Sorenante JoJo? PartOne "Ordinary World"
Episode:Six
第四幕 開き
ん?
前の幕ジタンのお話になってたんだ?
じゃあ、ちょっと時間戻すね。
アイリーだよ。
調査開始がお昼前で、解決がお昼過ぎだったのね。
ポールがお迎えに行って
事務所に戻ってきた三人…っていうか
ルナとジョーンが@@;;
「ここじゃあなんだから、部屋に戻って
治療と修復と報告書の作成をするわね、」
ジョーンは結構何でもなさそうに言うんだけど
いや、その、足なくなってるルナはぁ(汗
「いいのよ、まずはBCに向けて「爆弾」落とさないとね。
ああ、ポール、今日は特別、
ケンタッキーでも何でもいいから
肉ガンガン買ってきて。」
「え、鶏肉から体を作るのかね?」
「結果的にはそうだけど、体の中に
材料ためておきたいんですってよ、ジョーンは。」
「ああ、なるほど…」
食欲を満たしつつ、それを直で体の中から
体を作り直す材料にもする、と。
うーん、ひょっとしてジョーンの体があんなぱつんぱつんなのも
「材料」として使いまわす目的があるんだろうか…?
あわわ、あ、でも
「黒幕はBCって判ったんだね?」
あたしが聞くと、ウインストンが
「刺客に送り込まれた奴がそうだったって事さ。
「証拠」であるデータはジョーンが修復中だ。」
「そっか…時間掛かるのかな。」
あたしが何気にジョーンに聞くと
ジョーンとルナはそれぞれのスタンドで自分を支えて部屋を出ながら
「証拠品の一つは結構早いわ。
携帯音楽プレーヤーに入ってた方はね。
全データのインデックスを先ず復活させて、そこから選択的に
音楽以外を直せばね。」
ジョーンの表情は確信に満ちていた。
…なんだか機械のことに詳しくなってるんですけど…w
二人が部屋に戻ったら
「よし、俺とポール、あんたで買い出し行くぞ。」
「む、ああ、いや、肉の方はわたしが受け持とう、
君は飲料やら果物やらを頼むよ。」
「ああ? いやまぁ、どの道…水や水分の多い重いものは
俺が持つことにはなるんだろーが…」
「大した理由ではないんだ、二人で行動するより、
どちらか片方でも早くこちらに戻れるなら
その方がいいだろうとね。」
「…それもそーだな、一緒に行動してりゃどうしても
最後まで一緒に行動しがちだし…
ケント、オメーは留守番な。」
「お…おうよ、ちいせー壁作って修行でもしながら待ってるよぉ」
「感心だね、…ああ、電話についてはジョーン君に任せよう。
アイリーは二人の看病というか、無茶しないように監視というか、
頼むよ、二人とも案外頑固だからね。」
「アイサー!」
仰々しくあたしが敬礼のマネゴトをすると、なんとなく張り詰めた
空気も少しは和らいだか、苦笑に近い笑いで二人とも事務所を後にした。
「んじゃ、ケント、こっち頼むね。」
「おぅ…しかしまぁ…ジョーンもよく怪我する奴だなぁー
まぁオレ達だったら怪我じゃあすまねーのかもしんねぇけど。」
「どんな相手か知らないけれど…多分あたしらじゃあ
もっと大変だったかもねぇ」
数十センチ四方の小さな壁を使い、自分でそれを殴って
衝撃を受け止める壁とかそういう訓練してるケントを横目に
あたしも部屋に戻った。
「…ええ、とりあえず今から音声データを送るわ。
その音声の有用性に関しての判断は貴方達に任せる。」
…戻るとベッドに寝てるでもなく、着替えるでもなく
そのまま二人はソファに怪我した部分が痛くならないように
座りながら(ルナは半分寝ながら)ノートPCやらでジョーンが
色々操作して、ルナはその画面を見てジョーンに手つきで
指示を出しながら電話してた。
「二人とも…! せめて着替えてベッドに入ってよぉ!」
ルナは電話を切りながら、
「ああ、ごめんなさいね、でも半端はいけないと思ってね。
どの道データ再生が優先であたしらの修復治療は後だもの、
今のうちにやっておけば明日の朝には爆撃完了だわ。」
「ベッドの上でも出来るでしょぉー?」
「出来るんだけど…あたしとジョーンのベッドって
貴女を挟んで両端じゃあない?
