Sorenante JoJo? PartOne "Ordinary World"

Episode:Five

第二幕 開き

「…だから、オーディナリーワールドだってちゃんとスタンドですって。」

およ?
あたし…アイリーがお風呂から上がって、
パジャマに着替えてから事務所に戻るとルナが
ウインストンに言ってるトコからだった。

ちなみに、さっきのジョーンが出かけて、ケントが出かける前の
20分の間にルナとウインストンもお風呂は済ませた。
二人ともウインストン曰く「カラスの行水」だそうで
とっても上がるのが早い。
ルナもパジャマにガウンを羽織ってる。
ウインストンは基本的にあの服のままだw
帽子もかぶったままなんだよw

「なになに? オーディナリーワールドがどうしたの?」

あたしが二人の中に入ると、ウインストンが言った。

「いや…俺なら「風」ルナなら「怪我」
 ポールなら「交渉」アイリーなら「捜索」ケントは「守備」
 …ついでにジタンなら「物の劣化」って言う具合に
 「操るモノ」ってもんがあるじゃねぇか?
 ジョーンは「エントロピー」とかもやもやしたものを
 操ってるのか? って俺が聞いたらよ…」

ウインストンがルナを指差す。

「…ジョーンがそう言ったのは便宜上。
 だって「エントロピー」なんて「実在の物質」を指す言葉じゃあないもの。」

「「じゃあ、オーディナリーワールドってなんなんだ?
  スタンドを越えた「何か」なのか?」って俺が聞いたら、
 アイリー、お前が入ってきた時のルナの台詞さ。」

ふむふむ、ウインストンの言葉にあたしも

「興味あるっていうか…あたしも判りたいんだけどなぁー
 …でもルナの解説もジョーンのもやっぱり難しくてわかんない…w」

あたしの言葉に、冷蔵庫に僅かに残ってたミルクを一口飲んでルナが言う。
あ、このミルクは皆に分けてあるよ。
元々は調理用でジョーンがとって置いたものなのね。
…っとこれは脱線か、本文本文。

「…そうは言ってもね…
 ジョーンが600年かけても理解しきれないものを
 判りやすく説明しろといわれても…」

「…600年…!?」

ポールが思わず突っ込むと、あたしとウインストンも「そういえば」
って感じでビックリした。
ルナは「まずった」って顔をしたけど、すぐに落ち着きを取り戻して

「…直接的な証拠があるわけじゃあないわ…
 でもジタンは多分かなり正確な情報をあつめたんだと思う、
 ジョーンの生年月日はジャンヌ=ダルクと一緒の1412年1月6日よ。
 ジョーン本人から聞いた生年月日だけどね。
 あたしは嘘じゃあないと判断したわ。」

あたしを含めポールもウインストンもちょっとどうしたもんだろうって
感じの空気になっちゃった。
…だってねぇ…
そんなあたし達の様子を予想してルナは流石に今まで黙ってたんだろう。

「…オーディナリーワールドの能力は恐らく
 空間にプラスやマイナスのエネルギーを与える能力。
 空間って言っても…空間を格子状に細かく区切って区切って
 「これ以上細かく出来ない」ってトコまで細かい空間を
 無数に操るって感じでしょうけど。」

ルナがジョーンの素性についてあまり詳しく言わないし
オーディナリーワールドの話に戻ったからあたしらも
ビックリしつつ、ウインストンが

「…いや…その…なんだ…どうしてその…細かい空間を
 操ってるんだって判るんだよ?」

「局所的にエネルギーを与えることで原子の構成を変えたり
 してるだろうから、よ。」

「…やっぱあたしにはわかんない…w」

「…そうね…全てをこそぎ落として最もシンプルに言うなら
 「この宇宙で起こりうる現象を再現する」スタンドってとこね…」

「ものが必ず欠ける、という現象はなんなのかね?」

「「破壊した」って事実は消せないからよ。」

「物の方が直すの簡単っていうのはぁ?」

あたしの質問にルナは金属のコップを棚から持ち出してきた。

「…便宜上…100%アルミナムのコップということにするわね」

ルナが講釈を始めようという時にあたしがつい

「アルミナム? アルミの何かなのぉ?」

「え? アルミナムはアルミナムよ…アルミ。」

「アルミはアルミニウムでしょ〜?」

「アルミナムだってば…」

そこでポールがあたしらの間に手を差し伸べあたしらの会話を止めて

「アメリカではアルミはアルミナム、そういうことだよ。」

「…あ、そーなんだぁ」

「へぇ…あたし今までずっとアルミナムで通してたわ…」

「相手がお前じゃあ…誰も突っ込めないだろうぜ…
 間違っちゃ居ないわけだしな…」

ルナって学生の頃は…性格は今とちょっと違ったろうけど
クラスに必ず一人居る鋭い切れ味系の女子って位置だったろうからね…w
ルナもそれを自覚してか眉間にしわを寄せつつ

