Sorenante JoJo? PartOne "Ordinary World"

Episode:Seven

第三幕 開き

ジョーンはオーディナリーワールドを全開に使い
向かってくる兵士たちを死なない程度に痛めつけている。

あたしは怖がる村民をまず落ち着かせる。

「…あなたたちは毎日ちゃんと神に祈ってるのでしょう、
 悪いようにはしないわ、ほら、怪我した人はあたしに見せなさい」

我ながら、普段のジョーンみたいに優しく接せられない
自分が半分嫌になるけれど、でもそのつっけんどんさが
この場はかえって威厳に感じたんだろうか(苦笑

次の瞬間にはあたしを畏れ敬いながら怪我人が殺到した。

ジョーンはあたしから結構離れてて兵士たちをあらかた追い払った。

「…二度とこの地に足を踏み入れることを許さないわ…」

そう言っていた。

「ジョセッタは…ジョセッタは一体どうなるのですか…!?」

父親を筆頭にジョーンの…両親があたしのそばに来た。
…心が痛む。

「…この時代…「神」の名の下にローマが
 富と名声を欲しい侭にしている時代…
 正直どうすることも出来ない…
 …だけれど大丈夫よ…ジョセッタは生き残る…
 ちゃんと生きてゆくわ…」

そうとしか言えない…

「天使様…結局ジョセッタは…異端なんですかい?」

…あたしが天使だって?(苦笑
村人の一人が聞きづらかったことを代表して聞いてきた。
…おっと…
矢が飛んできた。
敗走しながらも矢を射ているのだ…
まぁ遠い距離から威力の落ちた矢くらいなら
ア・フュー・スモール・リペアーで受け止められる。

勿論普通の矢だわ、

一般人からはスタンドは見えないわけだから、
空中で矢が止まったように見える。

おおっ、と声が上がる。

あたしは苦笑しつつ

「あたしは天使ではないわ、あくまでそれを助ける存在よ。
 …でもこれだけは確実にいえるわ、
 ジョセッタは異端なんかじゃあない。
 …彼女こそが本物の天使だわ、羽の生えたって言うのではなくね」

あたしの確信に満ちた答えに皆は騒然とする。
遠くからこちらに向かって歩くジョーンが

「よしてルナ…」

否定しようとしたんだろう、その瞬間、飛んできた矢に
一瞬彼女の反応が遅れた。
オーディナリーワールドは矢を受け止めつつ、
矢が仮面に当たってしまった。

仮面が二つに割れ、顔があらわになる。
ジョーン…以前あたしとのやり取りで
「自分の外見など気にしてない」
と言うのがあったわよね?

ジョーンはでもさすがに司祭に見られるのだけは
気をつけてたけど、司祭のいない今、顔をそのまま出した。

あたしには判るのだけど、両親を含め村民は驚いた様子だった。

…そりゃ、そうよ…
人種やらなにやら多少変わってしまったとは言え
受ける印象はアレサそのもの…成長したら
そうあるであろうジョセッタそのものなのだから…

「…この場で貴女が否定してどうするの、ジョーン。」

「…でも…」

戦いが終わるとジョーンはとたんに気が抜けた。
ここに居辛さというか両親や村民の顔を見るのがとても辛いようだった。

それでも彼女がジョセッタのフォローに回らなかったのは
追う司祭の姿を見ていると殺意を抑えられなくなるからだ。
…あたしには判る。

「…あ…貴女は…」

アレサがジョーンに近寄る。

「…わたしはただの「使い」よ…」

動揺をひた隠しにしながらジョーンは冷静を装い言った。
あたしはその様子を見守りながらも怪我人の治療だ。

オーディナリーワールドは射程の一杯を使って
付近の壊れた民家を修復している。
彼女も恐らく気が気でないだろう。
努めて必死にやっている。

「…どうしてこんなに似ているの」

アレサの一言に、そう、どれほど体を入れ替えようと
記憶や魂、顔のパーツを残している限り
自分はやっぱりジョセッタから脈々と続く
一人の人間なのだと自覚したようだ。