オーディナリーワールドの射程が短いから
それだときついのよね。」
「いやぁ…あたしのベッド貸すよぉ。
ベッド二つくっつければお互いがベッドの左右両端に
寝返りを打っても届くでしょ?」
「…うんまぁ…それはそれで…ジョーンに寝ぼけられると
ちょっと怖いかなって…」
ルナのトラウマに関わる事ではあるのだけど、
でもルナはそれを乗り越えようとしているのか、
あえてちょっぴり冗談めかして言って見せた。
それまでメモリーカード一点を見つめて「修復」してたジョーンが
「…大丈夫よ…」
集中してるのがわかる、あまり感情とか感じないフラットな言い方だけど
ちゃんとあたし達の話を聞いてて、それにとりあえず答えた、
そんな感じだった。
「寝ぼける寝ぼけないなんて断言できるものじゃあないけれどね。」
「…でもそうしてもらわないと確かにオーディナリーワールドの
射程ではいつもの寝る場所ではちょっと困るのよね…」
喋りながらもジョーンはオーディナリーワールドを介して
何か直でデータを読んでいるかのような雰囲気だ。
「うん…だからさぁ、ルナもぉ、事件のこと教えてくれない?
何でそんな怪我するに至ったのかって。」
ジョーンはともかくルナも結構普通に喋ってるからあたしもちょっと
ついつい事の経緯を聞いて判断したくなっちゃった。
「ん〜…まぁ、じゃあ…」
ルナにしては珍しく躊躇しながら話してくれたわけ。
「…そういったわけでね、あの場であたしへの監視がゆるかったっていうのと
普段ジョーンがメチャクチャしてくれるから…
じゃあ、あたしがやってやろーと…」
「…気持ちはわかるんだけどさぁ…やっぱやりすぎだよ…
下手したら即死じゃない?」
「…だったかもね、でも、今回の仕事はそれなりのリスクがあった仕事よ。
あたしはやりすぎたかもしれないけれど、間違っては居ないと信じてる。」
ルナのその表情はとても強かった。
「…歴史に「もし」はないわ…確かにルナの作戦は
無茶ではあったけれど、彼女の考える範囲内で「成功」だった
…これは紛れも無い事実なのよね…
…ん…これだわ…肝心のインデックス部分が修復しきれてなかったんだわ…」
ジョーンは集中しながらルナに
「ルナ、もう一度電話して…。」
「ん。」
「…そういえばさっきも…どこに電話してたの?」
ルナは電話を左耳にあてつつ
「…出版社よ、そこから新聞社にも手配するようにしてる。
ああ、先ほどはどうも…「疑惑」のもう一つのデータが今…」
ジョーンが最終確認をしてメモリーカードをPCの差込口に入れて
ルナの方に画面を向けた。
ルナが右手で中身の確認とメールへの添え付けを操作しつつ
「…ええ、送ったわ。
まぁちょっとした爆弾でしょ?
…ええ、探り当てたのはあたしじゃあなくって
カールトン=ベイリーズよ。
知ってるでしょ?