「…まぁいいわ、じゃあ…このアルミニウムのコップには
 全部で10億(1Billion)の原子で出来てると思って。
 「何で10億?」とかは聞かないでね、例えに必要なのよ。」

あたしはちょっぴり眠い脳に軽く活を入れて

「うーん…うん、何とか覚えたよッ」

ルナはちょっと優しく「ふっ」と微笑んで

「…まぁこれのどこかから番号を振って1から10億までナンバーがある。
 …で…ジョーンならこれをどろどろに溶かすなりして
 原形をとどめないようにすることも出来るでしょうね
 「原子そのものを操って」と言って。」

「ああ、言いそうだな、あいつなら。」

「実際はコップが融けるようにコップを構成する原子のある空間に
 局所的に莫大なエネルギーを与えて融かすのだけどね。
 ウインストンの「風で岩を動かした」が近いわ。」

「…ああ、そういわれるとちょっと判りいいな。」

「しかしそうなると…ずいぶん小さな力なのだね…」

「そうね、それを目に見える形で表すんだから
 相当なパワーのスタンドだわ。
 …脱線したわね、融けて壊れたコップを元に戻す。
 正確には「融かしたけど、ここまでじゃあない」
 という風に状態を変えるわけだけど…」

ルナはまた一口ミルクを飲んだ。

「状態を変えるわけだけど、原子に振った番号に意味はないわ。
 当然よね、100%アルミのコップなんだから、
 デザインさえ戻ってればいいわけよ。
 難易度としては積み木程度…?」

「なるほど」

あたしが言うと

「でも実際はある程度「空気に触れていた箇所」とか
 「液体に浸ったことのある箇所」とか条件があると思うわ。」

「そうなると…粘土細工くらいの感覚かね?」

「多分ね、そして…(ルナはコップをもとの位置に戻した)
 もし破壊されたのが手だったら?
 人間の体は酸素、窒素、炭素、水素、リン、硫黄、カルシウム、カリウム
 …微量な物まで含めて必須じゃない元素を含めたら数十種類の
 元素で出来てるわ。」

あたし達が何か言おうとすると、ルナはそれをさえぎって

「手のひらから指が生えてるのはおかしい、爪が手の甲にあってもおかしい
 血管が皮膚の外に出ててもおかしい、神経が繋がってないのもおかしい
 …もっといえば細胞の外に核があってもおかしい、DNAが外もおかしい
 ヘモグロビンには鉄が含まれてないといけない。
 骨の成分は燐酸三カルシウムであってカルシウム単独ではない。
 細胞の中と外でカリウムとナトリウムの濃度比率が違っててもいけない。」

「うっひゃ…あのその…よーするに」

「1から10億のナンバーが強烈に意味を持つのよ、生体は。
 多少は順番がおかしくてもいいでしょうけど、
 アルミのように「形だけ戻ってればいい」って程に単純じゃあない。
 殆ど全ての元素が何らかの化合物の形で存在するわけだしね。」

「難易度は…」

と、ポールがいうと

「まぁ…ある程度慣れても…百万ピースのジグソーパズルってとこね…
 ホントは10億ピースなのよ、ある程度ジョーンは「これにはこれ」
 っていう「やり方」を心得てるから、実質ピース数を減らせるってだけ。」

「うっは…w 2000ピースでさえあたし投げたのに…w」

「そうよ、それを埋めるのがジョーンの「知識」なのよ。
 「知ること」がそのまま彼女の生き延びる術になる。
 ジョーンはかつて体を何度も入れ替えたっていうけど、
 今のジョーンなら入れ替えまでしなくても状態を変えられるはず。」