「…こう言っておくわ…貴女の遠い親戚なのよ…納得できたかしら」

確かにその言い訳はいい言い訳だわ、この場で説明するには
説得力が多少ある。
でもね。ジョーン、貴女の動揺が声を少し震わせていてね…
「ただの言い訳」にしか聞こえないのよ…

「…正直わたしには今この出来事をどう受け止めていいのか判りません
 有り得なさ過ぎて…泣けばいいのか叫べばいいのか…
 …どういうことか判らないけれど…」

アレサはいいながらジョーンの両頬を優しく触れた
そしてその顔をじっと見つめた。

「…どういうことか判らないけれど…
 貴女はひょっとしてジョセッタなの…?」

…なんて…なんて勘かしら…
さすがジョーンの母親ね…

村民も父親も…弟妹も…アレサの一言に動揺した。
ジョーンも大きく動揺したのは言うまでもないわね。

「…な…何を言っているの…
 ジョセッタは今さっき…ここから逃げて行ったでしょう…
 どうして同じ時代に…同じ人物がいられると思うの…?」

「…判らないけれど…ああ、でも…この…
 右目の下の…小さな泣き黒子…貴女はやっぱり…」

泣きボクロですって?
確かに…とはいえ普段は下まつげに殆ど隠されて見えない。

赤ん坊の頃、成長して笑い掛けるとき、怒るとき、
何かにつけて見つめ続けたその顔の特徴を、
アレサは発見してしまった。

「…諦めなさい、ジョーン、貴女の負けだわ。」

あたしが言う。

「ルナ…」

とても困ったようにジョーンが言った。

「…ここから先あたしが話すことは…皆
 ちょっとした小話というか…
 「ああ、突然現れた訳の判らない人物が訳の判らない事を言っている」
 って言う程度でいいわ。」

村民も、ジョーンの両親もちょっと困惑しているのがわかる。
…っていうかあたしも困惑だわよ…下手をしたらステージNGに
なるのかもしれないのだから…

「あたしらも来たくてここに来たわけじゃあないのよ、
 一種放り込まれたと言っていい。
 …あたしらの住む世界は…神の国なんかじゃあない。
 ここより遥かな未来よ。」

やっぱりざわめきが起こる。

「…あたしも詳しく言えないというか…判らないというか…
 ただね…真実があるのよ。
 遠い未来であたしや…さっき居なくなった仲間…
 ジョーンと出会うのはここから580年も先のこと。
 そして…そのジョーンの記憶によると…
 この日この時に…ジョセッタは6人の男女に司祭から逃がされ
 放浪の旅…長い旅に出ることになったって言うこと…」

580年、その言葉は余計だったかなと思いつつ、
確かに皆どういう風に理解していいのか混乱しているよう。

「…彼女は…年を取れない体になってしまっているから…
 一箇所にとどまり続け普通の生活を送ることなんて出来ない。
 …名前もその都度変えてきた。
 つまりあたしらと出会ったときには彼女の名は「ジョーン」で
 あたしらにとってはもう「ジョーン」という名前以外に
 呼べる名前はないのよ、でも…
 彼女は忘れていない、ファミリーネームだけは580年ずっとね。」

両親がジョーンを見る。

でもジョーンはこちらに視線を向けないでうつむいていた。
辛いでしょう、ええ、判るわ、でもね…

あたしはジョーンに向かって言った。

「折角舞い戻った人生の転機なのなら…次のステージに行く前に
 ちゃんと言うべきことは言いなさい…それがせめての
 孝行と言うものでしょう…?」

「ジョセッタ…」

両親が口々にジョーンに呼びかける。
…でもジョーンもなかなか…仕方ないのだけど…
心の底からはまだ自分が「ジョセッタの成れの果てなのだ」と
認めないで居る。

…あたしはけが人の治療もあらかた終わった…さて…

「…誰でもいいわ、馬持ってる人居る?」

村長だと名乗る初老の男が持ってるといった。

「ちょっと貸してくれない?
 あたしもジョセッタを逃がすためのフォローしに行かなくちゃ…
 大丈夫よ、ちゃんと返すわ、とはいえ…
 またこの村にくることはないと思うから…
 そうね、山道の脇の小さな道って所の…
 ローマとヴェネツィアの分岐点でしたっけ
 そのへん辺りに繋いで置くわ。」

