人に共通してることは「寒そうな格好してる」ってことね。
 もう頃合だわ、寝ましょうよ。」

ルナがそう言って本を閉じた。
…物理の本かよ?
オメー歴史じゃなかったのかよ?
あ、いけねー…脳がショートしそーだぜぇ

「ふふ、もう長年その格好で過ごしてるのだから、
 今更それで風邪とは思えんが、いいタイミングだったかも知れんね。」

デスクでリベラを構いながら、ポールが言う。

「正直、年の所為か最近夜更かしがきついよ、私は先に寝させていただくかね。
 皆、お先に失礼するよ、お休み。」

リベラを抱きかかえながらポールは立ち上がり、
リベラをジョーンに渡した。
皆も挨拶を返す。
リベラの奴、ジョーンの胸に収まりながら、
ジョーンのあやす指に喉ならしてんぜ。

「そうね、まだ回復も完璧ではないし、
 またリベラに強制睡眠させられないうちに寝ましょうか。」

「ああ、勘弁だわね…アレは一種の拷問だわ…」

ルナもそそくさと残ってた紅茶を一気に煽ったw

「「睡眠の刑」ってのはそんなきついのかよォーw」

「きっつぃわよー…あんたもいっぺん大怪我してみなさいよ。」

ルナが言う

「冗談やめてよ〜、もうあたしあんなのゴメンだよ?」

アイリーが釘を刺すんだが

「きつい冗談かもしれないけれど、アイリー、貴女だって、
 可能性ないわけじゃあないんだからね。」

ジョーンも殆どの場合、相手を知るために何かしら犠牲を払ってる。
そう考えたら、その場に誰がいるか、誰と組んでるかで
確かに人事じゃあなくなるんだよなァー

「そうだけどォ…」

「まぁまぁ…他の手段で確かめられればそれが一番いいし、
 怪我にしても最小限にする必要はあるから、
 「痛がり屋」にならない程度にそのことは考えなくてはね。」

「「痛がり屋」かぁー…
 やっぱオレ達じゃあーよォー、幾らジョーンが居ても
 やっぱ怖くって縮こまる場面が出て来るんだろーなぁー。」

「…あたし特に…その傾向かもしれないけどぉ…」

「いいのよ、その時はわたしが身を持って貴方達を守るわ、
 それは責めないでね。
 そして、貴方達は強くなって行って、わたしなど気に留めなくていい。」

「…ジョーン、それ、理解できないと思うわよ。」

ルナがジョーンに突っ込んだ。
「死ねない体」だって言うことを、最大限に利用するなんて
やっぱ、俺たちにゃァ理解不能だからなぁー

「…ちょっぴり悔しいなぁ、ルナは理解してるんだからぁ」

「…でも貴女に叱られるのよ。
 確かに褒められたことじゃあないわ、こんな理解は。」

ルナが言う。
カップを洗いながら、ジョーンも後片付けに精を出してる。

「うん…まぁ、」

「いーんだよ、オレたちはよぉー、今のうちだけだぜ?
 ジョーンに甘えてられるのはよォー。
 有無を言わせない状況になったら、そん時が
 踏ん張りどころだなぁー」

皆俺を見た。

「お前も、言うようになったな…」

ウインストンがあっけにとられたように言う。

「さすが、一度はやばい修羅場に遭遇しただけの事はあるわね。」

ルナもちょっとビックリしたように言った。

なんだよなんだよ、

「オレだってよぉー、いつまでもぺーぺーのど素人じゃあねぇーぜ?」

「貴方は充分、強くなって行ってるわ、
 ウインストンもアイリーもね。
 大丈夫よ、わたしも機会が増えれば
 治す速度も向上できると思うし、
 あとは…犠牲を払ってって言うんじゃあなくって…
 …そうね、アイリーのようにポジティブに、
 そしてルナのように強い覚悟が出来れば…
 …その時わたしは戦うことだけに注力
 するようになるかも。
 先のデパートの時のようにね。」

「…でも、そういう時のジョーンって…ちょっぴり怖いんだよね…(苦笑」

「戦いとはそうしたものよ。
 わたしは闇に生きたわけだしね。」

「…闇に生きても貴女は天使だわよ、羽の生えたって言うんじゃあなくってね。」

「止して、ルナ…わたしは悪魔…かなりそれに近い存在よ。」

「こればかりは譲らない、あなたは天使。」

ルナは後片付けを終えて、手を拭きながら本を抱えて部屋を出ようとする。

「そうだね…、天使ってホントは怖いからね、そうかも。」

アイリーも同調した。
ジョーンが困ってる。

「諦めろよぉー、オレは天使とまでは思っちゃぁいねぇーが、
 オレ達にとってジョーンは必要なんだ。」

「同感だな。」

ウインストンも席を立って、寝に行こうとする

「偽悪を気取るな、お前はセリザワであるべきだ。
 ゴジラとどっちも似たよーなもんだが、
 決定的に違うからな。」

結局それかよw

「ひっひw
 ジョーンも形無しだなぁーw」

「そうね…戸惑っちゃうわ…(苦笑」

それぞれが挨拶を済ませる、さって、明日に備えなくっちゃぁーなぁー

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それから…結構大変でな…ああ、ジタンだ。

まず迎えと言うかイギリス本国に連絡をつけねばならんのだが
電磁波ノイズだとかが酷くてな…
俺の「現状維持」能力は俺たちの保全のために先ず使ってるわけだが
通信の瞬間だけ特定の天域に能力を強めねばならん。