「な…なぁ…どーにもわからん、結局オーディナリーワールドは
 「状態を変える」のが能力なのか?」

「…空間に色んなエネルギーを与えることで物質を多様に操る…
 壊れたものを元に戻すように同じ材料でやる場合もあれば
 別なところから材料を持ってきて「似た状態」にすることも出来る。
 宝石や貴金属に出来た傷を「直す」なんて後者の典型ね。
 …ああ、体を入れ替えるのが後者の典型ね、
 あくまで自分の体から状態を変えるのが前者。」

ルナの講釈にポールが。

「まぁ…物のように分子一個必ず欠けるのと違って
 生体なら細胞一個減っても代謝で自然に戻るしね。」

「だから多分ジョーンは時間のかかる生体の修復は99.99%とかじゃなく
 最大でも95%くらいで切り上げるわね。
 こだわっててピンチになったら目も当てられないもの。」

「ね…ねぇねぇ、じゃあ、ジョーンに出来ないことはぁ?」

「…そうだなぁ…重力を操るとか…ああ、こないだの「平面化」とか
 …飛ばした矢を勢いそのままで運動の向きを逆にするとかも無理だわね。
 魂を入れ替えるっていうのは…ジョーン本体に限って有効みたいだしなぁ…
 …あたしらならね、「何か一つ」って言う制限で理屈なんて抜きだけど
 ジョーンの場合理屈ぬきなのは「微小な空間にエネルギーを与える」
 ってことで、その先の「それで何が起こる」は宇宙の法則に沿ってないと
 ならないからなぁ…ああ、もう、何であたしが悩まなくちゃならないのよっ」

ルナが色々例えを出そうと考えている

「…それじゃー、あれだねぇ、スティングレー君の「透過」なんかも
 ダメっぽそうだね〜」

「ああ、それは可能。」

「えっ?」

声を上げたのはあたしだけだったけど、ウインストンも驚いてたのを
あたしは見逃さなかったよー

「物理的に説明の付けられる現象なら表現は可能だわ、
 透過はとっっっっても確率低いけど、不可能じゃあない。」

「…ジョーン君の場合…「トンネル効果」を利用するのだろうけどね…」

「難しいでしょうね、「やってやれないことはない」レベルね。
 それなら一度壁なりを壊して壁の向こうで用事を済ませ
 後で壁の状態を変える方が結果として似たような事になるし、
 まぁ可能だけどほぼやらない技でしょうね。
 …だからその辺はまた今度ね、
 …散々喋ったから喉が渇いたわ…
 遅いわね、ジョーン。」

「ケントに付き合ってもう一度店に向かったんじゃねぇか?」

「事務所であたしらが待ってるのに…それはないと思うけれどね…
 彼女も結構優柔不断なところあるから買うもので悩んでるのかしらね」

「まー…といってパジャマに着替えたあたし達に外まで迎えに行くなんて
 ちょっと無理だしねぇw」

「そうなんだけど…なんかちょっと胸騒ぎがするわ…」

ルナが心配そうな表情になる。
ウインストンが「考えすぎだぜ」って喉まででかかったのを飲み込んで
ちょっと警戒した面持ちになったのをあたしは見逃さなかった。
…そうだね、もう前みたいにのん気してられない状況でもあったんだよね…

そう、あたし達は知らない、ジョーンたちが今大変な戦いをしていることを。

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さぁーて、ナレーション変わるぜー。
俺、やっていいわけ?
やったラッキー!
改めて自己紹介させてもらうッ!
俺はスウィング=スティングレイ。
「透過能力」の「着る」スタンド
名は「ホワットエヴァー・ゲッチュー・スルー・ザ・ナイト(真夜中を突っ走れ)」

俺の能力は矢で得た能力だ。
何年前だったかねぇー?
まぁ、矢で居られて発現した途端逃げ切って
矢を射た奴も追って来なかったんで、ラッキーってやつさー。

そーいうのもあってな、余計なトラブルは避けてきたんだ。
登録もしてねぇ。
そっから足がつくと嫌だからな。

おおっぴらに能力は使えねぇが、別にいいのさ。
前も探偵社の奴らに言ったけどよー
こんな能力持ってたって悪用しか浮かばねーからな。

まーそれで、ちょっと気になってたバンドのライブを見た後に
ショートカットで帰る道すがら穏やかじゃねー音や声に
立ち止まったら、案の定何かのトラブルだ

「参ったね、俺もよっぽどトラブルに遭遇する性質らしーや」

そう思ったら、見たことがある奴じゃねーの?

