Sorenante JoJo? Part One : Ordinary World
番外編:2「1939-2007」
第二幕 開
そして、時は流れる。
1986年始め…冬のロンドン郊外、あまり大きくない平屋の貸し家に彼女はひっそりと住んでいた。
イギリスに住んで既に23年になるが彼女の見た目は当時から今まで20代半ば。
ただ、彼女は数年で住まいを転々としていたし、近所との交流も殆どなかったので
そのことを疑問に思う人も居なかった。
時々数日家を空けているらしいが、何のための外出なのかも知るものはなかった。
そんなある夜である。
彼女はいつものように慎ましく一日を過ごし、ベッドで眠りについていた時である。
眠りに落ちていたはずの彼女に締めたはずの窓から風がそよぐ感覚があった。
そんなはずはない…!
目を見開き、勢いよく上体を起こす彼女…窓に掛けられたカーテンが僅かにそよいでいて、
その合間にさし込む月光が照らす壁に…「彼」が居た。
「なかなか鋭いんだな…君は…」
彼女に色んな思考が一気にわき出す。
『何者?』
『目的は?』
『なにより、わたしに気付かれずどうやって進入できたの…?』
「…ああ、これは失礼、女性だとは思ってなかったので…名乗る前に質問いいかい?」
「彼」はあくまでマイペースに、他人の家に無断で上がり込むなどまるで
「どうでもいい事」というように平然としていた。
その態度に三番目の思考は無意味だと彼女は悟った。
そして、その「彼」は「同類だ」と言う事も判った、勘に近いが、彼女にはそれが判った。
更に、彼女の直感はこう感じて居た「勝てない」
彼女がなかなか最初の一言を発しないので「彼」は少し待ったが
「そんなに警戒しなくたっていいじゃあないか、君が気付くまで
私は何もしなかったよ…」
とてつもない、どす黒い…そして重苦しい空気が寝室を満たしていたが、
「彼」はその張本人であるにも関わらず、どこか親しげに感じる言葉を掛けてきた。
「ああ…質問って言うのは…私は今世界中を…といっても欧州とアメリカ…北アフリカ
アラビア半島辺りだが…回って仲間を集めているんだ…
それでイギリスに寄ったんだが…「ここに仲間が居る」と感じた君の家には
他の家のような生活感がまるでないんだ、冬だっていうのに薪もない、
電気は止まっている、電話もないようだ…ガスも使っていない…
それでいて調理はしているようだし、水は使っている…
仲間だとかいうよりそっちに興味が湧いてね…教えてくれると有り難いんだが…」
「………」
なかなか言葉が発せられない「彼女」だったが、やっと絞り出した。
「『そういう能力だから』…それで…いいかしら…?」
「なるほど、一言にして察しがつけば全てを内包する…いい答えだね」
「彼」はちょっと満足げに微笑んだ。
「…わたしからも…質問…いいかしら…?」
「どうぞ、ただあんまり間抜けな質問はしないでくれよ…」
「『仲間』…とはどういうことかしら?」
「ふむ、まぁいいだろう…二年ほど前の話なんだ。
私には『力』がある事がわかってね…鍛錬を続けて一定水準に達したと確信したので
今こうやって世界を回っている…『仲間』とはつまりその『力を持つ物』の発掘…
と言った方がいいかな?
まぁ私は個人的にこの力の総称として『スタンド』と名付けたんだがね…」
「スタ…ンド…」
「『側に現れ立つ』と言うところからなんだ、なかなかいい名前だろ?