更に放射線をダビドフに操ってもらうんだが、呼吸と言うかな
タイミングを合わせ能力をピークに持っていかなくちゃならん。

というのも、通信は発信音の「数」でな…
例えば、発信音が一音、一度だけなら
「損害は軽微であるが、現場は近寄りがたし」
といった意味になる、と言うように、ある程度
合図と文面を打ち合わせしてたんだ。
(それこそモールスで信号を送るなんて愚の骨頂だからな)

ノイズのせいで信号が分割や変調されては意味が変わっちまう。

…加えて保護した(それこそ言葉を変えれば「拉致」か?)娘も居るしな…

「…いいか、俺はオメーさんに今の名を聞いたりはしねー。
 オメーさんはこんな国で埋もれるようなタマじゃあねーんだ
 テメーの能力をテメーで自制し
 テメーのためにテメーの判断で使うんだ、
 いいか…強くなるんだぜ?」

ダビドフが娘に言い聞かせてる。
だが、今まで過ごした価値観と真逆なんだ、娘は怯え、恐怖している。

「…悪いようにはしないさ、今から君を英国政府に引き渡すが…
 君には新しい名前がつけられて、里親が探されるだろう。
 一見、至極普通の家族、そしてその娘として育つんだ。」

俺も加わった。
「普通」のなんたるかも判らん状態で俺の言い草も
意味不明だろうが、どう説明したものだかな。

「…いいか、どうあれ俺たちは化けモンだ…
 程度の差はあれ、能力の違いはあっても、
 これは俺たち二人もオメーさんも変わりはしねェ。
 とりあえず俺を憎め、そうさ、俺を憎めばいい。
 …強くなれよ…本気の俺を止められるほどにな…」

「憎む」そのくだりだけ娘に響いたようだ。
…そうだな、仲間を殺され、価値観を否定され、
育った国まで否定された。
…憎しみが人を強くすることはある。
K,U,D,Oならルナがそうだ…
恐らくジョーンも。

…結局RのH市郊外で俺たちは迎えと合流した。
保護した娘のオマケが居るなど通信してなかったので
現場は混乱したが、かなり重要な能力の卵の持ち主で
これはBCにも秘密にしたいと俺とダビドフが力説すると
政府も理解したようだ。

…スタンド使いは結局異能の異端者。

BCという手を組み甲斐はあるが扱いにくい会社相手だ。

そのBCに勤める俺たちが「内密に」と釘を刺したことで
その重要性は政府も理解したんだろう。

…ああ、ちなみにこの一件は既にRも理解済みでね。
つまり、いわゆる「先進国」同士のパワーバランスのため
下手に後進の国に下手なもん持たれては困る、という
言ってみれば「保身」のための仕事でもあったんだ。

世界中で騒がれてる特定の原子炉やら施設なら
問題に出来るが、今回の工場は「極秘の」施設だからな。

息を吐くように嘘をつくような奴らが相手だ、
このへん、一気に出ようとする杭を打たせてもらったってわけだ。

ここまでろくな食い物も食べられなかったので
俺たちは機内でやっと一息ついた。
娘は正直、レーションに近いとはいえ
それでもあの貧しい自国の食事とはまるで違う
食事にびっくりしていたようだ。
…まだ子供だしな、結局はがっついてた。

…とりあえず憎むしか道はないんだろうが、
…ルナがそうであったように、どうか幸せになってくれ。
お前は…K.U.D.O側に「引き寄せられて」くれよな…

俺の文書やデータの証拠は想定の成果の範囲内で
これといったねぎらいもなかったが、
娘の存在だけはイレギュラーなものだが
あるいはBCとのパワーバランスに
一役買うかもしれないと英国政府も喜んだようだ。

俺とダビドフに悪いようにはしないと約束してくれた。
…まぁ、多少は能力を調べられたりするんだろうが
まだ信用はできるな。

「時々オメーさんの様子を見に行きたいところだが…
 残念ながらしばらく接触不可だろうな。
 いいか、心の底で俺を倒すことを考えろよ。
 俺の名はダビドフ=マグナムだ。」

別れ際に娘に念を押してた。

「…いつか憎むことの虚しさも知ってくれ…君の人生のためだ。」

ダビドフが去った後、俺もそう言ってその場を後にした。

…娘にはその後「ミュリエル=モア」という名が改めてつけられた。
ロンドン内のスタンド使い警官(つまり、モア刑事とかそういうことだな)の
一家に引き取られた。

同じロンドン内は危険じゃあないかという気もするが、
人口密集度からすると…やはり「木を隠すなら森の中」
ってことになるんだな。

警官の一家ということで、躾もそれなりに厳しいし、
つまり前の感覚に少し似て、それでいてやはり
議会制民主主義国家なんだと思えるような環境ってわけだ。

モア刑事はまだそれとなく若い。
結婚後は忙しく子供になかなか恵まれなかったこともあり、
厳しくも夫婦ともに愛情に溢れた環境のようだった。
どうせ変わる生活環境なら、とミュリエルも
猛勉強をしているらしい。
今までの環境とのギャップに苦しみながら、
それでも彼女は生きようとしている。

…それは憎しみが原動力なのか?

それとなくしか情報を集められない俺には
「捜査協力の一環として知り合いになった」という名目で
モア刑事から状況を聞くしかない。

…うん、まぁ。
普通に幸せにはなってほしいんだが…強くもなってほしい。
心も、スタンドも。

矛盾した気持ちだが…

ジョーンがそれでも笑っていられるように。
君の苦難の後には幸福が待ってるのだと、祈らずには居られない。

…プレジデントの情報網にだけは掛かってくれるなよ…。


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