Sorenante JoJo? Part1

episode2

第三幕開き

さて、私だ。
ポールがここから事の顛末をお話しするとしようか。

エジンバラのウェバリー駅に着いた。
ここは緑が多く、とりあえず起きたアイリーに
少しだけ木陰で「ベイビー・イッツユー」を使ってもらい
場所の特定に勤しんだ。

…ん、ああ、寝ていたジョーンとアイリーを起こすのに
今回はルナの言ってたような「事件」は起こらなかったよ、
さすがにジョーンも仕事中の出先で寝ぼけるほどに
本気では寝てなかったようだ。

働くものとして自覚がかなり強いように思えるね。
むしろ目覚めはアイリーのほうが悪かったよw

「探査に時間がかかるかしら?」

ジョーンがアイリーに聞いた。

「…うん方角がエジンバラだってだけで郊外かもしれないし
 隣町かもしれないから…。」

「ホリールード修道院跡の方角にあるならちょっと寄って行ってもいいかしら?」

「うん? 観光でもするのかよ?」

ウインストンが訳を聞く。

「お金を保管してるのよ、柱の「中」にね」

これはまた…

「ああ、床とか小さな範囲を素早く穴が開けられるのはあなた
 そういう風に岩や古い建造物の柱にお金を隠してあったからなのね。」

彼女の行動の一つ一つには意味と何度もやっている…つまり訓練が
伴っている、ということだろう、ルナも納得したようだが私も納得したよ。

「歴史的建造物は守られる傾向にあるから、風化以外では持ちがいいのよね」

これもなるほどだ。
しかし、わたしは思ったので聞いてみた。

「…しかし修復やら、やはり壊されたりとかはあったろう?」

「ええ…w そういう時はあきらめたわね…w」

やはり、一度二度はそういう風に少し財産を失ったようだ。

「あー、ごめーん。
 ジョーン、あっちの方角なんだけど、あたしエジンバラ来たことないのよー」

アイリーが方角だけを指差す。

「あたしもないのよね…正直どう動くと効率いいかも判らない」

「オレもねぇーなぁ」

ルナはアメリカ系イギリス人でロンドン以外は知らない。
アイリーもケントもロンドンっ子でちょっとした郊外以外は
ロンドンを出たことがないと以前聞いた。

「俺は…ガキん頃来た以来だな、正直覚えてねぇ」

おやおや、君もかね、ウインストン。

「バスや公共機関を使うのはスタンドを使いながらって言う立場上厳しいだろう、
 私がレンタカーを用意するよ、仕方ない、これは経費として落とすとして
 とりあえずこの場は私費で出そう。
 レンタカーなら多少の寄り道も素早いだろうしね。」

私がとりあえずレンタカーを配備する手続きを携帯電話越しに始めると
ジョーンが応えた。

「そうね、とりあえずアイリー、目標(ターゲット)は?」

「微妙に動いてるのよねぇ…余り広くない範囲をぐるぐると…どういうことかしら?」

「…渡り鳥か何かに絡まった可能性があるわね…池か湖にいるのかしら…」

む、ジョーン君…またなにやら厳しい想像を…

「そうかもしれない、風船が割れてるのか検索がメチャクチャムズいのよぉ
 ケースの方で何とか位置探してるんだけどぉ」

「つまりそれってあれだな…」

ウインストンが口を開くとルナが

「飛び立たれたら目も当てられないわね、ジョーン、
 寄り道はターゲットを補足した後、いいわね?」

「ええ。」

急いでレンタカーを用意し、早速出発だ。
6人乗りでスペースに余裕のある車となると…相当金も掛かったんだが…
しかし、ワゴン車に乗ってしまえばこっちのものだ、
アイリーにもう一度スタンドを使ってもらう。

「…あっ」

皆その言葉に肝を冷やしたに違いない。
私も冷えたなんてモンじゃない。

「飛んだわ…ッ 北の方角よッ!」

「…どこかしら…ネス湖…?
 ピットロッホリーあたりで止まってくれるとありがたいのだけれど…」

ジョーンは土地勘があるらしい、免許はないらしいが…

「とりあえずジョーン、どっちだね? どの道を進むといいかね?」

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ピットロッホリー、エジンバラのすぐ北にある小さな避暑地…
とはいえ、今はまだ春で日も相当落ちてる。

寒いんだがね…正直。

幸いというべきか、反応はここで止まった。

われわれはついに追いついたのだ。

アイリーの探査で場所もわかった。
池にいるらしい。

…池って言ってもそこまで行くと結構大きいんだがね…
白鳥と思し気はそのやや向こう側…こちらからの距離にして20メートルほど…?
差し渡し30メートルほどか…向こう岸まで回ろうか…?