君にも…そのスタンドを感じるんだが…」
「彼」のスタンドが現れる。
全身ほぼ金色…部分部分にハートをモチーフにしたようなデザイン
…そして…異様なほどに重苦しい迫力を持った「スタンド」だった。
彼女が気おされているのを感じた「彼」はスタンドを消した。
「…君を怖がらせようっていうんじゃあないんだ。
無理にだって従わせる事も出来るが…私はこれでも友情を押しつけるような行為が嫌いでね」
「彼女」が荒くなった呼吸を整えるために特殊な息づかいを始めた。
そこで「彼」は初めて「彼女」に対して少し警戒を抱くような「雰囲気」を見せた。
「君は…波紋使いか…これはまた厄介なご婦人も居たものだな
訂正するよ、「無理にでも従わせる」事は不可能だ、だから後は君次第
…君はなかなか慎ましい生活を好むようだし、金でスカウト…っていうのも
使えそうにないな…スタンドに…この私に興味を抱いてくれると幸いなんだが…」
少しだけ落ち着きを取り戻した「彼女」は、まだ「勝てない」という実感は抱きつつ
「既に就寝中の他人の生活を探って進入してくる人に心は開けないわ…」
「彼」はどうやら彼女との短い会話のどこかで既に「脈無し」と思っていたのか
にべもなく断られた事に気分を害するでもなく少し笑って
「これはこれは…大変失礼した。
君の怒りももっともだと思う、だが…そうだな、あまり慎ましい人には
むかない「組織」を作ろうとしているから…君には馴染めないだろうね、仕方がないな」
しかし、ここで「彼」から少しだけ殺気じみたものを感じた。
「では、私から君へお願いするよ…私の邪魔はしないように…」
「…ご心配なく…こちらからもお願いするわ、あなたの願いを叶えたくば
ロンドンに争いを持ち込まないで…」
「…元々ロンドンにはあまりいい思い出もなくてね…拠点にする気もないよ…心配しないでくれ」
「彼」は喋りながら壁を背にして立っていたと思ったら、いつの間にか窓辺に居た。
「彼女」には「彼」の能力が判り掛けてきたが自分の直感「勝てない」というものが
確信になった事を感じ、いつでも最大で動けるように彼が「スタンド」と総称した
かつての「憑神」を少しだけ表した。
「…む…それが君のスタンドか…だが、君のハートは「命」のモチーフだな…私とは合いそうにない…」
不敵に笑って「彼」はふわりと窓の外にまるで飛ぶがごとく去っていった…
彼はもう見えないし、存在も感じられないほど遠くなったのは感じるが、
「彼女」はしばらく動けなかった。
◆
30分ほどベッドの上で上体だけを起こしていたが、眠れそうにもない。
諦めて起き上がり、「彼女」はケトルに水だけを入れ、「スタンド」を呼び出した。
少しして、ケトルの口から蒸気が噴く。
ティーポットに茶葉を入れようとした時だった。
「…!!」
「いつの間にか」「彼」が戻ってきている…!
何のために?…この気配は…
彼女はリビングの窓を開け、華麗な身のこなしで屋根に音もなく登った。
月光をバックにシルエットとなった「彼」がそこにいる…
「惜しいな…」
「何故戻ってきたの…?」
「『近くにいる』と言うだけで位置まで正確につかんで行動できるスタンド使いなんて
よほど修行を積んだものと言う証拠だ、それに音も立てず行動できる身のこなしも素晴らしい
だが…君に野心らしい野心がないのでは仕方がない」
そして「彼」は紙袋を一つ「彼女」に渡そうと近づいてきて警戒している彼女から二歩ほどの
位置にその紙袋を置いた。
「先ほどは失礼した…それはお詫びの品だよ、受け取ってくれると嬉しいんだが…」
「彼女」が紙袋を見つめている。
だがそれは、ただ外観から中身を怪しんでいるのではない、と「彼」には理解できた。
「ただの紅茶さ、好きそうだったから…銘柄までは見てなかったので
私の好きな銘柄なんだが…では、また会う事があれば幸いだ…君が野心に目覚めていると
もっと幸いだ、では……ああ、君がその紅茶を受け取るならそこに私は名乗りをしてある
だから、君の名ばかりは教えてくれないか?
そうだ、表札も何もないのも気になっていたんだよ」
これ以上、「彼」の好奇心を刺激するような事があってはならないと「彼女」は思い
「ジョーン=ジョット…偽名じゃあないわ…役所で調べてみるといい」
「波紋使いのおまけにジョジョか…これはもう二度と会わない方がお互いのためだ…
ちなみに私は太陽アレルギーでね、イギリスの役所が開いてる時間に
行動は出来ないのさ…じゃあ」
一瞬で視界から消える…
「超スピード」だとかそう言う物でない事はこれではっきりした。
「彼」の置き土産を彼女は受け取った。
少なくとも「彼」は「細かい」工作をするような人物ではない事だけは判った。
紙袋を開け、茶葉の入った缶のラベルを確認した。
「…このフレーバーはちょっと苦手なのよね…悪いけれど…」
そして一緒に入っていたカードにはこう書いてあった。
「先ほどは大変申し訳ない事をした。
君に対して「出会い」というものが有効であるかを試したかっただけなのだが
一つだけ忠告しておく、君の慎ましさは謎が多い、ひとたび興味を抱くと
根掘り葉掘り調べたくなる慎ましさだ、もう少し、「生活感のアリバイ」を
作っておく事を進言するよ。
Dio・ブランドー」
ディオ…ブランドー…?
まさか…吸血鬼になってジョナサン=ジョースターの生命を賭けた戦いで共に
大西洋に沈んだはずのあのディオだというの…?
どう言う事なの…?