「…判りました…正直まだ私どもは貴女達が
 何者でどこから来たのか理解できません、
 …しかしどうやら…大きな運命の中で
 やるべき事を果たしにきたのだと言うことだけは判ります…
 お貸ししましょう…こちらに」

村長の案内であたしはそこから去るわけだけど、去り際に

「…ジョーン…貴女は時間一杯でもここに居なさいな、
 大丈夫、あたしも居なくなるから」

…だから安心して泣きなさい、と言いたかったのだけど、
それは言わなかった。
…だってまだファーストステージだものね。

こらえきれずジョーンが泣くと言うならそれは止めないけれど。

あたしは納屋の場所を教えてもらって走ってそこを去る。

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「…山道の脇にくっきりと側道と呼べるような道を作ってしまったのは
 ジョセッタ…貴女なのよ…
 女の子なのにせっかちでおてんばで…
 わたしや父さんと一緒でないときは必ずそこを使ってたでしょう?
 遠い親戚が…なぜそんなことを知っているの…?」

母の言葉に…わたしにもう反論は出来ない。

「…信じられない…信じられないが…だが…」

父がわたしに歩み寄る。

もう…我慢も出来ない。
出来ないのだけど…ギリギリでセーブしなくては…
この先のステージに影響が…

「…ジョセッタ=ジョットは…
 二度とこの村に戻ることはないわ…
 これから六十数年…ベネツィアで半分隠れるように
 過ごさなくてはならない…」

わたしが喋り始めると、皆黙った。

「そのあとは…ヴェネツィアにも居られなくなって…
 アフリカに渡ったり…キエフに行ったり…
 時代は変わり…人も国も全てが変わって行って…
 何度も死にそうになってはダメになった体を
 入れ替えて…それでも生きて…
 …まさか583年も経ってから…「この日」に戻るとは
 …思いもしなかったわ…」

弟と妹が遠巻きに…母に隠れてわたしを見ている。

「…ジョバンニ…お姉ちゃんはもう居ない、
 貴方ももうすぐ十になるのだから…これからは…
 ちゃんと父さんの畑の手伝いをなさい、
 遊ぶのに忙しいなんて言い訳は…もう許されないわ…」

そして妹にも

「ジョコンダも…皆と同じ食事が摂れるようになったのだから…
 お母さんの手伝いをなさい、最初から
 料理を覚えなさい何ていわないから…
 出来た料理を運んだり、片付けたりでいいから…
 約束なさい…貴女があんまり聞き訳がないから
 隠した貴女の宝物の場所を…約束したら教えてあげるわ、」

「…ホント…?」

妹が母から一歩出る。

「…だから…約束なさい、お姉ちゃんはもう居ないのだから
 貴女がお母さんを助けなくて誰が助けるの…?」

「…うん、約束する…」

妹がわたしの腰巻のすそを掴み、わたしを見上げる。
いきなりこんなに大きく…人種まで微妙に変わった
わたしを、それでも貴女は姉と思ってくれてる…?

「…そう…、じゃあ、天井裏の部屋の…
 今の時間月明かりの射す窓の…左脇にある箱を探して御覧なさい…」

「…ジョセッタ…」

父もとうとうここにいるのはかつての娘だと認識したようだ…

「お父さん、ごめんなさい、お母さんも…
 村の皆も…本当に…迷惑に巻き込んでしまって…
 …これはだから…わたしからのお願いよ…
 もし…これから誰の子でもいい…
 わたしみたいな「人に見えない力」を持った子が
 生まれてきたのだとしても…それは
 身内の中だけで細々と使って…
 そして周辺の誰にも伝えないようにひっそり生きて頂戴…
 …少なくとも564年の間は…」