「んじゃあ、いっちょやっかぁー。」

ケントが張り切ってる?

「浮いてりゃいいよな、発泡スチロールのよーな感じでよぉー」

君もなんだか最近どんどん発想が膨らんでるね、
皆があっけにとられた、成長が早いというか、思いついたことを
何でもやってみようという自由な発想というか。

「やってみて、ケント君、その方がやりやすくなるわ。」

ジョーンの一言にケントはやる気を出した。
なんだね、「やれば出来る子なのだ」と美人教師に言われて
やる気出した子供のようだね…ああ、いや、揶揄ではないよ。
ほほえましいんだが、何処か可笑しいのだよ。

フォー・エンクローズド・ウォールズ

水に浮いた幅1メートル、長さ1.5メートルほどの壁。
1メートルの隙間を置き、4枚、彼の射程10メートル先まで橋渡しだ。

「だいじょーぶだよ。思い切り踏んでもよォ、
 「軽石みたいな素材」って考えたんだ、
 発泡スチロールよか強ぇーだろ?」

「あなた、素晴らしいわねw」

ジョーンに微笑まれて上機嫌だ。
流石に頭撫で撫でまではしなかったが、彼女の心情はそんな感じだったろう。

「ジョーン、お前が行くのか?」

ウインストンが聞く、

「出来ればあなたも来て、ウインストン。
 10メートル先で上から下へ吹き付ける風って言うのが欲しいわ。」

「だよな、よし、いくぜ」

ウインストンが「浮く壁」に乗った。
結構揺れてるんだがね…大丈夫かね?

「良かった、あたし行くって言わなくて。」

ルナがつぶやいた。
運動音痴なんだよね、君は。
君はそのぶん勉学に勤しんだんだから恥じることはないよ、うん。

ウインストンが結構恐る恐る壁を渡ってる

「おい、ケント…! 動きは制御できねーのか?」

「そこまでは無理だなァー。
 1メートル間隔できっちり10メートル先っていうので精一杯だぜ?」

様子を見ていたジョーンが

「…なるほど、判った。」

そうつぶやいて岸辺から一気に走って先端まで駆け抜けていった。
壁も殆ど揺らさずに。
判った、というのはウインストンの挙動やら重さから推定した
力の掛かり具合による物理的な動きというかそういうことを理解したらしい。
一気に追い抜かれたウインストン、ちょっと恥ずかしそうだぞw

「な…なんだオメー、ニンジャかよッ?」

例えは可笑しいんだが、しかし彼女の素早く、そして軽い身のこなしに
われわれはなんとなく頷いてしまった。

「わたし、日本には行った事はないわ、でも密使はやってたわね」

白鳥の動きを目で追いながら、壁の先端でジョーンはウインストンが来るのを待った。

「ミッシ? なんだぁ?」

ケントの言葉にルナが

「古い言い回しだわね、今風に言うと「スパイ」よ。」

彼女の動きのよさをなんとなく理解した。
そういえば彼女は腹筋も結構きっちり割れてるし、
腕を触っても結構硬いのだ。
筋肉が結構あるらしい。
鍛えられているのだ、格闘とかではなく、なるほど、密使としてか。

ウインストンが苦戦しながらも先端まで行くと、
彼女は何か大きく呼吸をしていた。
だがなんだかちょっと特殊な音というか。
…彼女の立っている壁の下あたりの波紋が…妙な…

「…かなり久しぶりにやるからこれも準備が必要ね…
 でも水を操って粘度を高くする小細工をするとか
 水を凍らせるとか、一気には出来ないから…」

「何する気だよ?」

「これも呼吸法の技の一つよ…ウインストン、風を。」

「あ、ああ…風街ろまんッ! いくぜッ!」
「上カラ下ヘ吹ク風? 朝飯前ディッ!」

気流を操り、白鳥どもの動きを抑制する、

「アイリー、「どの白鳥」か教えてね」

ジョーンはそういうと水の上に足を…おい、何する気かね??