…それについては関連する何かがないか調べておこう…――にしても…
静かに目立たなく生きる事にも程度という物があったか…と彼女はため息を一つついて
部屋に戻り、Dioの茶葉は台所の奥にしまい込み、いつも飲んでいる茶葉に湯を注いだ。
◆
◆
◆
時は経つ…Dio・ブランドーとその動きについては興味と言うより警戒もあって
時折情報を仕入れていたが、その彼も1989年には空条承太郎というスタンド使いに
倒された事を知り胸をなで下ろしたが、彼女はDioと会って直ぐに引っ越しをして
そこでは火も電気も使うように心がけた。
立地や貸し家の佇まいは以前と似ているが、狭いながらも庭もあり
そこで家庭菜園レベルより少し上の作付けなども始めた。
世間話程度の近所づきあいもし、出かける時には旅行だと、
(実際にはイギリスのあちこちに隠した資産の回収なのだが)
普段の仕事は翻訳業であること、ただし名前の載るような本の翻訳とかではなく
細かいチラシやそういったささやかなものであること、など
なるべく必要以上の付き合いもせず、かといって慎ましすぎて何も見えてこないような
生活もせず…勿論表札も掲げて努めて「やや貧乏な内仕事持ち」であるように心がけた。
◆
◆
◆
1994年にジョーンにとって一つ特筆すべき事があった。
彼女は「やっと」自らのスタンドに最適と思える名前を授けられたのだ
「オーディナリー・ワールド」
その名には「名は体を表す」他に彼女の切実な願いも込められていた。
彼女にとって、やはり「野心」は遠い物のままだったのだ。
◆
◆
◆
そして2001年の初夏の事だった。
その日、ロンドンに二人の日本人がやってきていた。
一人はやや観光気分なのか、どうやら何かしらクリエイティブな分野の仕事を持っているらしく
あちこちを写真に収めたり、やや強引とも思える取材をしていたが
一人はワイルドな風貌の割に落ち着いた知的な雰囲気をまとっていて、口数は少なかったが
どうやらロンドンにやってきた理由と目的は彼が持っているようだった。
「ロンドンは思ったより都会だなあ…時々心躍るような…根掘り葉掘り調べたくなるよーな
雰囲気をまとったものはあるんだが…普通に都会って雰囲気も強い」
「…まぁ…歴史のある街と言ってもピンからキリまである…
京都に対してだって君と似たような感想を持つ友人も結構居るんだ」
「それもそうですかねぇー、お、この建物はいい感じに曰くがありそうだぞ!」
「…済まないが、まずは用件から済まさせてくれないかな」
「おっと…申し訳ありません、長期休載のついでに色々回る機会を得てからどうも
舞い上がりっ放しみたいで」
「いや、気持ちはわかるよ…私もあの大変だった杜王町でつい論文対象観察もしたからな…」
「やる事はきっちりやりながらやりたい事もこなしてたんですから、大したものですよ
康一くんと出会ってから僕の世界がいかに狭いものだったか思い知る事が多い」
ワイルドだが静かな印象の彼は取材で舞い上がりがちなもう一人の彼の殊勝な言葉に
少し和んだように笑みを浮かべて
「君も大した人物だよ…学者になれば良かったのに、と思う事がある」
「僕が求めているのは「真実」ではなく「リアリティ」ですからね。
真実は大事だが、「その先」を考えるのが仕事なんですよ」
「…さて…流石にロンドンともなると広いし…スタンド使いも多いが…」
「さっきから何人か記憶見てますけど、いませんね…「欲しい情報」を持っている人物は」
「本当はイタリアに飛びたい所なんだが…どういう圧力なのかフランスにすら入国できない…
康一君からの情報だと「事」が起こっているのはイタリアなんだが…
イギリスは圧力がなかった分情報も薄いな…」
「僕はイタリアには降りられそうだったから一人で調べてきても良かったんですがねぇー」
「君一人では危険だ…『ヘブンズドアー』はすさまじい能力だが…油断ならない雰囲気が
漂っている、康一君が無事に戻ってこられただけでも幸いだったかも知れない」
「ま、遠回りかも知れませんが、いつかは糸もたぐり寄せられるんじゃないでしょうかね」
「そう願いたいものだな…少し郊外を回ってみよう…市街地だとスタンド使いにしても
ノイズのような入り乱れ方だ」
◆
その日彼女は庭で紅茶を楽しむところだった。
さっくり焼き上げたショートブレッドをオーブンから出し、さて、と庭に持ち込んで
カップに茶を注ぐ所だった。
見慣れない東洋人が二人、家の前を通り過ぎようかと言う時に背の高い男性の方がこちらを見た。
…なんだろう、重たい雰囲気は持っていないのに、かつて感じたものに少し似た「何か」を感じる。
そうジョーンが思った時に、垣根越しにそのワイルドながら静かな雰囲気の背の高い男性が
「済まないが、少し話を…いいだろうか?」
なんだろう?