そうだ、ジョーンったっけ?
得体の知れない女だ。
ちょいとマブい女だがな。

お? ケントだっけ、奴が加勢に入ったぜ?
だが奴の能力と…うっへぇ…ジョーンは足首も吹っ飛んでるし
重傷っぽいな…あれじゃあ「現状維持」が精一杯…
いや…じわじわ押されるだろうぜ…

むーん…ここで俺様参上…ちょっとおいしーかね?
ケントの奴の「壁」も相変わらず単純な「実体化」のよーだ。

へっへ、いいね、行くぜッ!!

「あぁー!? テメー!」

ケントの奴、驚いてるぜ?
そしてジョーン、こいつ、俺が来て加勢したって判ると
目つきが変わったぜー?
「状況を変えられる! 勝てる!」
そういう目だ。

いいね、俺が加わって初めて勝利に向かえるなんざ気分いいや。
呼吸も荒いジョーンだが、俺に言った。

「…スティングレイ君…貴方を見込んで…助けて欲しい事があるわ…
 目の前にいる相手じゃあない…
 …もう一人いるのよ…ライフルでこちらを狙ってるわ…
 実弾のライフルが当たってから…そこを基点に
 追加で五発の攻撃が…スタンド攻撃が出来る相手らしいの…」

「おぉっと、そっから先は言わなくていーぜ、
 俺にはほぼ無意味な攻撃だな。」

「でも気をつけて…貴方の進行方向の手前にわざと打ち込んで
 そこからの攻撃も考えられる…」

「…そこを読みきれないほど俺も素人じゃねーよ。
 心配すんな。
 …で、どこに向かえばいい?」

「…さっきのケント君への攻撃から…
 相手の位置は地上20メートルほど…8階建ての…
 この突き当り…100メートルほど先のビルの屋上…ってところかしらね…
 …しっかり本体を確認したわけじゃあないからあとは確認が必要…」

「さっすがだねー。 聞いた銃声は一発分だったぜ?
 たった一発でそこまで分析されたんじゃあ、勝ちは見えたねぇー。」

「油断すんじゃあねぇーぜぇー、おいよぉー。」

「…確かに過信はいけない…でもこの勢いを利用しない手はないわ…。」

「…んじゃあ、俺は行くぜー。
 この場はお前らに任せていいんだな?」

俺がちょいとマジ顔で奴らに聞く。
ケントの奴は判断に困ってジョーンを見るが、

「…貴方に感謝するわ、ケント君もすぐ援護に向かわせる。」

「…えっ…ジョーン、オメーどーするんだよぉー?」

「…わたしの油断が招いた事態とはいえ…
 目の前の敵だけはきっちりわたしが落とし前をつける…」

未だ傷は見える…が、ジョーンの奴、腹をやられたようだが
動ける程度には回復したらしいな…
…だが下腹はまだ損傷が激しい。
動き回ったら確実に腸がコンニチワ、だよおい。

「いいのかよー? 足首なんて骨見えてるぜ?」

おれの突っ込みに

「大丈夫よ。」

短く、彼女は闘志を高めているようだった。
こいつ、結構頑固な性格のようだぜ?

俺は二人をチラッと見て三面鏡のよーな壁から外に出た。
案の定、出てすぐに弾丸が来たよーだが、俺はそれを透過する。
野郎、いい腕だなー…きっちり俺の脳天抜けてったぜー。

この腕じゃあ…奴が驚くのは一瞬、次には
スタンド攻撃可能なように俺の進行方向に
撃ってくるだろうぜ?

…だが、そんなことは俺だって自分を良く知っている。

俺は通りの向こうのビル群にそのまま突っ込み、
ビルを透過しながら「そいつ」の方に向かった。

…ざまぁ見やがれ、これじゃあしばらくチャンスは無いだろうぜ?

俺は直接見えてないが、ジョーンたちのほーも俺が実況すっかな

「…ケント君…」

「な…なんだよぉ…お、おいッ何立ってんだよぉーッ!?」

ジョーンの奴、骨ぐらいでしかくっついてねぇ足で立ち上がったらしい。

「…時間がない、二度は言わないわ…、真ん中の壁だけ消して。
 残った二つもコントロールはせずに射程外に出て消えるに任せて。
 そしてすぐスティングレイ君を追いなさい…」

