Sorenante JoJo? PartOne:OrdinaryWorld

InterMission One

第三幕 開き

「…そうか…、その女…かなりの使い手のようだな…」

「はい…まだ私にも能力が判った訳じゃあないんですが…」

「…済まないが…もう一度その女の名を教えてくれないかな…?」

「ジョーン…です。」

「フルネームは…覚えてないのかね?」

「ああ…失礼致しました…一度しか名乗ってなかったので…
 …しかし…確か同じ名前の画家が居たような…」

「…ジョット…かな…?」

「そうです、…良くお分かりですね…?」

俺がそう言うと、プレジデントが不適に笑った。

「ふっ…ふっふっふっ………そうか…JOAN=GIOTTO…なるほどね…」

俺は思わず眉をしかめた、何を意味しているのか全く判らなかったからだ。

「…ああ…すまない…ふふふ…いや、あるいは「もしかして」…と思ったんでな…」

プレジデントは少し考えて

「ゴロワーズ君…」

「はい、」

「Jo、Gio、Sio、これら各言語で「ジョ」という発音で始まる
 ファーストネームで…苗字がGiottoの女を…
 …時代は問わない、欧州中回ってでも探し出してみてくれないかね?」

「…時代は問わない…のですか?」

「むしろ…現代は外してくれたまえ。
 …もし…もしだが…それらが時代をつむいで…
 1,486年のエジプトで発見された…ジョセッタ=ジョット
 …という名前の死亡記録に行き着くようなら…ふふふ…」

「どうなるのですか?」

「…それは…行き着いたなら話すとするよ…
 外れていたら…目も当てられないからね…ふふふ…」

謎が謎を呼ぶ…俺は彼女の技や能力にばかり報告の気を取られ…
というか確証がないので「百年は生きている」という
ウインストンの言葉はあえて外したんだ。

…しかしプレジデントは時代を超えて探せと?
まぁ…血統を探すと言う意味なのかもしれない。
…というか普通そうだろう、

彼女が…死亡記録として1486年…?
あれだけのスタンド能力者だ、「死んだこと」に見せるのは
出来ることだろう…

だがしかし…正直俺の理性は否定したがっている、
「系譜を探すのだ」
そういう指令だと思っておこう…

特別なプレジデント勅令と言うことで休日も兼ねた
(つまり俺が疲れたと思ったなら休んでもいい)
調査と言うことになった。

…そこまで彼女に興味を持ったのか…?

いかん、社屋を出た後も気になって仕方ない。

…時間は午後8時半か…

…余りに気になる…、俺は博物館に駆け込んだ。

以前この博物館にも調査に来たことがある、学生の頃は
普通に通っても居た。
ここの宿直の学芸員も顔見知りだ。

「…え? ファーストネームの頭二文字がJOで苗字がGiottoの女の記録?」

「…現代以外…というか…ここは古い記録や蔵書や絵画が沢山眠ってるからな…
 …そうだな…ただ漠然と「探す」では大変だよな…」

俺は色々探す手立てを考えた

「…そうだ、ボイルとかキャベンディッシュとか…科学に貢献した人物に
 まつわる記録書…」

「18〜19世紀ですね、それだと…ええと…」

彼が非公開の蔵書をあさる。
直接…例えば論文とか、そういった類のものは公開に値するものだろうが
例えば…そうだな、雇用表とか…もしあればだが…そういうのは
資料かもしれないが、女中の名前を書き連ねてあったって
公開しても面白くもなんともないだろ?

増してキャベンディッシュは人嫌いで女中とも殆どコミュニケーションがなかった
風変わりな科学者だ。
(だが、科学には貢献した)

俺も一緒になって色々探してると職員が…興奮気味に俺に
一冊のノートを差し出した。

「…ここ…ここですよ…! ご所望のものがありました!」

「…女中の雇用一覧だな…年代は1770年…ジョゼ=ジョット…
 …あった…、まてよ…じゃあ名前をジョゼに限定して…」

ジョゼだけ、ジョットだけ、ならそれなりに出てくる、
だからJOなんとか…と言う風に探すのではなく、
ジョゼ=ジョット一つに絞り、色んな資料をあさった。

「…ああ、言われたとおりですね…有名無名問わず
 色んな学者の下で女中として働いてます…
 1770年〜1790年辺りまでの20年間に…
 …あれ、待てよ…」

彼はおもむろに非公開の絵画を収めてある棚に向かった。
非公開の絵画ってのは…作者がわからんとか、
余りに無名で腕もそれなり、とか…痛みの激しいもの…
下書きや素描など…完成品が別にあるものなどだ