まぁ、世間話の話のネタに旅行者と話した事、翻訳の仕事をしている事に
「箔」をつけられるかも知れない、と彼女は思い
「どうぞ、紅茶はいかがかしら?」
「ああ、お構いなく…と言いたいところだが…一杯だけ頂こうか」
一歩引くようで一歩歩み寄る、ジョーンはちょっとだけこの彼にいい印象を抱いた。
「では、座って待ってて、そちらの方も」
ジョーンが屋内に戻ると
「混血ですかね、なかなか興味を引く外見だな…どういう混血をするとああなるんだろう」
「どこから聞いても生粋のイギリス英語だな…まぁイギリスもアメリカ程じゃあないが
それなりに他民族のひしめく国ではあるが…」
「承太郎さん、彼女はスタンド使いなんですか?」
「ああ…間違いない」
「ヘブンズドアーも使わず良くそんな事が判るなあ…これが経験の差なのか」
「…まぁ…そうだな…何度か死にかければ判るようになるかもしれないな」
「真っ平御免ですよ…ネタになりそーもない限り…」
「しかし彼女が「何を抱えているのか」までは判らない、君の出番だ」
「任してください、彼女が戻ってくる…」
ジョーンがトレイに茶器と茶菓子を乗せ戻って来たその瞬間だった
「『ヘブンズ・ドアー』!」
瞬間、彼女は意識を失い、彼女の外見のまま「本」になった。
「本にしてしまってから言うのもなんなんですけどねぇー
市街にたむろしてるよーなごろつきと違って彼女は
「話せば判る」タイプだったような気がしますよ」
承太郎と呼ばれたワイルドな風貌の彼がジョーンの倒れ込んでいる場所に膝をつき、
「本」のページをめくりながら
「ああ…いや、興味を持ったんだ…「彼女」の英語は完璧すぎる、そしてそれを探るのに
真正面から質問してもまともに答えてくれそうにない直感があってね…」
「まぁ…僕もそういう意味じゃ興味がある…どれどれ…」
しかしそんな二人に重い雰囲気が漂った。
「…なぁ…露伴君…君は今までこれほど1ページの薄い「本」に出会った事があるか?」
「ありません…あり得ません、一人の人間が記憶できる、している事には多少の誤差は
ありますけど…なんなんだ…この女…!」
露伴と呼ばれた彼は興奮気味にページを破ろうとするが…
「あれ…破れない…そんな馬鹿な…!」
「無理に破かない方がいい…どうやら彼女は私達が軽く想像していたより
遥かに壮絶な人生を歩んできたらしい…」
承太郎が目にしたのは「一ページ目」だった。
「1412年1月6日…それが彼女の誕生年と誕生日のようだ…」
「馬鹿な…! ジャンヌ=ダルクと同じじゃないですか…!」
「同じではあるが流石に本人じゃあないな…なるほど600年弱なら一ページもこの薄さにもなるかな…」
「なんてことだ…あり得ない、そんな古い記憶が薄らぎも揺らぎもせず残っているなんてッ!」
興奮した彼はページが破けないのなら、とそれらをつぶさに見て特筆すべき箇所がないか
メモをする構えを見せ、適当に数ページめくる。
そこには、数ページにわたり延々「死にたい」とだけ書き込まれていた。
それを見た瞬間、二人は少しだけ「興味本位」で彼女を本にした事を後悔した。
「…どうやら生まれもってのスタンド使いのようだな…自ら敵対を煽るような性格も性質も
してなさそうだ…吉良と違って変な性癖もないようだし…こんな平和な性格をしていて
スタンドなど操れる物なのか…?」
「どういう能力なんだ…あまりにページが多すぎてどこをチェックしたもんだか…」
「かなり最近のページだが…スタンド名が決まった事を喜ぶ一文があるな…
そこに少しだけ…この世に起きうる物理現象を確率に関わらず再現する…とあるが…」
「でもそれじゃぁ彼女が見た目二十代だけど600歳の婆さんだって理由になりませんよ」
「…そうなんだよな…だが…私達は見てはいけないものを見てしまったようだ」
「いやぁ…僕はもの凄く興奮してますけどね…ただ…ネタには出来ないな
プライベートがどうこう言うよりこんな重量級の魂はリアリティがない」
「リアリティか…死にたくても死ねない体である事は間違いないな…」
「物理現象再現以外に何か能力があるって事ですか?」
「いや…それはあり得ない、副次的に応用の形で二つあるように見える場合はあるが…」
「吉良吉影がそれでしたね」
「ああ…」
「死にたくとも死ねなくて物理法則がどーたら…僕には両極端のものにしか見えないんですがねぇー」
「…答えを…彼女自身も探しているんだ…どうやら漠然とした能力から少しずつ
今の形になっていったらしい…根本の能力はつまり「この間にある」わけだ
その「間」の応用が魂の保持であり物理法則の再現…」
「さっきから承太郎さんズバリな箇所探り当ててますねぇー、何か目印が?」
「ああ…部分的にぼろぼろなページがあってね…全部を読む気にはなれないんだが
体を切り刻まれただの、顔だけを移植して体を入れ替えたの…ああ、これが
君の興味のあった混血の理由だな…他には体を炎で焼かれたとか
普通の人間なら即死しているような拷問を受けただの…」
