Sorenante JoJo? PartOne "Ordinary World"

Episode:Ten

第二幕、開幕


ジョーンが泳げないあたしへのフォローも放って自室に最短で戻るのには理由がある。
…ああ、あたしルナね。
部屋に籠へ再びリベラをしまっていたのよね、まぁ彼女もスタンド使いなのだから
一瞬でどうこうと言う事はないでしょうけれど…

ポシェットのような物を肩からかけた猿が入室してきた、それにリベラが反応した

『!!』

リベラが威嚇を始めるが、猿はリベラが籠に納まっているところを確認すると
取り立てて警戒するでもなく、あまりジブラルタルには猫の姿はないので
物珍しそうにリベラの籠に近づく。

この猿は外見がタイワンザルとかニホンザルに近い近縁種なので大きさはさほど無い。
無いけれど、やはり野生動物、リベラはビディに対してなんかよりも遥かに
「何が起るか判らない」恐怖に駆られ、猿が籠に手を触れようと手を出してきた時に
アイム・オンリー・スリーピングを出してはねのけようとした、籠はそれで壊れる。
…が、猿は少しだけ驚いたような表情を見せた後、手をWで構えると…

一階ロビーでなかなかやってこないエレベーターをじりじりと待ちながら…
あたしの視覚にフューからの視界が入ってくる

「…この猿…スタンド使いだわ…!」

「なんだって!?」

もう待てない、と言う感じでウインストンが階段目掛けて走って行く。

「ジョーンはまだなのか?」

ミュリエルが心配そうにあたしに聞く

「…あと1フロア半ほどだわ…結構高い階層の部屋だからね…
 あたしもミュリエルのフォロー付きで20メートル圏内じゃないと見るだけしかできない…!」

エレベーターが到着し、駆け込む。

「スタンド使いか…なるほど…特定しやすい子だなとは思ったけれど…
 能力までは探れないからなぁ…」

アイリーがモニターをしながら呟く

「ともかくケント、とりあえず残酷なようだが、まずは射程圏内に入ったら
 逃げ道を塞いでおくれ」

ポールがケントに言う

「え…でもよォー」

「大丈夫よ、リベラだって結構なスタンド使い…ただでやられるような子じゃあないわ」



猿のスタンドは矢張り力だけは強かった。
リベラのスタンドを押さえながら、猿は籠に手を入れリベラを結構慎重に取り出す
必死に威嚇するが彼女も『やばい、勝てないかも』という弱気な声になってくる。
やはり野生の動物が持つスタンドのパワーには勝てない、スタンドも猿のスタンドを
押さえるのに精一杯で能力も使えない。

ジョーンを呼ぶ声なのだろう、リベラの声が響く。
あたしのフューは何も出来ないが…猿のスタンドの周りを回ってとにかく何とか
隙を作れないかとだけは足掻いてみたが…

猿は直感でわかるのだろう、エネルギーが弱くて何も出来ないのだろうと言う事は。

猿はでもリベラに危害を加えようというのではないようで、その黒くてふわふわしてて
柔らかい「子猫」という生き物に「保護本能」のような物が働いたのだというのが判る。
リベラを大事そうに抱えた。

リベラは何かを訴えるような目で猿を見てか弱く鳴く。

そんな時、ベランダに手が掛かる、ジョーンだ。

光学迷彩を解きながら、いきなり現れたジョーンに猿は驚き、少し強めにリベラを抱く。

『イヤーン』と言う感じでリベラが声をあげると猿がたじろぐ、
『いや、そんなつもりはないんだ』とでも言いたげに、だが、逃げなければならない。

少し隙が出来た瞬間、ジョーンは一気に間合いを積め、オーディナリーワールドで
猿のスタンドの右手を大きく開くように殴りかかると、本体へそのダメージが
フィードバックされてリベラが解放される。

ジョーンがリベラを保護し、体勢を立て直す。

猿はリベラも奪い返されたし、侵入したベランダから逃げようとジョーンから距離を
置きつつ、素早いスピードで窓に寄った時だった!

猿の目の前に壁がそびえ立つ!
三箇所ほどある窓全てを次々と壁で覆った!

室外からなのだけれどケントが

「はァ…はァ…間に合ったかァーーーッ!?」

「大丈夫!」

あたしが言うとウインストンも階段から上がってきてあたしに鍵を投げて寄越す、
あたしはそれをリペアーで受け取り、速攻鍵を開けて室内へ入る

追い詰めた…!
猿は壁をひっかいたり部屋をあっちこっち走り回るがもう、余程の幸運がないと
外へは出られないはずよ…!