「…ジョセッタ…貴女は本当に…そんなに長い間…」

母が悲しそうな顔をしている、

「…お母さんのせいでこうなったとかじゃあないのだから…
 何をそんな顔をしているの…?
 …そうね…少なくとも「今」…ここから580年以上経った
 「今」…わたしはこれでも結構幸せなのよ…?
 さっきまでここに居た…ルナというのだけど…
 彼女はどうあれわたしにとって大切な人だわ…
 他の皆も…だから…皆さっきここから去った
 ジョセッタを必死に逃がそうとしてくれたじゃあない?」

山から深い霧が下りてくる…もうそろそろ…時間ね…
村の人も「おや…こんな時期のこんな時間に霧が…」とつぶやく。

「…この霧が別れの合図だわ…わたしは行かなくてはならない…」

わたしは霧を見つめながらそういうと、家族全員が
わたしの周りに。

弟や妹が泣きながらすがってくる。

母と父も…涙を流している。

…ごめんなさい…わたしは今ここで泣くわけには行かないの…

「…ここには居られないのか…?」

「せめて一晩だけでも…過ごせないの…?」

「…さっきもルナが言ったわ…わたし達は望んで
 この時、この場所を選んで訪れたわけではないの…
 ジョセッタが無事ベネツィアに向かう道に
 向かえたなら…次に進まなくてはならない…」

「…そんな…」

「…でも…会えてよかったわ…永遠に言えないと思ってたのに
 …チャンスが出来たんだもの…後でルナにお礼を言わなくちゃ…」

霧は村まで降りてきて、辺りを包み始める。

「ジョバンニ、ジョコンダ…手を離して…
 お姉ちゃんは行かなくてはならない…」

泣き喚く弟達、でも手は離してくれた。
父と母は、見つめあい頷くと、急ぎ家に戻り
そしてわたしに幾つかの葡萄とオリーブの実を渡してくれた。

「行かねばならないと言うのなら、とめられはしない…
 途中で…食べたくても食べられない瞬間があるかもしれない
 …だからせめて持って行きなさい…」

「…ありがとう…」

わたしは霧の中を山に向かって歩き出す。

村の人も、両親も、弟達もジョセッタの名を呼ぶ。

わたしは霧が深くなってきて霞んで見えなくなりそうな皆を振り返り

「村の皆…ジョバンニ、ジョコンダ…そして…お父さん、お母さん…」

続けて言おうとしたのに言葉に詰まる…涙声になりそうになる
最後の平常心でわたしはやっと言えた。

「………さようなら………」

…霧がすべてを覆う…わたしの心も…

このステージで泣くわけには行かない…
皆をきちんと現代までナビゲートしなければ…

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少し…時間を戻すとしようか、
ああ、いや、スタンド能力云々じゃあなく、
状況的にね。

ポールだが…

ジョセッタ嬢は最初そのショートカットで逃げようとしたのだろう、
ところがそのショートカット道に近いほうから追っ手がやってきた。

いくら動くのが大好きなおてんばな少女とはいえ、
そこは何の…そう、波紋なども修行していない普通の少女だ。

大人の男の足にはかなわん訳で、普通の山道の方に逃げ込み
走り出した。

「…ええい…ッ 何をやっておるか二人とも!
 殺さぬ程度になら痛めつけてもかまわん!
 ウルカヌスとネプトゥヌスを使わんかッ!」

遠目にそれが不完全ながらスタンドと思しきを指すのがわかる。

「…くそッ…!」

ウインストンが風街ろまんを使うタイミングを考えあぐねている。
彼らには悟られぬよう、我々はジョセッタの手助けをしなくてはならない、

何気に、これは厳しい。

追う彼らの装備品やらなにやらの音が割りにけたたましいのが唯一の幸いで、
我々は後を追いつつ何とか中間位置の茂みに身を潜めることができたが…

ウルカヌス、英語ではバルカン、火の能力を意味すると思う
ネプトゥヌスは海…転じて水を指すと思われる。

やはりこう、四大エレメントを象徴するような能力は
生まれやすい傾向にあるのだろう、
それが強いか弱いかはともかく、割りに見かける「初歩的な」
スタンド能力のように思われるね。