「…やはりこの女は話のネタにならない、こんな無茶苦茶な女をネタに出来る奴は頭がおかしい」
「まったく…やれやれだ、こんなに嫌な気分になるとは思わなかった」
「僕も今やっと本格的に後悔できましたよ、関わるんじゃなかった」
「…ともかく…もう見てしまったことは忘れてしまおう」
「じゃあ、閉じますよ承太郎さん」
露伴が本を閉じるとジョーンは結構な勢いで上体を起こした。
「大丈夫か?立ちくらみでもしたのか?」
改めて席からジョーンに歩み寄り声を掛ける承太郎
あまりに自然な演技だ、これも経験の差だな、と露伴は思った。
「ああ…いえ…どうしたのかしら…」
ジョーンは少し考えてるようだった、まずいな、と承太郎は直感した。
彼女は立ちくらみを起こすような体質はしてない、そのような病気など
持ちうるはずがない。
死ねない体なのだから、そのような不調を起こすはずがないのだ。
「……ひょっとして…あなたたちはわたしに何かをした……?」
やはり勘ぐってきたか、誤魔化し通すかどうかを承太郎は少しだけ考えた。
と、思うや否や彼女のスタンドが沸き起こり、本体もろとも承太郎に殴りかかってきた。
そしてそれは「殴り抜ける気満々だ」と言うことを彼は察知した。
露伴が固唾をのむ中、彼女のスタンドの拳はスタープラチナが、
彼女の拳は承太郎がそれぞれ受け止めた。
「……スタープラチナ…そう、あなたが空条承太郎…」
彼女はそれを知ると、露伴に目を向けた。
「そのスタンドね…わたしに何かをしたのは……」
ジョーンは明らかに不機嫌を思わせる無表情になった。
「承太郎さん…」
「ああ、スタープラチナを知っていると言うことは…必然的に君に
疑いが掛かるんだろうな(ジョーンの方を向いて)…済まなかった、ロンドン市街では
ある程度問答無用にやらないと必要な情報を得ることが出来なかったんだ
申し訳ない」
承太郎は素直に頭を垂れたが、露伴は僕は意地でも謝らないぞ、という
態度をしていた。
「わたしに何をしたの?」
「とりあえず君に悪影響を与えるような事は何もしてない…
というのは信じて貰えるだろうか…」
承太郎の慎重な言葉を、信じてもいいと彼女は思ったが、
「何もしていないわけでもない」と言うことも彼の言葉は裏付けていた。
「わたしは孤独の身…誰にこの事を伝えるでもなく一生貴方たちのことは
記憶の中に抱えておくわ…だから、言ってくださらないかしら…」
600年の記憶を抱える女の発したこの言葉…重い、重すぎる。
露伴は謝る気はないが、ヘブンズドアーを自らの身に加減をして使った。
彼の左頬が本になりめくれ、個人情報などがランダムに書き連ねてあるのが確認出来た。
「…どこまで「見た」の?」
「断片的に少しさ、でもその少しで十分後悔したよ
今からでもつぶさに語って貰いたいくらいだ、言っておくが僕は
君の名前すら見忘れたくらいだ」
ややふてくされながら、露伴は自分の本を閉じた。
「わたしの名はジョーン=ジョット」
「僕は岸部露伴だ、流石にイギリスじゃあまだ知られてないかな、漫画家なんだが」
「ごめんなさい、知らないわ。
……必要な情報とは何?」
「許してやってくれ、ついでに私も許してくれると有り難いんだが…
情報って言うのは…私を知るなら君も名前くらいは聞いた事がないだろうか
J=P=ポルナレフというスタンド使いについてなんだが…」
空条承太郎はポルナレフについての情報が知りたい事、つまり、
本当に自分の記憶をそれほどつぶさには見てない事だけは信じられるとジョーンは思った。
「ジャン=ピエール=ポルナレフ
ジョセフ=ジョースター一行のメンバー、かつてDIO側の刺客だった、
DIOとの戦いで生き残った一人であり、スタンド使いを生み出す「矢」について
DIOを倒した空条承太郎…つまり貴方と共に調査を続行している…とまでしか知らないわ。
ここ数年噂も聞いてない…ああ、一つだけ最近のと言えば、空条承太郎さん
あなたが博士号を取得したと言うことだけ」
「生まれついてのスタンド使いだけど「矢」は知っているのか?」
露伴が少し尊大な様子ながら(やはり僕は絶対に謝らないぞ、という心意気を感じる)
そんな彼の質問も真実だ(つまりあらかじめ自分の記憶を読んでは居ない)と思った。
「直接目にする機会は殆どなかったけれど…エジプトで出土することがあって
それが稀に出回りスタンド使い候補に引き寄せられる事がある、程度にはね」
露伴の質問に答えていると、少し失望を臭わせるような雰囲気で承太郎が
「そうか…やはりここ数年の情報はないんだな…」
「なぜポルナレフの情報をイギリスで? 彼の拠点はフランスからイタリアに掛けて
だったと記憶しているけれど」
「どうも奴は「核心」に触れたみたいなんだ、情報も遮断されて、私も何らかの圧力で
直接イタリアに入国できない」
「そう…残念だけれど、わたしは1990年以降のことはあまり知らないわ
だからイタリアに対して貴方がなぜ入国できないのかも判らない」