つま先で彼女は水の上に立った。
彼女のつま先から不自然な波紋が水面に広がる。

「…判ったぜ、お前のその呼吸法って…友達じゃあねーが
 知り合いに居たんだ、「波紋使い」ってーのがよぉ
 水の上を歩くまでは出来なかったが、水に触れるとヘンな波紋が広がったんだ。」

「…あら、下火にはなってもまだ受け継いでる人はいるのね…w」

「…いや、そいつスタンド使いにはどうにもならなくて再起不能なんだがな」

「…そう、ええ、これも理屈で動かす技、だから理屈抜きのスタンドには弱いかもね」

つま先でジョーンは水面を歩く。
ケントが「ここホントは浅ぇーんじゃねぇーの?」とか言って
足を池に浸けようとしてる、やめたまえ、冷たい思いをするだけと思うよ?

彼の片足が…そうだな、岸で大体40cmほどの深さだろうか?
一気に浸かって「つめてぇぇええー」とか叫んでるんだよ…いやはやw

ルナもアイリーもあっけに取られている、無理もない
私も驚きたいんだが、これまでの出費を考えると
何でもいいから早く捕まえて欲しい気持ちのほうが一杯でね…w

「アイリー、ジョーンの能力に驚いている場合ではないよ、
 彼女の要請に応え給え。」

「えっ…あ、そうだった、ゴメン、ジョーン。
 手前からひぃふぅみぃ…5羽目、右からだと三羽目の白鳥よッ」

ジョーンはちょっとこちらを振り向いて微笑みかけた。

ウインストンの風の効果もあって進むのもちょっときつそうだ。
沈んではいないんだが、そこは嵐の中を進むようなものだからね。

しかし、彼女は白鳥に近づき、そしてそれを保護した。
暴れるので結構奮闘したんだが…
ちょっと怪我でもしたのか「…あッ!」とか小さくだが叫んだしね。

白鳥の足にでも紐が絡んでたのだろう、
彼女は白鳥を抱えたままこちらにやってきた。

「おい、もういいのかー?」

ウインストンが問いかけると

「いいえ、もう少しお願いするわ、この子を置いて飛び去るかもしれない。」

群れから離れる運命にはさせたくないらしい。
野生動物はこのあたりドライだからね、捕らえられた仲間は切り捨てる。
それが生き延びる術だ。

彼女が岸へ。

「紐を…解いてくださらないかしら…?」

彼女がそういい、我々に白鳥を差し出す。

ポロリ。

何か落ちたんだが…

白鳥の足と…ジョーンの…指一本…
まだ紐は白鳥の足やジョーンの手に絡まって血が出てる…
しかし思ったほどの出血量が無いのはこれも「波紋法」かね?

だが、その光景はアイリーの琴線に触れた、ヒステリーを起こしかけてる。

「大丈夫よ…痛いけれどね、平気。
 だからまず…紐を解いて頂戴、力任せに暴れたから
 絡まってしまったわ…この子も必死なのよ」

冷静なジョーンに発作は起こさなかったアイリーだが、すっかり怖気づいたようだ。

ルナと私でやや震える手で紐を解き、どうしようもない部分は切った。

ケントが落ちかけたケースを拾う。

「ゲットだぜぇー、でもよぉ、マジ大丈夫なのかよぉ?」

「オーディナリーワールド!」

ジョーンが言うと、オーディナリーワールドはジョーンの指と
白鳥の足を拾い、とりあえずあわせた。
ジョーン本体にほぼ重なる位置でしか出ない。
本当にべったりというか、「スタンドと出来てる」
みたいな想像はさせるね…。
これじゃ殴る射程範囲はせいぜい1.5m
この状態だと1mもないかもしれない。