あー…どっきどきしたぁ…こう言う時にまだまだ子供のアタシって
ちょっときっついよねぇ、でも猫で良かったぁ。

猿って生き物は初めてだけど…アタシはパニックおこしかける猿に言ってみた

『待って、アタシらは別にアンタを殺したりどーこーしよーっていうんじゃあないの!』

アタシの声に猿が反応する。

『アンタのその荷物にみんな用事があるの、ホントだよ』

猿の「気」が柔らかくなったのをルナも感じたんだろう、スモールが
オーディナリーワールドに殴られて少し怪我した猿の右手を治した。

アイリーが警戒をしつつ、設置されたテレビに接続されたビデオデッキの
差し込み口ってところを手で開けて指で猿に見るんだったら見なさいって感じのジェスチャー

猿は何故その事を知っているという感じでびっくりしてるんだけど

『みんな知ってるよ、あたしらみんなアンタの仲間みたいなモンだもの』

アタシがそう言ってやると、猿はポーチからビデオテープを出した。
ナニコレ、ボロボロじゃん

「壊れてるわ…正常に再生できないかも…」

ジョーンが呟く

『それ、壊れてるって、ジョーンだったら直してくれるわ、渡してあげて』

アタシが言うと、そいつが…まぁ力比べで同等以上ってのを思って観念したんだと思う
ジョーンにビデオテープを恐る恐る渡した。

「さすが動物同士っつーかよォーなんか会話になってるみてぇーな」

ケントがそう言うと、みんな頷く。

オーディナリーワールドが出現してケースもテープもボロボロになってた
ビデオテープを少しずつ直して行く。

「ケント、もう壁は引っ込めてもいいわ、大丈夫、ビデオテープを
 ジョーンに渡したって事は多分もう大丈夫よ」

ルナが言うと、ケントはちょっと戸惑いながらも壁をしまった。
窓を塞いでいた壁なんだから、部屋の中が明るくなる。

ジョーンが足りないパーツがあるはずだ、的に欠けた部分と猿のポーチを
交互に指さすと、猿はポーチをひっくり返し上下に振る、
幾らかプラスチックの欠片が落ちると、ジョーンがそれを拾って
ビデオテープの欠けた部分に合わせて行くと、それがくっついて行くのが判る。

猿は驚いてジョーンと、アタシの方を見た。

『どうよ、ジョーンはだからちゃんとやってくれるって』

ま、あたしがドヤって顔したって仕方ないんだけど。
こいつも能力もちってことは結構心細い思いもしたかも知れない。
しょうがない、アタシは自分から猿に近づいてやって
猿に撫でられてやるわ、愛くるしい子猫ってこう言う時辛いわね

「…これでとりあえず再生は出来るはずよ…もうちょっと粘れば
 もう少しはテープの痛みも直せるとは思うけれど…」

ジョーンがデッキにテープをセットして、巻き戻し、再生を押す。
上映に合わせてアイリーは近くのカーテンだけを閉めた。



普通の観光ビデオっぽい…なんて事のない記録からそのビデオは始まっていた。
あ、あたしアイリーね。

「日付は1999年…この辺りテープが痛んでいて時期は秒表示以外よく判らないが
 確かに8年前だ…ソルテ氏最後の仕事と言う事になるのかね?」

ポールが言う

所々ビデオを止めて場面が移って…すると猿が現れる。
んー、まぁこの半島自体猿はそこそこ居るんだけど…多分、この子なんだろう。
ソルテさんは

『魂消たねぇ…おめぇさんがスタンド使いとは…ああ…まぁもっとでかい猿とか
 犬とか鳥とか…スタンドってのは別に宿主は選ばねぇか』

ビデオが止まってる間に何かがあったんだと思う、次の瞬間にはソルテさんと
お猿さんは打ち解けていたようだ。

ソルテさんは自分の能力を説明して見せたりしてるんだけど、そしたらお猿さんが
一旦居なくなって、『変な奴だな』という言葉でまた一旦終了、そして
次の場面では暗い山の上にロケーションが移っていた。
ルナがPCで調べ事をしながら

「…The Rockに対して北向きだわね…東がやや明るめだから…夜明け前のようだわ…」

ソルテさんの声が聞こえて、闇っぽい中に…猿が見える。
多分、この子なんだろう。

『おいおい…こんな所まで引っ張り出して…なに見せようってんだい…』

猿はジブラルタルにそびえる岩山…The Rockの上辺のどこかにソルテさんを誘い出し
そして…猿にスタンドが沸き起こると…
十数メートルをフィールドとしてそこだけ「昼間」になって、…なんだろう
ちょっと現代の人とは思えないけど…そんなに昔でもないくらいの…女の子というか…
女性と言うにはまだちょっと若いかなって感じの人が…何か遠い目をして北の方を
向いたり、諦めたようにこっちを向いたり…胸にペンダントか何かしてるのだろう
それを握りしめながら重い表情をしているのが見える…

…んだけど、何しろかなり痛んだテープだし、更にいえばあんまりはっきりと
「その再現」も出来ないのか、「若い女性」くらいの情報しかわからない。

ジョーンが

「…特定は難しいわね…でも…」

「どうしたよ?見覚えがあるのか?」

「難しいわ…似たようなシルエットの人だってそれなりにいるし…」

とばかり言った頃、多分この再生された「昔の場面の」お猿さんなんだろう、それが画面左から
彼女が何かご飯でも持っているんじゃあないかってかんじで飛びかかった。
ちょっとした悲鳴と共に、彼女のペンダントが千切れて画面右の方へ落ちて行く