「しかしまたなんで90年までの事は知ってるんだ?」
素で疑問に思ったようで露伴が口を挟んだ。
「わたしは別にドクター空条、貴方のファンだとかそう言う物ではないわ。
ただ、ある出来事を切っ掛けにある人物の行く末をチェックしていたら
貴方が…ジョセフ=ジョースター一行が出てきて表面的に調べただけ…
でもなんだか…調べた時のイメージと少し違うけれど」
「DIOを倒した頃は私もまだ高校生だったからな…」
それにしてもポルナレフの行方はやはり判らない、という事実に彼は
少し気分も沈みがちになったのをジョーンも露伴も感じた。
「さぁ…とりあえず、あなた方に飲んで貰いたいフレーバーティーがあるから
もう少しいて頂戴」
「えっ」
とんでもないものを飲まされる直感があって露伴が声を上げた
「毒ではないわ、ただ…少しドクター空条に縁あるものってだけ」
「私に縁があるフレーバーティー?」
「覚えはないんですか」
露伴が不安そうに聞く
「ない」
「マジですか、なに飲まされるんだ…」
ジョーンは無表情のまま
「逃げないでね」
彼女が家の中に戻る
「いや…僕はこんな罰を甘んじて受ける積もりはないんですがねぇ−」
そう言う露伴に対して承太郎はその咎を受けるつもりなのか、
それとも半分放心状態なのか只じっと座っていた。
彼女は戻ってきたが、あえて封入されていた缶も見せず、既にポットにセットした状態で
それを二人についだ。
「さぁ、どうぞ」
それは…
「う…なんか…妙に甘い匂いが…何だこれは…」
「…ミントと…チョコレートかな…これは……あと幾つかフレーバーを
感じるんだが…渾然一体となりすぎていて…正直私にも判らん…」
「うほぉぉおおお…こんなネタの塊みたいなフレーバーティーが
承太郎さんにどんな縁があるというんだ…」
飲み終えるまで解放してくれそうにないことだけは露伴も覚悟したので
我慢して少しずつ、そしてショートブレッドは普通に美味しかったので
ほぼそちらをメインに無理矢理流し込み続けている。
「1986年のある夜だったわ…一人のスタンド使いがいきなり人の寝室に忍び込んで
仲間にならないかと誘ってきたのよ」
ジョーンはさっきよりは「冗談めかして怒っているかのような」素振りになって
二人に語りかけた、そしてあの時貰ったカードの本分部分はやや隠れるように
且つ名前は確認出来るように差し出した。
「DIO…と君は遭遇したのか…」
「彼はわたしが「こんな夜中にいきなり失礼だ」と言ったら大人しく帰ったけれど
その時にお詫びとして置いていった物よ」
「…え、それじゃあこれ15年も前の茶葉って事に」
露伴が青い顔をしたが
「大丈夫よ、製造したてとほぼ同等の状態にまで「戻して」あるから」
「とほほ…それでこれだけ香り立ってるわけでもあるのか…茶菓子が進むなぁ…」
「…その口ぶりだとわたしの能力は探ったみたいね」
「正直君の能力は良く判らないけどね…」
承太郎はただただ冷静に
「…DIOの置き土産か…やれやれ…確かにこれは大変な因縁だ…」
だいぶ二人が飲み終えた頃、ジョーンが呟いた。
「…わたしの故郷はイタリアだわ、既に知ってるかも知れないけれど。
丁度…故郷がどうなったかを知りたかったのもあるから…もし何なら…
わたしが行ってきてついでに調べてもいいけれど…?」
承太郎は静かに呟いた。
「危険かも知れない…「ついで」で君を危険な目に合わせるわけにも行くまいよ…」
「気にしないで、どうとでもなるわ、わたしの能力と性質はそういうものだから」
神妙な面持ちで承太郎は名刺を取り出し、そこに書き込みをさらに加えジョーンに渡した。
「電話、メール、手紙…何でもいい、判った事があったら伝えてくれ
あと、無理はしないでくれ…そして今すぐは流石に危険かも知れない…」
ジョーンはそれを受け取りつつ
「判ったわ、そろそろカップの中も空になりそうね」
「やっとだ…やっと解放されるぞ…」
ジョーンは無言でまだティーポットに残る中身を全て二人のカップに注いだ
「うわぁああああああ! 何てことをッこの女ッ!」
「必要ならクッキーでも追加しましょうか」
承太郎は全てを受け入れる覚悟で
「…まぁ…スコーンを山ほど積まれるよりはいい扱いだな」
「ミスター岸辺、貴方には一つだけ逃げ道を用意してあげるわ」
「…な、何だよ?事と次第に依っちゃ喜んで食い付くし
事と次第に依っちゃ断るぞ、僕はッ!」
彼女は幾らかケント紙を持ってきた。
(厚手で表面が消しゴムなどでがさがさになりにくい紙)
「近所に日本の「MANGA」ファンの人が居るのよ、その人なら貴方を知ってるかも
だから、話のネタに何か描いてくださる?」
渡りに船ッ!救われたと言う面持ちで彼はバッグの中から即座にペンとインクをとりだし
目にも止まらぬ早業で白黒絵をケント紙の枚数分だけ描き上げると免除されるそのフレーバーティーを使って
二色原稿のようにそれを仕上げた。
その間たったの三秒!