「オーディナリーワールド、とりあえず骨だけでいいわ、
 時間をかけたら障害が残りかねない。」
「判リマシタ」

ジョーンがルナにウインクした。
なるほど、表面から浅い部分の怪我ならルナの十八番だ。

とりあえず繋がった指と白鳥の足ならそれこそ一瞬だろう。

「ア・フュー・スモールリペアー!」

ちょっと不気味なスタンドだが、果てしなく優しい能力なのだ。
跡形も無く傷は消え、ジョーンはその指をアイリーに判るように
動かして見せた。

「ね? 大丈夫でしょう?」

そういうと彼女は白鳥を抑えたまままた池に戻った。
白鳥を元の位置に戻し、そしてウインストンに

「いいわ、お疲れ様」

一気に風がやみ、白鳥は飛び去った。
一羽残らず、群れになって。

彼女はそれを池の上に立ったまま見送っている。
満足そうだ。
わたしはケースを取り返せて満足だが、彼女は
一羽の白鳥を群れから離さずに済んだことに満足らしい。

ちょっと象徴的だね。
彼女は今仲間を持ってしまったわけだから。


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ガサッ…ザッ…ザッ…

林の中を一人の男が歩いてくる。

「畜生…やっと見つけたぜ、金の種になりそうな…ケースの持ち主さんよォ」

低空を滑空し、池に降りようとする白鳥達が…
見る見る小さく硬く固まってゆく。

「ちぇ…つめてー池の中には入らなくっちゃぁダメだな…」

彼は池の底の彫像のようになった白鳥を一羽一羽調べた。

「…無ぇ…、どーいうことだ?
 エジンバラで見かけたときには確かにあったぞ…」

そこに向こう岸の更に向こうの道路を走り去るレンタカー。

「あぁ…? 奴らのヤマだったのかよ…ちッ…あんな奴らに
 もってかれるとはな… ……ん?
 …見慣れねー女が一人居る…新入りか…?
 あんな零細企業に良く入ったというべきか…だがそれで
 奴らの動きがよくなってる…?」

彼は池から上がるとつぶやいた。

「こりゃいーぜ、仕事ほっぽってもっと金になりソーな
 ヤマ追いかけたなんてプレジデントに報告できないからな…
 新入りが入って…その情報集めてた…いい言い訳だぜ。
 …細けーことはジタンの奴に頼むか…、
 奴ならウインストンも結構気楽にしゃべるだろーからな。」

彼は池を去ろうとした。

「…おっと、別にこのまま放置してもいいんだが…これを捨てられた
 調度品と思われて誰かに金にされるのもうっとーしーな…
 仕方ねェ…戻してやるよ、ほらよ。」

白鳥は元の大きさになり、びっくりしたようにまた飛び去っていった。

「仕事を取られた事の…まぁ俺が勝手に持ってこーとしたんだが…w
 そっちの方は気がおさまらねぇな…「野良スタンド使い」でも探して…
 凹ってやっかなァー…」


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え…わたしでいいのかしら…?
そう、ええ、わたし、ジョーンよ。

仕事がうまくいってよかったけれど、やっぱり白鳥が
すぐ郊外とはいえピットロッホリーまで飛んだのを
追った時間が痛手だったわね。

ホリールードまで来た頃にはもういい時間。

本来それでもまっすぐロンドンへ戻るべきなんでしょうけど、
アイリーもウインストンもすっかり疲れてしまったみたい。
特に、アイリーは今回大活躍だったしね、すっかりぐったりしちゃって。

…わたし?
ええ、正直疲れたわ…w
今日も良く眠れそうよ。

硬貨を換金した頃にはもう夕食の後すぐにも皆休みたいって
意見が一致したのね。
ルナは反対したけれど、期限が明日朝だから…

「…ええ、そういうわけでエジンバラの北まですっ飛んで
 …ええ、大丈夫よ、カードは取り戻したわ。
 それで…もうこんな時間じゃない?
 こちらのPCをそちらに明け渡すわ、ネットワーク組んで
 こちらをスレーブにしてデータ吸い出してくれないかしら?
 何かしらカードに損害があったのだとしても明日朝までに
 なんとか修正はできるでしょう?」