スタンド使いのお猿さんは興奮したようにその飛んでいったペンダントを指さした。

そして、そのビデオの奥のスタンド能力で恐らく昔の出来事の中にいる女性が
凄く悲しんで泣き崩れているのが映し出されている。

「半分言葉になってないけれど…フランス語のようだわね…
 服装からして…二次大戦中疎開で来た人かしら…」

ルナが推理する。
ビデオではソルテさんが

『ん、なんでぇ、オメぇさんの能力でたまたま見つけちまったこの悲劇
 猿として申し訳ないからあのペンダント探せってかい?』

ビデオの中のお猿さん…詰まり今ここに居るお猿さんが崖を降りて行く。

『おいおい…人間様にゃぁ…ちょいときついぜ…勘弁してくれ…』

と言いながら何とか降りて行くのが記録されていた。
ここから暫く崖を慎重に降りる場面が続くようなので…

「つまり…この捜し物はまだ見つかってない…と言う事になるね」

ポールが言う

「あーでもさぁ…流石にウン十年前とかだと…他にも観光客の落とした物だとかもあるから…
 ペンダントのデザインもぼやけてるオマケにテープ痛んでるし…候補が絞れないなぁ…」

あたしも何とか探してあげたいんだけど…手がかりが少ないというか…

「でもまぁ、これでソルテ氏最後の仕事が何だったかは判ったな…これを探せば終了か」

ウインストンがビデオを止めようとすると…お猿さんが止めるなって感じで一声上げた。

「?」

「まだ先があるって事だわ…下手したらここからが本番なのよ…
 彼は崖から落ちて死んだわけでもないんだわ…」

ルナが厳しい顔をする。

ソルテさんが半島の東側に出ると…一応道路はあるんだけど、東側にめぼしい街はなくて
急な崖が続いていて平地が殆ど無い

『ここ一緒に探せってかい…やれやれ、飛んだ厄介事だぜ…これは……ん…?』

彼のビデオがライトを消して海岸線の方に向けられる。
まだ朝日は昇らないけど、シルエットでクルーザーが二隻百メートルほど先にあるのが見える。

『…おいおい…』

カメラがズームすると…何か取引が行われているようだったけど…取引相手なんだろうその人が
いきなり腹を何かで貫かれ、吹っ飛んでいった!

そして、息を殺すソルテさんはその現場を押さえながら逃げるタイミングを計っていたんだと思う。
かなり遠い音声だけど、船の上にいる人物は携帯電話を取りだして

『ああ、ペリーコロ…終わったよ、後始末を頼む…』

と、通話を追えたと思った次の瞬間!
ビデオのそのクルーザーの上の人物がいきなり消えた…!
そして…!

『…だから嫌だったんだ…こんな所までわざわざ取引に応じてみたら…
 お前は何処の手の物だ…?』

その台詞がフレームの外だけど近くから聞こえた瞬間、ジョーンが同時通訳をした。

「さっきのも含めて、イタリア語だわ…何か、かなり宜しくない取引だったようね」

ソルテさんは何が起ったのか今ひとつ把握できず、身動きが取れないようだった…

『英語で話してくれねぇかな…あっしはたまたまここに居たイギリス人でね…』

『ふむ…たまたまか…だがその発音…訛りも確かにイギリスの…首都圏の古い方言だ…
 巡り合わせが悪いというかなぁ…お前…一体何撮っていたんだ?』

『朝日でも…と思っただけでさ…イギリスじゃあ…こんな気持ちのいいモン
 なかなかみれないモンでね…』

『…どっちでもいいさ…それを渡して貰おう…』

ソルテさんの緊張が最高潮に達した時

ソルテさんのスタンド能力なんだろう、そこに一人の人物が映し出される

『む…ッ何者だ!』

一瞬フレーム外の彼に隙が出来たんだろう、ソルテさんが走り出す…!

…と、ここで録画は終わっていた。

しーんとした空気があたしらを覆う。

「ペリーコロ…ペリーコロ…その名…聞いた事があるわ…」

ジョーンが記憶を整理してる。

「おいおい…8年前とは言えよォー…こりゃぁちょっとまずいんじゃぁねぇーのォ?」

ケントが言う…うん、そうだね…

「船の上の男…明らかにスタンド使いだぜ…」

ウインストンが言うと、ポールがビデオを少し巻き戻し

「船の上の人物が消えた時だ…ここを見てくれ給え…
 秒の所だけ何とか読めないかね…私にはこれが…15秒を差しているように見えるのだが」

「…そうね…5が少し判りにくいけれど…5秒戻して…」

ジョーンが言うと逆再生コマ送りでポールが

「4…3…2…1…うむ、1の数字は判りやすいね、それで15秒まで来た…次の瞬間だ」

15秒から今度は正方向コマ送りをする

「…ここだ…15からいきなり…25に…なっていないかね?」

それにルナが

「…本当だわ…ビデオを一旦切った様子もないのに…いきなり10秒飛んでいる…」

「…っつーこた…これは時を止める能力とは少し違うな…」

とウインストンが推理に加わった時だった。

「そうだわ…ペリーコロという後始末を頼まれた人物…そしてこの…10秒ほどの時が
 「吹き飛んだ」という効果…「キング・クリムゾン」…間違いないわ…
 イタリアのマフィア、パッショーネの…先代ボス、ディアボロよ…!」