「真ん中だけかよぉー?」

「…それでいいわ…。
 貴方もライフルから身を守らなくてはいけないしね。」

俺がぶん殴った水分で攻撃する奴が起きたようだぜ?
だいぶ頭に血が上ってンなー。

「…で、でもよぉー」

「行きなさい…!」

マジになったジョーンって奴は…はっきり言って「迫力」なんてもんじゃねー…
ものすげー怒りの炎ってーか、そんな目だったらしい。
ケントの奴、大人しく従うしかなかった。

「おいよぉ…無事で居ろよぉー?」

そして真ん中だけを消し、奴も走り出す

目の前に居るスタンド使いの野郎も突然のことに
ケントを攻撃すべきかちょっと迷ったらしい。

「オーディナリーワールド!」

ジョーンは叫び、そしてスタンドと二手に分かれて残りの壁を
体全体で押して「奴」に向かって倒しやがった…!
ケントのコントロール範囲外になった壁なんでそういう真似が出来る…

「うぉッ! うぉぁああーッッッッ!!」

そいつのスタンドが思わず支える。
力の強いスタンドらしいが、そのデザインからあまり
自在なポーズの取れるスタンドじゃあないらしい、
かなり窮屈そうに自分の方に倒れてきた壁を支えた。

ジョーンが奴ににじり寄る。
足を怪我してるわけだし、ずりっずりっと歩く様は逆に恐怖だろうぜ…

「名を…聞いておくわ…」

奴はすぐにでも反撃を受ける覚悟をしたらしいが、ジョーンはそう言った。

「…俺の名を聞いてよぉ…どうする気だよ?」

「名乗る気が無いならいいのよ…」

奴との距離は…二メートル弱…!
ケントが10メートル以上離れたんで、壁は射程外で
融けるように消えてゆく。
「奴」がにやりとした!

「何も言わずに止めを刺せばいいいいものをいい気になったのが
 災いだったなぁーーーーーッ!!」

奴のスタンドが支える「力」から解放され始め、能力を使い始める、
ジョーンはまだ大きく動けるほどじゃあねえッ!

「…いい気になったのは…どっちかしらね…」

奴の能力が開始された時に、ジョーンは下腹部に左手をかざし、
そしてそれを地面から一メートルの範囲でそちらに目が行くように
動かして体は微妙にずらした。

左手の手首から先が吹き飛んだんだが、ジョーンは僅かに
衝撃を表すような表情をしただけだった。
奴は大いにびびった

「脳内物質のコントロール…さらに波紋…そしてなにより…
 …わたしの闘志ッッッ!!
 わたしは…生き延びる術を学び取るッ!!」

奴の支えるケントの壁が消えてスタンドがジョーンに殴りかかるが
ジョーン本体とオーディナリーワールドとかいうスタンドが
それぞれの右手でラッシュを繰り出したッ!

傷口が開こうと、血を吹き出させ、下腹部から腸が出そうな
やばいことになっても、繋いだばかりの右足が再び折れようと
ジョーンは残った右手と、オーディナリーワールドの右手で
両手分のラッシュを遠慮なく叩き込んだ

殴る能力評価はスタンドも本体もBって所か…?
だが早いぞ…Aのトップってトコだ…
「奴」は反撃もままならずボコボコになって行く。
(人間本体の殴る評価がBってのもなんだが、波紋の修行の成果ということらしい)

ケントは射撃野郎の弾を壁でカバーしながらも、その様子に
釘付けになってた。
どうあっても目的は遂げる、そういう意志の強さを
学び取ったようだぜ?
(あの女の場合は極限までの無茶が可能ってだけ
 だろーからからあんま参考にすんなよ?)

ラッシュを一瞬止めた、だが「奴」ももうサンドバッグ状態だ…
そしてオーディナリーワールドが渾身の力を込め最後に
大きな一発を喰らわせた。

「…Blown Away…(吹き飛ばされなさい)」

ドォォォーーーーーン!と奴がそのとおり吹き飛ばされる。

俺の向かってるビルのほうまで飛んできたじゃねーか…!
…おっかねー…

…射撃野郎は俺を追跡できない(チャンスは俺の進んでるビル群を抜け
 奴の居るビルのまん前の道路に出る瞬間だけだ)
次にやってきたケントも威力の落ちたライフルからスタンド攻撃までなら
自分の限界ギリギリの4枚の壁を操れば防ぐのは訳ねー。

判ったことは、リボルバーの弾をリロードするのと同じくらいの手間で
連続でのスタンド攻撃はできねーよーだってとこかな。
ケントも迫ってくる、壁を持てる大きさくらいにまでにして
盾にしながら、だ。

開き直って数発普通にライフルかましたようだが、
ケントの奴の精神もジョーンのアレを見て相当引き締まったらしい
ビクともしねー。

俺が通りに出た瞬間まで奴はケントに掛かりきりで
俺が通りの真ん中まで走るのを許しちまった、
慌ててスタンド攻撃を含めた六発の攻撃をしてくるが、
俺は奴の居るビルに飛び込んだ。
後は上に駆け上るだけさ。
足の接地面だけ透過せずに内壁と外壁のギリギリの面を
階段のよーに駆け上る。

恐怖だろうぜ?