彼は探しながらつぶやいた

「…いえね…以前ジョゼなんとかって女性を描いた絵が…
 作者不明のがあった気がしたんですよ…」

「…本当か?」

「ええ…、あった!」

彼が取り出したそれなりに大きな額の中に納まっていたその女の絵。

…俺の心臓が高鳴る…

「…これは…」

「いえね…作者不明ってのもあるんですが…どうやらこの女性…
 コホン、ちょっと現在も存在する名家の事なんで
 家の名前までは申し上げられませんが…
 信じられなくて、なんとその家のスパイとして雇われてたらしいんです。」

「…本当か…?」

「ええ、記録もありますよ。
 …あ、ほら、額を外したらキャンバスの裏に…ジョゼ……ジョット…
 苗字までは覚えてなかった…ジョット…まさか…」

「…その絵の年代は…?」

辺りの空気がうなりを上げるようだ…

「…1794年…え、嘘でしょ?
 もし同一人物なんだとしたら…彼女生まれてすぐ女中ですか?」

「…そういう例はなかったわけじゃあないだろうが…
 だが学者の家ばかりに女中で出入りしたのにその年はないだろう…」

「…ですよね…どう見ても…二十代真ん中あたり…
 ちょっと肌の浅黒い…混血のようですね…」

「…………ちょっと頼みがあるんだが…」

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ジョーンったら次の日になったらきっちり二日酔いってなによ?
ああ、あたし、ルナよ。

そんなものスタンドでほぼ治せるでしょ?
ってあたしが言うと

「…たまには…二日酔いもいいかなぁって…w」

結果ジョーンは寝ている。
今のところお金はあるから各自食事は別個に食べに行くとか
そういうことも出来るけれど…

「貴女も…酔狂と言うか…ひとりで生活してたときもそんな感じだったわけ?」

「…まさか…w」

二日酔いに任せて寝ていられるのは…あたしらがいるから?
甘えなのか…それともそれだけ安心できるって意味なのか…
ん、もう…

「…あたしは病理休暇が一日あるから…これから大学の頃通ってた博物館にでも
 リフレッシュに行こうと思ってたのに…
 …新聞でもネットでも…なんでも18世紀末の絵画が一点
 新公開って…見に行きたいのに。」

「…あら…、行って来ればいいのに、何も重病って訳じゃあないのだから」

「…まぁ二日酔いじゃあね…折角のウインストンへの趣旨返しも
 彼には通じなかったようだし…半分以上自業自得ね、」

あたしがそれを言うと、ジョーンは苦笑した。
何って、ジョーンのこの「無理に誘われたんだから帰りも保障するって事ね?」
という趣旨返しに気づいたのはあたしだけだったからだ。

「…うん…じゃあ、あたし…ちょっと行って来るわよ?
 何か欲しいものある?」

「レモネード」

即答した。
まぁ…すっきりしたものが欲しいって事ね、さっさと治しちゃえばいいのに。

事務所のほうにも顔を出して

「じゃあ、二時間ばかり行って来るわ。」

「あー、いってこいよぉー」

「たまにはリフレッシュしてきたまえよ」

「…誰か一人でも博物館見に行こうって人は居ないわけ?」

あたしがそれを言うと全員黙った。

「…まー…あたしの好きで行くだけだから…でもあれよ?
 貴方たちこそたまには見てくればいいのに。」

「…いやぁ…俺にはどーも、芸術や学術記録の類は…」

「ファッションパンクスが入っていいのかよォー?
 特に興味もねぇーし」

「あたし…多分仕事入ったら出撃確実だからなぁー」

「…ジョーン君が「あえて」二日酔いで潰れると言うなら
 私が電話番だからねぇ…」

「…そうね…聞いたあたしがバカだったわ…」

気を取り直して猫に…リベラの額に人差し指で「つん」と軽く一突きして

「じゃあ、行って来るわ」

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新聞の記事も地味だったし、博物館のサイトを覗くなんてのも
あたしくらいだ、新しく公開されたというその絵画のあるブースは
とても閑散としていた。