ジョーンが言う、確かに、今はジョルノって人らしいから…

「まて…待て待て…ということは…今はもう倒されているはずだ
 俺の情報とジョーンの記憶に依ればそいつは6年前に倒されている」

一気に緊張した空気が瓦解したのが判る。

「そう、ディアボロはもう倒されているわ…でもなるほどね…ソルテ氏の最後は
 これで何となく想像が付いたわ…」

リベラがお猿さんに話しかけてる、多分もう「そいつは居ない」って事を伝えたんだと思う
お猿さんはリベラと何かやりとりをしているようだ。
リベラがジョーンの方を向く。

「間違いないわ、信じて、もう危険はない」

ジョーンも会話自体が理解できるわけではないけれど、8年という時間をこそこそと
隠れるように過ごしてきたこのお猿さんの行動からも、この「ディアボロ」って人を
警戒しての事だったんだろうとあたしでも予想は出来る、だから、ジョーンが
リベラのお猿さんへの「言葉」にお墨付きを与えた。

お猿さんが脱力している。
気が抜けたみたいだ、よくよく考えたら可哀想な話だよね…
たまたま仲良くなった「同じスタンド使い」の人に捜し物を手伝って貰おうとしたら
たまたまそこにマフィアのボスが取引と殺人を犯しているところに遭遇した…
しかもそれが「時を吹き飛ばす」なんて凄すぎてよく判らない能力者だったと言うんだから…
きっとお猿さんがスタンド能力で捜し物を継続することも警戒から出来なかったんだろう、
追っ手の気配がなくなって何年か経って今やっと「そろそろいいかな?」と思っての
今回の騒動なんだろうし…

「ジョーン、パッショーネのボス入れ替えは2001年の春だったな?」

ウインストンがジョーンに聞くと

「ええ、この間話したけれど前組織の影響は抜けきらない物の
 2002年にわたしは彼らと会っている、その時点で「去年」と言っていたから」

「ここでの事件はよォー1999年だから…ひょっとしたら二年は追い回されて
 いたのかもなァ、結構可哀想な奴だぜ、こいつも」

ケントがお猿さんに深い同情を示した。

「よし、お前の名は「Koiki(小粋)」スタンドの名前は「イン・マイ・ライフ」だ!」

今まで黙っていたミュリエルが突然お猿さんに語りかけた
『な、なんですか』と言う感じでびっくりしているお猿さん

「「小粋」ってな日本語だな、「ちょっといかした」って感じの意味だ
 …ミュリエル日本語知ってるのか?」

ウインストンの言葉にミュリエルは

「少しだけだ、ウインストンのスタンド名も「風」と「街」で分離して初めて理解できる程度…
 産みの母が日本人だった、殆ど記憶はないが…今思うときつい生活の中でも
 何かこう…振る舞いとか気構えとか…そう言った気高さをいつでも捨てるなと言っていた。
 私が軍に引き取られた後…国家反逆のかどで父諸共処刑されたように聞いた」

ミュリエルは淡々と喋った、でも、重いね…現代でもそういう事、あるんだなぁ

「なるほど、粋な母ちゃんだったようだな、納得だ、この猿の心意気から「小粋」ってことだな」

コイキと名付けられたお猿さんは、話がわかったのなら捜し物を手伝ってくれ
と言うようにジョーンの手を引っ張った

「ちょっと待ってくれるかしらね…これ…(デッキからビデオテープを取り出して)
 ジョーン、もう少し修復して、今のままじゃあ余りに広範囲を充てもなく探す事になるわ」

ルナがビデオテープをジョーンに渡すと、ジョーンはコイキに少し待つように言って
オーディナリー・ワールドの手がまたビデオを修復しだした。

「ミルデにとってもこれは遺品だろうけど、コイキにとっても大事な遺品だわ
 修復が出来る限り済んだらPCのほうにキャプチャーだけとらせて貰って
 ビデオテープそのものはコイキに引き渡そうと思うけど、ポール、みんな、異論は?」