結局皆に説得されてホテルの一室でアイリーの携帯電話ごしに
ルナがカプリ氏に連絡を付けてるわ。

そう、今ホテル内なの、今すぐ帰る気なし…w

ルナはテレビ電話モードにして電話をしていて、それでPCのふたを閉じ
それを見せて示しながら

「操作するところは見ないわ、ええ、このまま無線で繋がってる間に。
 ええ、勿論カードのデータは吸い出したら消して頂戴、
 乱数の上書きを何度かループすればあたしたちは専門家じゃあないもの
 修復して盗み見ようなんて、不可能だし、思いもしないわ。」

分不相応を嫌う、向上心とはまた別に。
ええ、そう、だからわたしはあなたたちのそばが気に入ったのよ。

PC操作が終わったらしい、ポールが電話を代わって
後の事などをすこしく話し合う、報酬とか、現実的な部分ね。
そして通話が終わった。

「ふぅ、6000ポンドの報酬なんて、いつもなら大宴会になるだろうにね。」

ここは一応女部屋、アイリーは既に深い眠りの中なのね。
ケント君も男部屋でもう寝てるし、ウインストンもさっきまで
いたのだけど…もう寝たのかしら?
一杯引っ掛けたいといってたけれど、結構疲れてそうだったし。

「…妙なものよね、桁が一つ少なくたっていつもなら小躍りするのに…」

ルナも一気に緊張が解けたみたいよ、まだ若いものね、気を張って
疲れたのでしょう、休むといいのよ。
他に手段が無かったのなら別だけれど、今こうして事件が無事に終わったのだから。

「いいのよ、皆相応の活躍をしたわ。」

わたしがそう言う。

「…そうだね、手にした事のない金額だが…何故か相応な気がするよ。」

「じゃあ、ポール。」

ルナがPCの電源を落とした。
もう寝る、という意思表示のようね。

「ああ、お疲れ様。 ジョーン、君も良く休んでくれたまえ、
 何だかんだ言って、君抜きだとどうにもならなかった。」

「そんなことはないわ、ウインストンとケント君、ルナが居れば
 大概の困難は越えられる。」

「…そうだといいのだけれど、あたしらにはまだちょっと荷が重いわ。正直。」

ルナがベッドの上でうなだれた。

「…そう、まぁ…わたしで出来ることがあれば、何でもするわ。
 遠慮なく言って頂戴。」

「まぁ、今すぐレベルアップは無理だといってるだけだよ、
 大丈夫、君にいつまでもおんぶに抱っこはしないさ。
 おやすみ、二人とも。」

ポールがでてゆくと、ルナはわたしに背を向けオーバーオールを脱いだ。

わたしも腰巻くらいは外そうかしらね。

アイリーの眠るベッドにルナは入り込む、わたしが一つベッド
占領しちゃってるけれど、今朝みたいにキス騒動はゴメンだわって
こういう割り振りになっちゃった。

「…あなたはどこに居るのかしら…。」

電気も消えた室内でベッド越しにルナはわたしのほうを向いて横になっていて
わたしにそう問いかけた。

言葉どおりの問いかけではないことはわたしにも判る、でもこう応えるしかなかった。

「ここに居るわよ…」

「…すごく遠く感じるわ…すぐそこに居るのにね…」

わたしの経歴にかなり疑問がわいてるのだろう、
ルナだけではないのだろうけど、ルナが一番気にしているみたい

「…そうね、正直に話してちゃんと受け止められるか判らないような
 …我ながらずいぶん遠回りに生きてきたから…
 …でも…そうね…多分…知ることになるんじゃないかしら…
 …予感だけれど…」

「…ごめんなさい…ヘンなこと聞いちゃったわ。
 おやすみ。」

わたしは挨拶を返したけれど、もうルナはそのまま寝るつもりらしい。
後は何も反応が無かった。
…わたしも…眠い。

こんな風に…他のスタンド使いと密接に過ごしたことは無かった。
正直わたしも…どのタイミングでどう切り出したらいいのか判らない。
…みんなのことも良く知らない。
アイリーのスタンド使いになった経緯だけは聞いたけれど…

…わたしもまだまだ…闇の中なのよ…


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