親子二代で事件を追ってて…ええ、不幸にも
彼らは亡くなったけれど、その証拠は紛れも無い事実よ。」
あたし、ジョーンの耳元でこそこそと
「…でもジョーンならデータ書き換えることも出来るでしょ?」
「…やってないわ、信じて」
ちょっといたずらっぽくジョーンが言った。
出来るとも出来ないとも言わず、やってないっていった。
やっぱやれば出来るよね…(苦笑
電話を終えたルナは、やっと一息ついた。
「…ふぅ…意外に早かったわね、ジョーン。」
「カードもプレーヤーもそうだけど…
先ずフォーマットの形式で幾らかある程度
決まったデータの並びがあって…
後はビットの八倍のバイトである程度
文字の羅列の癖を読み取れればね、」
「うひょ、わかんないなぁ…」
あたしが思わず言うとルナが
「…でもホラ、こんな風にジョーンは10億ピースのパズルに
ある程度パターンやショートカットを見つけて
ピース数を減らしてるんだっていうのは判ったでしょ?」
「…あ、う、うん。」
「あら、そんな話をいつしてたの?」
ジョーンが立ち上がり、寝室の方に行きあたしに一言言って
ジョーンのベッドをあたしのベッドにそばにぴったり寄せる作業を
オーディナリーワールドとやり始めた。
あたしも慌てて加わった、
だって今ジョーンもオーディナリーワールドも左腕無いじゃん><;
「…貴方が左腕と右足首とお腹を吹っ飛ばされて帰ってきた日よ。」
「…ああ…それにしてもルナ…わたしが何百年もかけて
理解してきたことを貴女はこのふた月ほどでよく…」
「…でも正確には判らないわ、ジョーンだって正確にはまだ
理解しきれてないはずよ。」
「…ええ、」
「貴女が理解しているよりあたしが理解することはないわ、有り得ない。」
「…でもなんだかこう…
色んな特技や知識や能力を持った人がそばにいると…
やっぱり道は大きく早く開けるものね…」
深く納得したかのようにジョーンが一つため息のような息をついて
ちょっぴり微笑みながら言った。
その時腕を組もうとしてうっかり左腕がなくなってることを
忘れてたみたいで、左腕の断面が自分の胸に当たって
「痛っ…」と小さく言った。
そんなうかつなジョーンにあたしらはちょっぴり和みつつ、
「さァ、ホラホラ…二人とも今度はちゃんと寝る!」
「…ああ、ちょっと待ってよ…アイリー…
先ず食事がとりたいわ…」
「寝てたって食べられるでしょー?
二人とも、パジャマに着替える!><」
いつになくあたしが強く言うものだから
二人とも観念したように着替えだした。
そんな時に先ずウインストンがドアを開ける。
「おい、とりあえず飲みモンと果物だ、しっかり食っとけよ!」
…いいんだけど、
「ウインストン…ノックくらいしようよ…」
ルナはカーテン閉めてベッドの上だけれど、
ジョーンは割りとお構い無しにその辺で着替えちゃうのね。
ジョーンの腰巻の下はぱんつだけど、実は二重で
普通のぱんつっぽいのの下に紐と三角の小さなのはいてる。
今正にそれになってるとこ。
ウインストンは照れるでもなく「ああ、見ちまった…」
と、普通に後悔するみたいに帽子のつばを深くして
「緊急だからな…つい、スマン。」
片手で謝りつつ、テーブルに買ってきたものを置いてった。
ジョーンはジョーンで恥ずかしがりもせず買い物袋の中を検めて
「…ん、あるわね…」
ウインストンお構い無しでジョーンはレモンを二個
右手に持つと、グラスと蜂蜜を持ってきて
同じく買い物袋の中のミネラルウオーターを使い
レモネードを作った。
…片手なのに器用だなぁ…w
(レモンを絞るのはオーディナリーワールドがやってた)
「って言うか、ジョーンも少し気にしようよ…(汗」
あたしが言うと
「ウインストンはわたしじゃあ単純に「見たらまずいもん見た」
ってくらいじゃあない?
ルナ、とりあえずレモネードだけど、いいかしら?」
ジョーンが寝室に入る。
ルナがカーテンの奥から
「貴女もホントレモネード好きね…あたしも好きなほうではあるけど…
果物あるならサツマ(みかん)ない?