あたし含め、みんなない、と言う。
そうだよね、命をかけて守り通したとも言えるものだからね。

ルナは旅行鞄の中から小さなら機械を出してビデオデッキの後ろの接続を外し
その機械に繋いでPCに接続した。

「流石にもうプールサイドで一休みって状況ではないけれど…
 夕飯前にはキャプチャー含め出かけられると思うから…
 あたしとジョーンとリベラはここに残るわ、みんなは直ぐに戻ってこられる
 範囲で出かけて構わないわよ、早めに少し食べておくのもいいかもね」

「そうだね…、幾らか画質が修復されたのだとしても…もう数十年前の落とし物だろう
 簡単に見つかるとも思えない、長丁場になるかもだからね」

ポールが言う、そしてとりあえず着替えと共に男連中は自室に戻った。

「あたしもここに居るよ、画質が修正されたら幾らか直ぐ特定範囲絞れると思うし」

「では…ルームサービスとやらを…頼めばいいのだろうか」

ミュリエルも残るみたいだね、ルナはもうシャワールームで着替えを始めつつ

「済まないわね、仕事はさっさと済ませて休暇に専念するためにも…
 初日二日目辺りは潰れる事覚悟だわ」

とはいえ…

「ルナ…いつものスーツはちょっと暑くない?」

「なんか…こうしないと気分が高揚しないというか…暑いけれど仕方がないわ
 まぁでも…靴だけは…何か予感がしてカジュアル向けとは言え
 登山靴買ってきて正解だったけれど」

「あたしスニーカーのままだけど大丈夫かなぁ」

「崖下へは…レンタルサイクルとかその辺を利用して半島を迂回しましょう…
 直で降りて行く事はないわ」

ジョーンがビデオテープの修復に集中しつつ、あたし達に声をかけた。



ルナがビデオの中身をパソコンに取り込んだ所で、ポールに電話をかけた。
「用意が出来たわ」と。
こういうの、ちょっと緊張するが…私が…伝える。

小粋の案内に添って我々が山道を登る。
どうも、アイリーが捜し物をするには「はっきりとした映像」が欲しいのだと
言う事が小粋には判ったらしく、その場面を再現するためには「その場所に」
行かねばならないと言う事のようで…トレッキングコースとして整備されている
山道を歩く、とはいえ、ポールもケントも直ぐに音を上げるのだが(苦笑
ルナも汗にまみれつつ二人に声をかける。

「あたしだってわざわざ歩きたかないけど…仕方が無いじゃない」

「いやー…だが山道はきつい…四十路を越えたらこんなに山道がきつくなるとは…」

「ストレートによォー…あれ…乗れたらなァー」

これから向かう場所の近くまではケーブルカーもあるので二派に別れるなり
しても良かったのかも知れない。

「ああ、アイリー、迂闊に果物は出して食べない方がいいわよ」

「えーでもだって暑いしさぁ〜」

と言ったばかりに小粋ではない別の猿がアイリーを突き飛ばしてそれを奪って行くわけだ…

「あーん、もう」

「やれやれ、油断のならない場所だわね…でもリペアーとかで奪い返しても
 もう食べる気はしないでしょ?」

「しないよぉ〜…あー…いい天気だねぇ…」

アイリーがちょっと現実逃避したかのように呟いた。
男性陣はポールが割といつもに近い服装だが上着は流石に置いてきていて
シャツも肘の辺りまで折っている、タイはせずに第二ボタンくらいまで開けていて
ケントはハーフサイズのカーゴにTシャツ、帽子
ウインストンはフルサイズのカーゴにアロハっぽい半袖シャツでボタンは全部開けている。

ジョーンはプールサイドでの格好にそのままいつもの巻きスカートって感じだ、
アイリーはいつもの服のタイツを脱いで、上着も一枚減らしたくらい。
…私は…どうでもいいじゃあないか…

確かに暑い、私が以前住んでいた国も寒さが厳しくて夏もそれほど暑いと言うほどでは
ないところだったし…果物が欲しくなるのも判る。

山頂…というかロケーションの良い場所に展望台やレストランのある場所に来た…

「…やぁ、お揃いだな」

彼は…

「よぉジタン、なんだよマジで来たのか?」

ウインストンが嬉しそうにジタンを迎えた、
ルナが私の耳元で

「…彼らは幼なじみ、元々K.U.D.Oに勤めてた事もあるのよ
 大丈夫、立場上あんまり馴れ合うのもどうかって感じだけれどね」

…なるほど…父も彼だけは付き合いやすいと言っていたし…私を「保護」した時も
かなり私に気をかけてくれていた…

「ホテルに向かっていたら…トレッキングコースを君らが歩いてたからさ…
 ジョーンは目だつよな、で…ケーブルカーで先回りしたんだ」

そして彼はもの凄く優しい笑顔で私に近づき

「…やぁ、君がジョーン達と出会ってくれて、嬉しいぜ」

「…え」

「ミュリエル、お前が誰に出会ってどう成長するかを、敢えて運命に任せたんだと」

ウインストンが言う。

「そ…そうなのか…? 時々見えたあのコートの人物は…」

それを聞くとジタンとルナが笑った。

「結構バレてんじゃあないの、ミルデも…w」

「彼は、一応それでも君に何か一大事がないかを…ダビドフと俺で頼んで
 たまに様子を見て貰っていたんだが…君に結構肩入れしていたし…
 身を乗り出しすぎてた場面がかなりあったようだな」