さて…どんな絵なのかな。

こういう瞬間って結構好きよ。
皆にはこんな姿見せないけれどね、あたしはメガネを外し、
拭きながらその絵のそばに近寄っていった。

記事によると1794年、作者不明の絵と言うことで、
あたしはかえって有名画家を見るより好き。

…なんていうか、描く題材にもよるんだけれどね。

…さて…ご対め……………………

まず目に入った「ジョゼ=ジョットの肖像」の札…
ここであたしはまずドキッとしたのだが…


問題は…

絵…そのものだ…

やや地味なドレスに身を包み、腕を組んで静かに微笑を湛えている
少し浅黒い肌に…優しいカーブを描いた黒い大きな瞳…
…髪の毛に金髪が混じってたり髪形をアップにしてたりと

…微妙に相違点もあるけれど…

それは…どこからどう見ても…

そこへ…あたしも学生の頃良く見かけて話もした事のある
学芸員が来た。

「やぁ、リリーさん。
 私宿直明けなんですが…w
 やっぱり来ましたね〜」

屈託のない人なのだ。

…いや…そんなことはどうでも…

「何でもね、ああ、貴女と同じ職場でも働いてたんでしたっけね?」

その言葉に当てはまるのは彼しか居ない、ジタン。
彼、もしかしてあの後ジョーンを調べた?
確かに記録は書き換えたと言っても細かいのは無理だろうし、
彼女も「役所の」と限定してた。

「入れ替わりみたいなものだったけれど…まぁね…
 …彼が…これを飾れと?」

「そうなんですよ〜、無名画家の絵はやっぱりホラ、評判ないですからねぇ…w
 「でも、いい絵じゃあないか」って…記事も地味でいいから出して
 サイトも更新してくれって」

………あたしが…見に来ると…彼は思ったのか…

「歴史お好きでしたよね、彼女が…これ昨日ジタンさんと調べてて驚いたんですよ〜」

彼女の…というか…このジョゼという女性の経歴を調べたのだろう…
待てよ…18世紀終末ごろ…

「ひょっとして…学者の家で働いてたとか…」

「あれっ、何で判ったんですか?
 それが不思議なんですよ、1770年からキャベンディッシュの女中としての
 記録を皮切りに…1790年まであちこちの学者の下で働いてて…
 その後とある名家のスパイに…」

「!!!」

やはり…ただの空似じゃあない…このジョゼって人は…ジョーンなんだわ…ッ!!

なんてもの…見せるのよ…ジタン!
ジョーンは少なくとも…250年は生きている…?
70年どころでも100年どころでもないわ…!

「…ジタンさんも疲れてるんでしょうに、この絵のこと私に頼んだら
 …夜行にのってフランスまで行っちゃいましたよ〜
 ドイツやイタリア…ポーランドとかロシアにも…ああ、スウェーデンも
 行くって言ってたかな。
 途中ぽろぽろ戻ってくるみたいなことは言ってましたけど…。
 …あの…この女性、特に歴史に大きく関わってるとも思えないんですが
 何か特別な意味でも?」

「…い…いえッ…ちょっと…その、知り合いに似てたものだから…」

ああ、ばかッ!あたしッ! 何ストレートな答え言ってんのよ!

「そーですか〜、
 いやぁ…無名画家とはいえ確かになかなか上手い人ではあるんですよねぇ
 しかしなんとも絶妙な混血具合ですな〜」

感想を言えば言うほど、聞けば聞くほど、
…それはジョーンを指しているとしか思えない…

…ジタン貴方…開けちゃいけない扉…開けることになるのよ…
あたしらの常識なんてぶっ飛ぶような…
…多分そんな事実が見つかると思うわよ…!?

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あたしは即効で帰ると(レモネードはすっかり頭から離れかけてたけれど
 なんてったってジョーンの頼み物じゃない?
 思い出してしまって、まっすぐ帰りたいのに買ってきちゃったわよ!)

事務所にウインストンが居ることを確認して

「ウインストン、貴方ジタンのメルアドわかる?」

「ああ…俺は今携帯ないが…一応わかるぜ? 奴に何の用だよ?」

「…野暮すぎて腹立つくらいの野暮用よっ!」

ウインストンは何怒ってんだ?こいつ、って顔して紙をくれた。

「…ありがと、後で返すわ」

あたしが即効事務所を出て自室に戻る。

ポールもウインストンも肩をすくめてた。
今は説明してる暇はないのよ!