初歩的なだけに、モハメド=アブドゥルの「魔術師の赤」のように
経験も豊富で技も多様な場合は目を見張るべきものがあるのだが…

このウルカヌスの場合、単に火を生み出し、矢などに移し
火矢を作る能力のようだ。
殺傷能力、という点で「弱い」といわざるを得ないが、
その弱点を補っての「火矢」というわけだ…

山の道を走る少女に対し、それは何度か射られるのだが、
なかなか当たらない。

しかしそのおかげで我々は茂みを利用し、何とか
ジョセッタの先回りをできる位置にまで追いつけた。

…もちろん彼女に我々を悟られる訳にも行かん。

ネプトゥヌスの能力は、周囲の水分を操るか、
地面をぬかるませ水たまりを作る(足場を悪くする)のが
基本のようだ。

突然の足場の悪さにジョセッタは何度も転びそうになる。

火矢が…これは当たりそうだ…!

ウインストンが見回した木のひとつを見て

「ケント! こいつの根の下から壁をせり立たせて
 彼女のフォローになる位置に倒せ!
 もし何ならその木にまぎれさせて壁も仕込んでもいいッ!」

…なるほど、風で木を切るなどは断面などから
不自然だ、ケントの壁を「それとなく」使うことで
…幸いにもぬかるんだ地面のせいで木が倒れたのだと
言うように見せるわけだ、ウインストン、さすがだね。

「よっっしゃぁぁーー!」

ウインストンの指示通りにケントがうまい具合に
木を倒しジョセッタのフォローをする…んだが、
木の根というのは種類によって相当広い根を張る。

アイリーが必死で「ベイビー・イッツ・ユー」を
何とか木に絡ませて掴めないかと奮闘している。

アイリーのスタンドは現実の「物」を掴むスタンドではなかったのだが、
テンションがあがると…以前エジンバラで怪我をしたジョーン君を
線路から引き離すために使ったりも…限定的に「物を掴む」こともできる。

わたしのマインド・ゲームスも倒すのに参加しよう。

危ういながら、火矢をそれでかわし続けることが…
ひいては追っ手の道をふさぐこともできる。

「…よし、ここはオメーら三人に任せたぜ!?」

「どこ行くの? ウインストン」

「…ジョーンのこの時の記憶によると…
 深い霧が発生したらしいんだ…
 さっきジョーンがこの付近に滝のある水源が存在するようなこと
 言ってたじゃねーか、それを探しにいくッ!」

「…そっか…うん、がんばって!」

アイリーが小さく胸の前で両手でガッツポーズ。

「ああ…頑張らせてもらうぜッ」

ちょっとそれに応えるように似たポーズをウインストンがしたときだった。
司祭が苛立ちを隠せないように

「…ええい…ッ! ぬかるんだ地面で木が…!
 もういい…!
 わしがやる…ッ!」

フレデリコ司祭の背後に沸き立つ…これが彼のスタンドだろうか…
映画「エイリアン」のような奴が体から少しの位置に出る。
(やはり、この時代の彼はまだ途上なのだろう、
 全身がはっきりとは出せんようだ、この時代に彼が倒せたなら、
 みなそう思った)

…しかし司祭のスタンドは自ら攻撃をするのではなく…

…なんとネプトゥヌスの使い手を襲い始める…!