「私の運命…って」

「そう深く考える事はないよ、でも俺は確信したんだ、君は絶対に幸せになると」

本当に満足そうに彼が言う、ちょっとその中性的な風貌といい…そのちょっと…カッコイイ。
同級生の好みだともう少し…がっしりとした…そうウインストンのようなのがタイプなんだろうが…

「さて、それはいいとして…コイキが困ってるわ」

ルナが言うと、ジョーンが小粋に何か身振り手振りで大丈夫だから、と言っているようだ。

小粋は半信半疑ながらも、我々と仲の良い人物だと言う事は大丈夫なのだろうと、
少しトレッキングコースを外れて我々を案内する。

「…ところで何してるんだ?」

ジタンが聞き、ルナが答える。

「仕事よ、ミルデのお父様のやり残した仕事を完結させるの」

「それに猿が絡んでるのか?」

「ええ、彼のスタンド…ミュリエル命名「イン・マイ・ライフ」は
 どうも「過去にその場で起った出来事をその場で投影する」能力なのよね」

「スタンド使いなのか…ミルデの親父さんと言う事は…ニル氏だな
 彼のビデオは凄かったな」

「ええ、それが今回の報酬になるの」

「なにッ!マジかよ」

ジタンがちょっと興奮する、そんな情熱的な場面は私は見た事がないので
ちょっとびっくりしていると…

「ビデオは最終的に依頼人の物になるってもう10年くらい前だが
 親父さんが言っててさ…でもそれが今報酬ってどー言う事だ?」

「それは…」

とルナが言いつつ、ジョーンに視線を配る

「…わたしがその依頼人だからよ、実費の分だけ、今この依頼というわけ」

「…なるほど…なるほどだな…と言う事は君は…結構色んな人物と
 接触があるようだな…DIOは間違いないとして…」

アイリーが驚く

「判っちゃうものなんだねぇー」

「隠遁状態だったジョーンが…自ら調査をして欲しいなんて言うからにはそれなりに
 DIOに驚異を抱いた体験があったからだろうと思って…イタリアに
 俺が調査に行った今年春も…波紋道場の師匠って老人が
 君の事を心配していたし…何だかんだ誰かと接触してるんだとは思っていた」

ルナが苦笑しながら

「やっぱりBCに置いておくには勿体ないわ、あなた」

「メッシーナ師はつい先月、亡くなられたわ」

ジョーンが言うと

「そうか、100には見えなかったがでもやっぱり結構な歳だったようだからな
 波紋道場も…ってことは今一人なのか」

というとアイリーが

「おー、ジェミニアーノ君も知ってるんだ」

「むしろ俺の方が何で君らが知っているんだと思うんだが…ああ
 師の逝去を彼が伝えに来たって訳か」

ジタンはジブラルタルの街を見下ろして

「…それにしても…俺がここを選んだ理由は何も君らって訳でもないんだ
 …祖母の大戦中の疎開先がここでね…まぁそれを偲ぶというか…」

と懐かしそうに語ったと思ったら、ルナとジョーンが固まっているのが判る

「…何かあったのか?」

「ああ…いえ…ジョーンの「奇妙な予感」って…」

「ええ…なんだか当たってそう…」

ジタンは怪訝そうな…というか不信感と言うよりは訳がわからないと言う感じの表情だ

「あー…多分よぉ…あの猿…「小粋」と名付けたんだが…あいつについて行けば判るかも」

ウインストンが言うと

「どう言う事だ?」

小粋が立ち止まる、そして我々はもうちょっと先に進むように身振りで示す。
ルナがノートPCで動画を確認しながら

「…ええ、確かにここだわ、ポール、ビデオカメラ持ってきたわね?」

「ああ、ぬかりないよ…ふぅ…しかし山道は堪える…誰か撮影を替わってはくれまいか…」

ウインストンが申し出ようとしたが

「俺がやるよ、今付いたばかりで途中までケーブルカー移動だったしな…
 (ルナ持参のノートPCの画面を確認しながら)…なるほど、こう言う感じで撮せばいいか?」

カメラのLEDが点灯すると、それが合図だと言う事は小粋には判るようで
小粋のスタンドが発動し、夕方の山の十数メートル区画だけ「昼」になりそれは始まった。

…確かにビデオや動画に比べたら多少は鮮明さも出るが…それでも矢張りまだぼやけてはいる…

「…だが、間違いないよ、彼女は祖母だ…」

ジタンが呟く。

物思いにふけっていると、当時の猿が彼女を襲って結局ペンダントは崖下へ…
そして記録ビデオの方では判りにくかったが、ペンダントが落ちて行くのと
ほぼ同時に「彼女」に襲いかかった猿も崖側でちょっと暴れたのか
幾らか小規模に土砂が崩れて行く音が聞こえる。