正直ジョーンは驚いた。
「凄いわ、かなり見直した」
「ああ、私もこのくらいの特技が欲しいよ、正直そう何杯も飲める物じゃあないからな…」
承太郎の弱音らしき言葉にそこで初めて一連のトラブルの後彼女が少し微笑んだ。
彼も少しだけ苦笑のようにも見える微笑みを見せた。
◆
◆
◆
2002年夏のことだ。
ジョーンはイタリアへ渡った。
承太郎に語った「故郷の今が気になる」のは彼女の本心であったし
今ひとつ付かなかった踏ん切りの後押しが「J=P=ポルナレフ」の捜索だったのも
また、事実であった。
彼女の故郷はナポリ(ネアポリスとも呼ばれていた)よりややローマよりの
フォルミアと言う街の近くの山地にあった。
当時はあの規模でも「村」という感覚だったが今なら「集落」と言った方が
適切かも知れないほど小さな村だ。
当時とは道の順路も、麓にあった小さな村も変わってしまい、少し
地理感覚を思い出すのにも時間が掛かったが、道路から別れ
山道を進み、その集落のあったであろう場所に続く丘を見下ろす場所に立った。
懐かしいなどという感情が湧く以前に激しい切なさが彼女を襲った。
まだ、そこにその小さな村は存在したからだ。
風景はすっかり「現代の小さな村」の風貌にはなっているが
今でもオリーブやブドウを栽培している片田舎のようだった。
何故夏に訪れてしまったのだろう、あの時も夏から秋にかけての
収穫の時期だった…
もう、そこには居られなかった、涙が溢れそうで、正気を保てそうになくて
逃げるようにその場を去ってしまった。
――結局、自分が本来確かめたかった事には何も触れられなかったな…
軽く落ち込みもしたが、580年近く昔のことなのに、未だ薄れない記憶に
心の奥底で彼女はその元凶を作った人物を恨んだ。
そして、彼の能力からしてもまだどこかに彼も生存しているはずだ…
あの男だけは…いつか目の当たりにしたら…
そう思いながら、彼女はナポリに向かった。
自らのルーツを訪ねる旅の一環としてヴェネツィアにも行きたかったが
幼い頃の苛烈な運命に翻弄される元凶となったローマ経由では絶対に
行きたくなかったので、ナポリから東南東辺りのフォッジアへ向かい、東側の海岸線沿いに
ヴェネツィアに向かう…かなり冗長だが、承太郎が一つだけ知っているヒントとして
「ひょっとしたらナポリに何かがあるかも知れない」
とも語っていたし丁度よかった。
ヒロセ・コウイチという彼の信頼する少年がそこで何かが始まる一端を
経験したから…とのことだったが…
夏の日差しの中、カフェで何となく魂の抜けたようにくつろいでいた。
――これからどうしようか、どこから何を探ろう
ぼんやりと前をまた向こうかと目に光が戻り始めたその時だった。
「旅行者かい? こんな所でぼーっとして、危険だぜ?」
通りから声を掛けてきた夏場とも思えない薄手のセーターのような服を着て
頭をすっぽりと覆う帽子まで被った若い男性。
「あんた、結構いい女だしな」
下心のありそうななさそうな、ステレオタイプなイタリア男って感じの
雰囲気で「彼」は接してきた。
「ああ、ええ…迂闊だったわ、ありがとう。
フォルミア近くの故郷に寄ってきたのだけど…足を踏み入れる度胸が沸かなくて…
正直、そんな自分にもちょっと嫌気がしてしまって」
図々しくもその男はジョーンの向かいに背もたれを前にしてそこに手を組んで
掛けるようにして座り、ウェイターに
「ヘイ、カメリエーレ(ウェイター)!彼女と同じ物を頼むぜ」
「レモネードよ?いいの?そういうので」
「いいじゃん、嫌いじゃあねーぜ、今時はこういうすっきりしたモンも美味いしな」
にしても、結構この女も事情抱えてるんだな、という細かな機微を感じたような
にこやかながらも少し慎重さも見せるような態度と口ぶりで
「まぁ、故郷ったって色々あらーな、へぇフォルミアの近くか」
相手に失礼を感じさせない程度にジョーンをちらちら確認しているところを見ると
「混血であること」がトラブルの発端なのかな、とか気を回しているのも感じる。
ジョーンは少しこの若者にいい印象を抱き、生気の宿ってないような表情だった
彼女が少し微笑みを見せた。
「ええ、フォルミアの近く、もう少し山の方だけど」
「あー、ブドウとかオリーブ作ってるとこな、その村の特産品ってのはないが
この辺で出回る気安いワインとかにゃ確実に使われてる、俺もよく飲むぜ」
イタリアは16歳から飲酒可能である。
「んで、これからの予定は?」
「さぁ……知人に頼まれた人捜しもあるし、どうしたものか…ヴェネツィアにも行きたいし」
「フォルミアからヴェネツィアに行くのにナポリに寄ったのか?」
「そういう事ね、ローマには何が何でも行きたくなくって…」
流石にこの青年も「どんな事情があったら何が何でもローマに行きたくなくなるんだ?」
という疑問を抱いたようだった。
「まぁ…あとはその「人捜し」の手がかりがこのナポリにあるんじゃあないかって」
「誰を捜してるんだい? つったってよぉ、ナポリだぜ?