「…な…司祭様ッ! 何をなさるのですかッッ!」

ウルカヌスの兵士が叫ぶのだが、ネプトゥヌスは
既に司祭のスタンドに食われた後だった。

いきなりのスプラッタにアイリーをわたしは心配したのだが…
…以外に冷静…?
こんな状況、以前ならパニックだったろうに…

「…なんて事するの…!?」

純粋に怒りを表している。
先ほどの…我々が女性陣三人の前に到着する前に…
何かもっと恐ろしいものを見たのだろうか…

「うるさい…こうなったからにはお前もわが力にしてくれる…!」

フレデリコ司祭はウルカヌスの兵士にも襲い掛かる!
…なるほど、こうやって自分の正体を知るものを
次々と消して…それで正体を隠してきたのかね…

ウルカヌスの兵士が必死で火矢を司祭に射る、
司祭のかぶっているものにそれが当たり後方に飛んでゆくが…
司祭はにやりとウルカヌスの兵士を食らいはじめた…

その表情…「狂気」の一言だ…

水源を探しに行くはずのウインストンも固まっている。

「奴…老人だったが…少し若返ってないか…顔の形も
 微妙だが変化しているぞ…!」

食い終わって、逃げるジョセッタに向き直った彼は…
なるほど…二人の兵士の特徴を微妙に取り込んでいる…
年齢も平均的にか微妙に若返っている…
「食った相手をあらゆる意味で消化し、我が物とする」

そういうスタンドなのだ…

司祭のスタンドが構えると、範囲は著しく狭くなったが
自分の足元から直線状に「水でぬかるんだ地面」を
ピンポイントでジョセッタの足元に食らわせる!

ジョセッタはさすがに転んでしまった…

「…当然スタンドも「消化」か…著しく能力は落ちたが…
 そこは奴の知恵と執念で克服…」

転んだところを小さな火が投げつけられ、ジョセッタの近くで着弾する。

ジョセッタの恐怖の表情が見える。

「ふふふはは…ジョセェェ〜〜〜〜〜ッッッタァァァア〜〜〜
 もう逃がさんぞぉぉぉ〜〜〜〜…
 お前の「奇跡」の力…ぜひ我がものにし…わしは
 神の選び給うた法王に…そして…いずれはその神に…
 そしてその神も超えるのだ…その為に…お前の力ぁぁああ〜〜〜〜!」

この時代のローマ法王は「世界の王」、ルナによるとそういうことになる。
…この男…その能力がもし望みどおりのものを得たとなると
確かにそのように動くだろう…これは…
「歴史がそうあるべき」という縛りとは別に何としても止めなくては…!

歩み寄る司祭の足元に「ほんの少し」壁を出し、ケントは
司祭を転ばせた…!

「くっそ…! このくれーのことしかできねぇ…
 ジョセッタにげてくれよぉ…」

彼女にはもちろん聞こえないが、ケントの祈りが通じたか
ジョセッタは恐怖の中で何とか立ち上がり、また逃げ出した。
とうに息も上がってるが、逃げねば無残に食い殺されることになる!

「何とか…三人でフォローを考えて実行してくれ…!」

ウインストンが茂みの奥へ消えていった。

我々三人は顔を見合わせ、大きく頷き司祭を足止めする策を練り始めた!

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「くっそ…水源水源…」

俺は時々立ち止まって耳を澄まし、滝の音を探す…
だがジョーンが「規模は小さい」といってたように、なかなか
聞こえてこねぇ…!

苛立つ俺がその辺の木を殴ったときだった。

俺の手が何者かに止められる。

「…あせるな…この時代の言葉は調べた程度にしかわからんから
 英語で話せよ、水源なら俺が探しておいた…」

俺の手を止めたのは…「レット・イット・ビー」…

「…ジタン…!?」

「そうだ、俺だよウインストン。」

「…お…お前…どうしてここに…」

俺が心から驚いていると

「…デス=ジョーカーという男がルナたち三人に差し向けられた…
 かなりやばい奴だったんで…彼女たちと出会う前に
 …俺が始末するつもりで追ったんだが…」

「…おい、そいつお前の同僚じゃあねーか…」

「…だが、あの男を彼女たちにぶつけることは許さん
 離反だろうがなんだろうがそうするつもりだったんだが…」

「ジョーンがそいつを殺したらしいな…」

「…固まっちまった…あまりに凄まじくて…
 そうしたら…どうやら俺が居た位置は
 ゼファーの奴のスタンド効果範囲内だったらしい…」

「「巻き込まれた」…そういうことか?」

「…信じてくれるか…?
 とりあえず、この時代の言葉は
 少ししか判らんが…ジョーンの言葉から
 「水源」という言葉を聞き取って…何かしら
 使えるかも知れんと今まで探してたんだ、来い、」