「…範囲が十数メートルだから…何処へ落ちたかが判らないわ…でも…
 どうやら、落下と同時に多少地面に埋まって居る可能性も出てきたわね…
 この場合その方が有り難いというか…誰かに拾われた可能性も狭まる…」

ルナがパソコンで計算を始める、

「ジョーン、右斜面の等高線…なるべく細かく…出してくれる?
 後風速とかも推測の範囲で構わないわ」

「ええ…」

録画を終え、ジタンが我々の方を向き右手を胸の上に充てる仕草をして

「確かに不確かな部分があって外見では確実に祖母だとは言えないんだが…
 この仕草…彼女の癖なんだ、今でも、何か思い詰める時に必ずやってしまう」

「よっぽど大事なペンダントだったんだなァ、ジタンよォー、何か聞いてねぇ?」

「…残念な事にかなりシークレットな話みたいなんだよな」

アイリーがそれでも多少候補の絞り込みをしていて

「うーん、十数カ所までとりあえず絞った…後はジョーンが
 そのペンダントが60年外に晒されてたらどうなっちゃうとか教えてくれれば
 もうちょっと絞れると思う、場所もある程度でも絞れたら尚更だね」

「まぁ、いざとなればローラー作戦だな」

と、ウインストンが言うと

「でもよォ−…(崖をのぞき込みながら)
 これ下の道路の辺りまで落ちててくれないと…結構きついぜぇー?
 ソルテのおっさん、よくこんなトコ降りてったモンだよなぁ」

確かに…東側の斜面は部分的に傾斜の多少緩く草の生えた場所はあるが
半分ほどは「断崖絶壁」に近い…

「しかしまた何でこの猿…小粋はこれをニル氏に?」

「そこは…ビデオが止まっている間の出来事だし…私らには不明だね…
 ただ「似たような能力持ちだ」と言う事でシンパシーを感じたのではないだろうか」

ポールの推理だが、ジタンはあの中性的な仕草で頷いている。

「あー、ダメだ、腰据えてじっくりやらないとダメだわ…!」

ルナが頭を軽くかきむしる。

「そうね…白紙も結構な枚数必要だわ、ローラー作戦をする前に…
 絞れる候補はとことん絞った方がいいし…それに…」

ジョーンの視線の先、地平線に太陽が吸い込まれる

「そうだな、今から捜索はかなりきつい、明日朝にでも出直した方が吉だ」

ジタンが言う。
今まで出番がなかったが、籠の中の(籠はジョーンが応急処置をした)リベラが
小粋に向かって何かを伝えている。
『絶対探すから、今日はここまでだよ』
とでも言ったのだろう、小粋は見よう見まねで猿の世話をしている
(ジブラルタルの猿たちの世話係はイギリス陸軍砲兵隊が担当だそうだ)
軍人から覚えたのか、我々に対して敬礼をした。

我々も、それに応えながら

「心配すんな、ちゃんと見つけてやるよ」

ウインストンが語りかけると小粋はビデオの入ったポーチを大事そうに抱えて去っていった。

「ともかく戻ろう、完全に暗くなっちゃったら足下ヤバいよ」

アイリーの一言で我々も一時撤退だ。



ホテルに戻ると…どう言う偶然なのだか…ジタンも同じホテルに宿泊のようだわ。
ああ、わたし、ジョーンね。

チェックインが済むと彼はどこかに電話をかけているようだった。
口ぶりからすると…肉親のようだわ。

「昼下がりにも少しは食べたが…動いたせいかまともに食べたくなったよ…
 まずはレストランにでも行こう」

ポールが促してわたし達はこのホテルのレストランへ。

とりあえず昼間の事は半分リセットしてそれなりに談笑を交えて食事をしていると、
ジタンが少し遅れてわたし達のテーブルに着いた。

「なかなか難しいな、一応姉に頼んでさ…祖母の疎開直前くらいの
 ポートレートがないか探してくれって連絡入れて置いたよ、
 こういうの母には頼めないんだよな」

「なんで?」

アイリーが聞くとウインストンが

「ジタンの母ちゃんはお喋りなオマケにトラブルメーカー体質なんだよ
 下手に頼み事したらゴロワーズ家が上を下への大騒ぎになっちまう」

「祖母の耳には入れたくないんだ、大事な思い出を…確実に
 見つけられるならまだしも「まだ判らない」状態だし」

「そういえば…」

と、ルナが切り出す

「貴方のご家族にはスタンド使いは居るの? ああ、ウインストンは喋りたくても黙っててね」

早速割り込もうとしていたウインストンにルナが釘を刺した、
私もアイリーもミュリエルもちょっと笑ってしまう、ジタンもやや可笑しそうにしながら

「ああ…、居るよ、…とは言っても…「力の断片」くらいで
 本格的には開花してない感じのが二人…一人は俺を連れてイギリスに渡って…
 今はヨーク州の方にいる、力の断片なんで能力までは良く判らないんだ」