戦力を二分させること、一方は防御専門で
一方には直接攻撃が効かねー。

ジョーンって奴は自分の意地であの場一人になったのかと思いきや
…多分リロードを含めこのことを計算に入れてたんだろう…
正直、敵じゃなくてホントーに良かったぜ…。

…だが、そこで吹き飛ばされてきた「水分野郎」の方が目を覚ました。
奴もそれなりタフらしい…フラフラんなりながらも
ギリギリ立ち上がり、ケントの前に立ちはだかった。

殆ど戦う気力はないだろう…奴の出したスタンドも崩れかかってる。
放って置いても死ぬレベルだが…最後にケント一人でもと思ったか…!

「グバ…バハハハハ…ゲブゥッ…あの女…倒れたぜぇ〜」

ケントはその言葉に反応して思わず振り返った。
…こいつも素人だな…仕方ねーとは思うが。
水分野郎のスタンドの一発をまともに腹に喰らっちまった!

「ぐっはァッ…!!」

奴のスタンドが完全状態だったなら、ここでケントは死んでたろう。
だが、ジョーンが充分弱らせた状態だったから、打ち身程度で話は済んだ。
…ひ弱な奴には効いたようで、奴はへたり込んだんだが…
水分野郎はボロボロの体でゆっくり歩きながら、ケントに更に近づく。

ケントの奴はそれに恐怖したか?
…いいや。

倒れたケントにここぞとライフルの弾も襲い掛かるが、
ケントはもう狙撃野郎の位置はわかってる。
何気もなく壁でそれをかわした後は三枚の壁を自在に操って
残り五発をもかわす。

「…まぁーったくよぉーッ…落ち着いて状況よく見てみれば
 なんてこたねぇーよなぁー
 ジョーンは確かに倒れてるがよぉー。
 知ってんだ…ヤバイだろーが死にはしねーってよぉー。
 …信じることにしたんだよ、オレ。
 そして信頼を寄せて俺にこっちを任せたんだからよぉ
 オレも応えねぇーとなぁー!」

座るケントの前にまた改めて上斜め向きの壁が現れた。

「ゲブッ…また壁かよ…さっき拾っといた「水」もあるんだ…
 今度はさっきみてーに…ちまちまとはいかねーぜッ!!」

ちょいと雲行きが怪しくなってきたか…?

…俺はそして屋上にまで上り詰めた。
目の前に軍人崩れなんだろう、軍用ライフルを構えた奴が居て、
弾装と弾丸を思いっきりデザイン化したよーなスタンドも見える。
俺様参上の瞬間、そのカートリッジのよーなデザインが1/6回転し、
最後の一発の弾丸型のスタンド部分が薬莢のみから
弾丸に戻るところだった。

なるほどね…こういうスタンドって訳だ。

「ヘイヘイ、戦争ごっこはおしめーにしよーぜ。」

そいつ、もうちょっとあせるか、逆に怒るかするかと思いきや
タバコに火をつけ一服しだしやがった。
…オレがムカツクんですけど。
奴は屋上の壁から上半身だけ体を出した俺にライフルを向け、言った。

「…詰めが甘いぞ、戦場ではお前か仲間か、どっちかが死ぬんだろうな。」

「何ィ…? 俺の能力を知ってるんだろーが」

「後ろ…見ろよ、ライフルの銃口からお前を突きぬけまっすぐ直線状だ。」

ま…まさか…俺は振り返った。
その視線の先…「水分野郎」へ渾身のラッシュを叩き込んだ後
路上に倒れこんだ…ジョーンが居やがる…!

「判ってると思うが、動くなよ…お前は俺に攻撃できるだろうが
 俺はあの女を貰って行くぞ。」

…やべぇ…俺様としたことが…やっちまったぁぁーーーーッッ!!


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