「…俺とお前の間で信じるも何もねーよ…どこだ?」

「…お前も甘い奴だな…この場は助かったが…
 その甘さ…少し克服しておけよ…?」

「俺はお前のことはよく知ってる、お前以上に
 信じられる奴はそうそう居ないからな。」

水源まで行く茂みの中、俺がそう言うと
ジタンは苦笑した。
苦笑したが、ちょっぴり嬉しそうでもあった。

「俺はこの時代に起こることを独自に調べてある
 だからお前たちについてゆくことはしなかったが…」

「…とりあえずお前もろともだったのなら…
 次のステージにも行くんだろうし…
 …何とかお前が「巻き込まれてここにきた」って
 説明しないとな…」

「…お前に「説明」を期待しちゃいないよ…
 ルナあたりが俺を相当怪しむだろうから…俺はなるべく
 お前たちの前に姿を現さないようにするさ」

茂みからいったんジョーンの言ってた「側道」に出たときだった。

「…「誰」が「誰」を怪しむんですって?」

馬に乗ったそいつは…ルナだった…!

「ルナ…! いや、ジタンはその、巻き込まれてだな…」

「…考えようによっては今回の二人の「監視役」とも取れるけど
 まぁ…現代人はいくら死のうと構わないステージに
 まんま貴方がいるところを見ると、巻き込まれたんでしょうね
 信じてやるわよ…」

ルナは続けた

「…「どうして巻き込まれる場所にいたか」はまぁ…
 貴方のことだわ、ジョーカーを知ってたんでしょ…
 彼があたしを襲った真犯人かどうかまでは判らなかったから
 伏せておいたんだけど、そいつがBCにいてしかもあたしらに
 差し向けられたことを知って駆けつけたら…」

おいおい…やけに回転のいい奴だな…

「…ジョーンが奴を殺るところを…俺は見てしまった。」

「固まって動けなくなって…そしたら「30メートル圏内に居た」
 …そういうことでしょ? いいわよ、どの道ジョーカーについては
 もう終わってしまったわ。」

「…ってーかルナ…お前馬乗れんのかよ…」

「…母の趣味が乗馬でね、離婚前のあたしが小さいころは
 よく付き合わされたもんだわ。
 …あたしも嫌いじゃあなかったしね、でもやっと乗れるくらいよ
 貴方たちはどこへ行くの?
 ジョセッタは反対方向でしょ?」

「「水源」を見つけたんだ、こいつの風を使えば霧が発生させられる」

「…さすがジタン、この時代も調べてある程度言葉を調べておいたのね」

「だが片言だそーだ、とにかく…俺はジョーンから
 「この場で霧が発生して逃げ切った」ことを聞いてたんだ、
 だから早くしなきゃーよぉ!」

「いってらっしゃい、あたしはポールたちに合流すべく
 先に分岐点に行ってるわ、じゃあね、しっかりやんなさいよ!」

ルナは馬に「ア・フュー・スモール・リペアー」の効果を使いつつ
(馬が疲れても疲労部分を回復させたり、やる気を出させたりしてるわけだな)
…確かにあまりうまくはないが落ちない程度に馬を操り山を登っていった。

「…さすがはルナだな、」

ジタンが何気に言う。

「あせったぜ…」

「以前の彼女なら俺は「黒」と断定されてたかもしれない
 ジョーカーを殺るのも代行など許さなかったろうが…
 ジョーンはルナにとって相当でかい存在になったようだ…
 ずいぶん冷静に心が広くなったもんだ。
 そうあるべき未来のためにも…行くぞ、水源はこっちだ!」

「お、おう…」


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