「なんでまたイギリスに渡ったの?」

アイリーが尤もな質問をする。

「うん?まぁ…俺がやんちゃだったことと…当時実家にはかなりの人数が
 ひしめいていて…正直生活費とかプライベートとか…色んな意味で限界だったんで
 3グループくらいに別れたんだ、そのうちの一つがイギリス組の俺とヨーク州の姉」

「もう一人は?」

「今実家にいるよ、捜し物を手伝ってくれてる、ああ、君みたいな探す能力じゃあないよ
 こっちも断片的な発現で…まぁ最悪家と祖母を守る役目というかな」

「へぇ〜」

「発現しきってないってこたー名前とかも無いのかよォー、スタンドに」

「ああ、ない。
 母や祖母…特に母は「火事場の馬鹿力」的な物としか理解してないし、
 本人もそう言う時くらいにしか使ってないから…普段から使うように修行でもしていれば…
 結構なスタンド使いになったかも知れないけどな、それはそれで危険だから俺は止めているが」

そこへウインストンが

「これだけは言わせてくれ、このスタンド使いの二人のねーちゃんがまた
 結構な雷型なんだよ、怒らせると怖いっつーか」

「何あなたジタンのご実家で粗相でもしたわけ?」

「俺じゃあねーよ、近所の悪ガキどもとかそう言うところさ」

なるほどね、そういう事にしておいてあげるわ、って感じにルナが頷いてみせる

「あ、お前信じてないだろ、俺が怒られたと思ってるだろ」

「何も言って無いじゃあないのよ」

冗談めかして、とはいえちょっとした押し問答になりつつあった時にジタンが

「誤解されて一度怒られたんだよ、誤解が解けた途端姉たちも平謝りだったがな」

「その犯人が、近所のクソガキだったんだ、俺はだから実質怒られてねぇよ」

「はいはい、悪かったわ、さて…(携帯電話で時間を確認しながら)
 この配膳のペースだと…睡眠時間稼げるかしらねぇ」

「うむ…コース料理なんて言うのもたまにはと思ったが…このペースだと
 食事に二時間は掛かるかな」

ポールもちょっともどかしいかなと思ったようだった。
でもルナが窓の外から見える夜景と、海の向こうを航行するフェリーや
シーバスの航跡(光跡かな、夜だし)を眺めると、割と全員同じ視線になって

「…とはいえ…確かにたまにはこんなロケーションでコース料理って言うのも
 経験としてはいいものだわね、なかなかいい思い出になりそうよ」

仕事で忙しいと言う事に余り苦を感じないルナの満足げな表情。

「ま、後は仕事片付けて、ホントに2,3日はゆっくりしようよ」

とアイリーが言うと。

「…それで…」

ジタンが呟いた。

「それで、もしペンダントが見つかったとしたらどうするんだ?」

そういえば…「見つける」ところまででわたし達の目標はストップしていたかも知れない。
わたし達がお互いを見つめ合ってしまったのをジタンは苦笑混じりにして

「おいおい…、いや、あれはもし見つかったなら…祖母に渡してやって欲しい
 これは俺からの依頼だ、ちゃんと正式な謝礼もするよ」

「え…貴方に渡すのでは…だめ…?」

わたしが思わす聞いてしまった。

「別にジョーン、君が「わたしがジョアンヌだ」なんて言わなくていい
 会ってやってくれって何度か頼んだじゃあないか。
 祖母は存命なんだ、しかしもう82だからな…俺が彼女の一族の者として
 依頼するよ、君らで届けてやってくれ」

どうしよう…

「まぁホラ、ジョーン
 折角の私塾での思い出も何も戦争で粉砕された辛い思い出はそれはそれでさ
 会ってあげてもいいんじゃあないの?
 あ、というかあの時あたしもずーっと居たのだわ…あたしの顔とか
 お婆様は覚えていらっしゃらない?」

ルナがジタンに聞く。
確かにあの…ルナの一生の決意の晩…ジタンのお婆様…私の生徒の一人でもあった
ジタンヌ…時々朧気に目を覚ましていたようではあった、ただ、朦朧としていたようなので
そのたびにわたしがもう一度睡眠状態に置いたりはしたけれど

「ほぼシルエットで覚えてないってさ…、まぁそう言っちゃ俺もあの場に居たからな
 なんだか変な感じだが…とにかく彼女はジョーン、君だけは「似た人」と認識していて
 後は「一緒に行動していた人」と一緒くたにしているみたいなんだ、
 言い訳は…任せるよ、でも血縁だで済む話だと思うけどな」

そう言われると…

「…まぁ…その…もし、見つかったら…と言う事で」

「何言ってるの、必ず見つけるわよ、例えその断片でもね」

ルナが料理を口に運びながら釘を刺してきた。
ええ、判ってる、仕事だものね、信用第一だわ…


第二幕 閉

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