雲を掴むより大変そーだなぁ」
「そうなのよね…その「切っ掛け」をどこから掴んだ物かって」
ちょっと呆れたような表情をその若い青年は見せて、
「…そりゃ、途方にも暮れるよな…っと…やべぇ…昼時か…」
少し落ち着かない様子を「彼」が見せたことでジョーンが
「誰かと予定でも? こんな所で油を売っていていいの?」
こう言う時のジョーンの柔和な表情は時に勘違いを引き起こす。
その若い青年はちょっとどうしたものだかっていう「繕い笑い」のなかに
確実に焦りを見せて小声で自分の腹の辺りに何かを言い聞かせるようにしている。
その声をジョーンは聞くことが出来るわけだった、それは、スタンドだった。
「メシーッ! メシノ時間ダゼミスターッ!!」
「早ク食ワセローーッ! 働イテヤンネーゾッ ミスタッ!」
どうやら複数居るらしい小型のスタンド群のようだ、ジョーンは自分も
スタンド使いであることがバレることも厭わず微笑ましいな、と少しおかしそうに
「貴方のスタンドは食事もするの?」
その若い青年は焦りのあまり、今の言葉を素で受け止めて
「そーなんだよ…何処で憶えたんだかこんな習慣をよ…クソッお前ら!
食うのはいいがもう少しくらい時間に余裕見て騒ぎやがれ!」
…と、そこまで言ってミスタは重大な事に気付いた、驚愕の眼差しで
ジョーンを見つめた。
ゴゴゴという音が彼の周りに渦巻く感じがした。
「わたしの名はジョーン=ジョット…今の国籍はイギリスだけれどね」
彼女はパスポートを見せた、確かに「Joan=Giotto」で写真も何も
本物だし、彼女が嘘を言う理由があるとしたら、それは自分を狙っている
場合だけだろう、ミスタと呼ばれたその青年は少し思案した。
「ピザは食べる? マルゲリータでいいかしら?」
ミスタと呼ばれた青年は一瞬これは罠かも…と思い警戒しようとしたが
「ソコニサラミノトッピングダゼ!多メガイイッ!」
「話ノワカルネーチャンダゼ!」
スタンドたちはもうその気で居るようである、そのうち、そのスタンドの内の
一人なんだろう気の弱そうな額に「5」の数字を持つ者がジョーンのそばを
おっかなびっくり回って様子を探っている。
「わたしは「人捜し」でここに来たのよ…それ以上の目的はないわ…」
「お…おし…その言葉ッ…!真実として受け止めるッ!
んで…なんだ?「J・O・A・N」なら「ジョアン」じゃあねーのか?」
「イギリス英語では「ジョゥン」に近い発音よ、言いやすく「ジョーン」で
発音してるけれどね」
「まったく英語とかフランス語とかドイツ語とか、なんでこんな読みにくい
綴りと発音してやがるんだ…おっと、先に名乗らせちまったな、悪い
おれはミスタ。 グイード=ミスタだ」
「宜しく、ミスタ」
ジョーンはオーディナリー・ワールドを少しだけ出して、「5」を額に持つ
小さなスタンドへ手を差し伸べた。
「わたしの能力は物理効果だから、スタンド相手には直接殴る以外効果はないわ」
今にも泣きそうな顔をしながら勇気を振り絞って「5」はオーディナリー・ワールドの
指の一つを手に取り握手のようにした。
ミスタは正直言ってかなり緊張したようでかなり表情も堅くなり
いつでも何か色々とアクションが取れるような筋肉の張り方になったのをジョーンは感じた。
第二幕 閉
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