自室に戻るとこないだ経費で買ったPCを開く。
実質あたしのものになってる。

…だって事務所…男部屋に置いておいたって
どーせエロサイト回りでしょ?

…ああ、もう、そんなこたどうだっていいのよ!!!

あたしはジタンのメルアド宛てにメールを送りつけた。
「あんた、自分が何やろうとしてるのか判ってるの!?」
って

…返事がすぐ返ってきた。

『俺も怖い、怖いが…知りたいんだ。
 プレジデント直の依頼でもあるし…』

…それって機密なんじゃ…彼も相当混乱している…

『今パリだ、1920年〜40年代中ごろまで
 ジョアンヌ=ジョットと言う名がある…
 …写真まで見つけちまった。
 集合写真ってところだが…』

「やめときなさい…ええ…知ってしまったのなら
 250年はさかのぼっても事実を確認するだけでしょうよ…
 でももし…もしよ?
 それより古い記録が出てきてしまったら…?」

『…調べなければならない…』

「やめちゃいなさいよ!そんな調査…!」

『さっきも言っただろ…俺は知りたいんだ…まぁ…
 耐えられなくなったら一度帰るさ…』

次のメールの文章を練ってるときのことだ。
…いつの間にか後ろにジョーンが…!

「ちょっ…ちょっと…!」

あわててPCのふたを閉めた。
我ながら、あわててたらバカな行動をするな、あたしは…

「…だって帰ってきたのに…レモネードは?
 って聞こうと思ったら…」

「あ…ああ…ああああ…レモネードね…」

ジョーンにレモネードを渡した。
ジョーンはおいしそうに半分以上を一気に飲み干すと

「………ふぅ…まぁ…250年前って言うと…流石にその辺りなら
 わたしが「その人」だっていう「確固たる」証拠はないわね。」

「…あなたそれ…暗に認めてることになるんだけど…」

「わたしはね…役所のほうは方々で書き直したわ。
 でも、民間のほうはそのままにしたのよ。
 …別に意味はないわ…20〜30年くらいなら
 問題もないかなって、そう思っただけよ。」

「でも貴女…絵まで描かれて…」

「「素描でもいい」って言うから受けたのよ?
 見たけど…特に問題ないかなってレベルだったのだけど?」

…のんきな女だ…なるほど、この女の飄々とした態度は
ここから来るのか…あたしは博物館で撮った写真を
PCに移した。

ああ、普通ああいう場所は撮影ダメなんだけど…
一応あたし大学でそこそこ頑張っていたし…
歴史の研究が専攻だったから…
持ち出し禁止のものもあるわけだから
「特例」で夜間撮影モードだけ許されてたのね。
今回はオマケで特例させてもらったのよ。

そしてその写真をジョーンに見せた。

ジョーンが口を開けた。
まさかちゃんと油彩でしっかり仕上げてあるなんて
予想もしてなかった、真剣にそう思っている。

「…あなた…余程自分に自信がないか
 余程自分はどうでもいいと思ってるかどっちかでしょ…?
 確かにとらえどころがなくて…何ていうか
 「凛としている」とか「深みのある」とか
 そういうのは当てはまらないかもしれないけれど…
 ああ、もう、何であたしが貴女褒めなきゃなんないわけ?
 あなたかなり美形よ?
 どういう混血なのか…相当でもいい具合の。」

ジョーンが空っぽの表情になってる。
…自覚ないんだわ…

「外見なんて…それほど気にしたことなかったもの…
 それにこの体…何人かの人のパッチワークだし…」

さり気にこの女またすげーことをッ!

「…そ…それってなんなのよー!?」

「まず信じて…いい?
 まず最初にわたしは体を切り刻まれて死にかけて…
 どういう状況でそこにあったのか…ちょうど年頃の合う
 死体があったの、わたしも深いこと考えられる余裕なかったから
 体の一部をそこに移植して…体を入れ替えたのよ、
 そうしないと死んでた。」

とりあえずもうあたしは精一杯聞くしかない

「その後は…仕事で忍び込んだ場所で…戦いになって
 火にあぶられる事態になって…ところどころやけどとか
 酷かったから…北国でね、当時は凍死者も結構あったし…
 ダメになった部分を入れ替えた…
 他大体、そんな感じで少しづつパッチワークしてったのよ…
 そりゃ…オーディナリーワールドの力があるから…
 だんだん馴染んでは行くわけだけど…」



「あなたフランケンシュタインでもあったのね…」

「ああん、それはわたしの体になった人たちに失礼よ…
 どういう経緯かはともかく…普通の人たちの体なんだから…」

「ううううう…さり気に凄いこと聞いちゃったわぁぁあああ!」

あたしは頭を抱えた…
やっぱりこの女ぶっ飛んでるわァァアアア!!

「最初に体を入れ替えたのはエジプトでだったわ…
 アヌビス神の暗示を持つスタンド…剣のスタンドなのだけど…
 物質を透過して切りたい対象だけを切り刻むスタンドでね…
 しかもこちらが反撃をしたらその攻撃を「覚えて」
 次にはその攻撃は効かなくなる…
 あの時はかなり絶望したわね…
 あれだけ「死にたい」と思ってたのにやっぱりそういう状況に
 置かれちゃうと…逃げてるのよ…「死にたくない」って…」

切られてゆく事が絶望じゃない、死にたいと思ってるはずなのに
死にたくないと願う心が…絶望…
…ごめん、あたし貴女の凄絶さの比じゃあないんだけど…
それ凄く判るのよ…

「…判った…判ったわ…信じる。
 つまり貴女は馴染むとはいっても「借り物の借り物」で
 入れ替わった自分の体だから余り「これが自分の姿だ」
 と言う自覚がなかったって事ね…?」

ジョーンはこくんと頷いた。
この女時々かわいらしい行動と言うか…子供っぽいわね?

「…でも一つだけ…その最初に入れ替わったエジプトの女性の体…
 名前もわからないけれど…彼女の体だけは美しいと思ったのよ。
 救いの女神と言うか。 
 そういう状況だったからもあるんだけど。
 ただその後…色々変わって行ったし…
 わたしの元のパーツの残ってる場所っていえば…
 目くらい…かしらね」

あたしはジョーンのこめかみの辺りを両手で押さえた。
ジョーンの優しい目が横に伸びる。
突然あたしがやったことにジョーンは驚いた。

「…多分貴女…そうだとしてもそれなりに美人だったと思うわ。」

PCのふたを開けて、ジタンにメールした。

「ジョーンに見られちゃったわ。
 いろいろぶっちゃけられちゃって、もう大概のことでは驚けない。
 あなた一人で悶絶してなさいな。」

その文面を見てジョーン

「…それちょっと酷くない…?」

「いいのよ、あたしだって彼に誘導されてあの絵を見たようなもんだもの」

送信。

「…と言うことは貴女は元々純粋なイタリア…当時はそんな国なかったんでしたっけ
 そうね、神聖ローマ帝国の時代か…」

「まぁ…自分の住んでた場所が厳密に誰の領土で…とかそんな事
 気にするような年でもなかったし…いいのよ、イタリア人で。」

「…どんなだったのかしらね? 子供の頃の貴女って…」

「…さぁ…余り気にしたことなかったな…」

「なによ…結局貴女…なんだって自覚ないんじゃない…w」

あたしが思わず笑った。
…しまった、笑ってしまった!
ジョーンがそんなあたしを見てすっごい満足そうに微笑んだのよ!

さっきのあの重い雰囲気はどこへやら…だわ…

やっぱりこの女…ジョーンはぶっ飛びすぎててあたしら一般市民が
こまごま考えたずっと上を行ってるわ…

ちょっと呆れたけど…
でもそれでも、思い返すたびに…そして多分これから聞くんだろう
詳細を思うと…そして改めてジタンから報告を聞くことになるんだろう
それを考えると…やっぱりココロが痛むのだけど…。

後でジョーンが調理中に皆に話してやったわよ。
ジョーンがいいって言うから。

ケントは頭が回らないってリアクションだし
ポールは頭を抱えるし
アイリーは混乱してるし
ウインストンは脂汗流してたわ。

ふん、とんでもないものを抱えたんだって皆で自覚すればいいのよ。

そしてそれを越えなくちゃいけないんだってね。

でも不思議だわ。
あんなに遠く感じたジョーンがあたしは凄く身近になった気がしたのよ?

笑った顔も見られちゃったしね。

近くあたしの番ね。
彼女の過去ばかり聞くのも心苦しいから。

…でも、太刀打ちは出来ないかな。

…まぁまたいつか。

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