同じ柑橘でもあたしあれ好きなのよね。」
「サツマはなかったわ、あれも一時期はやったけれどね」
「そっか…どーりでこっちで見かけないと思ったわ。
とりあえずありがと。」
なんて会話が普通に進行してる。
「…これだもんな…俺にとっちゃやっぱ「気の置けない姉」だよ…」
ウインストンが脱力気味に言う。
「…い…いやまぁ…w
そーなんだけど…一応礼儀で…ね?」
「ああ、スマン、これがお前だったら俺は床に穴開くくらい土下座だった。」
「そこまでしなくていいけど…w」
ウインストンの後ろから恐る恐るポールも顔を覗かせて
「大丈夫かね? お待ち兼ねのフライドチキンそのほかだよ。」
あたしが許可を出して中に入ってもらう。
リベラも匂いに釣られて入ってきたよ…w
「今日は少し君にも上げようか」
とか言いながらポールは中から一つ取り出し、ほぐして
冷ましてからリベラに上げたりしてる。
「…ところで首尾はどうだね?
様子からすると既に終わったようではあるが。」
ポールもやっぱり経験豊かだねぇ。
部屋の状況見るや大体終わったと察したみたい。
「…うん、もう出版社にデータ送ったって、
マリーナさんにはまだだけど。」
「…それは私が連絡しておこう、メモリーカードとプレイヤーを私に。」
あたしがPCのところまで行き、ルナに一応もういいのか訪ねて
ポールに渡す。
「損害は多大とはいえ、ジョーン君がいればほぼゼロに出来てしまう
損害なのだなぁ…さて、これで幾ら請求したものだか。」
「…ゼロに近くできるって言うのはあくまでそういう能力があるからだ。
リスクを負って命がけで獲得したことに変わりはねーよ。」
「そうだね、優しさや温情で安くしててはいつまでもうだつが上がらん。
こないだの…カプリ氏の時を参考にするかね。」
「6000か、命の値段にしちゃ安いが…まぁ…そこは相手も個人だからな。」
あたしにもこの値段が高いのか安いのかさっぱりわかんない。
でもいっこだけいえるかな
「…わかんないって事は、ある意味妥当だと思うよ。」
うん、安くしたげたいよ、でもそんなことやってたら
あたしらまたダメ企業に戻っちゃう。
これからどんなことが起きるか、どんどんやばくなるのに
何をするにしても、先立つものが無くちゃね。
「うむ…それでは…まぁあくまで6000を参考に色々考えて
結果を報告するとしよう、ああ、二人には良く休むように
言っておいてくれたまえ。」
「あ、うん」
あたしが言うと、寝室からジョーンが戻ってきた。
流石にパジャマ着てるんだけど、上ボタンとめてないし…><;
ポールは思わず目を手で覆った。
「ジョーン君…目の毒だよ。」
パジャマの下は勿論裸だからね…
「ああ、ごめんなさい、片手だとどうしてもこの辺がね…」
とか言いつつ、あまり気にしてないかのように
果物、水、お肉、片っ端から手に持って
(オーディナリーワールドも使って)
「ちゃんと休むわ、あるいは今度は向こうも
判りやすく近く報復があるかもしれないしね。
二日以内には9割回復できるようにするわ。」
和んだ雰囲気でもジョーンはやっぱり気は抜いてなかった。
その辺流石だなって思う。
「…報復はあるかもしれないが、あるいは「あらかじめ」
情報を掴みやすくしていた可能性がある、
敵が一人だったことを考えるとどうにも腑に落ちんのでね。
…だとすると、今回のダメージもトカゲの尻尾きり的に
済ませられるのかもしれない。」
「…ジタンがまっとうに活躍してるからな、
そういう部分だけ残してって可能性はあるよな。
案外でんと構えてまた一週間ほど開くのかもしれねぇ。」
「だとしても、「逆恨みによる襲撃」には備えないとね。」
ジョーンが片手でボタンを締めながらウインストンの言葉に答えた。
(あたしも慌ててボタンとめるのてつだってあげた)
「そうだね、うむ、まぁ、早いに越したことは無い。
しっかり休んでくれたまえ、お疲れ様だった。
リベラ君、ちゃんと二人を休ませるんだよ? いいかね?」
ポールがしゃがんでめったに食べられない鶏肉のご馳走を
すごい勢いで食べてるリベラの頭を撫でると
リベラはポールを見て、鳴きはしなかったけど
何か言ってるような雰囲気をした。
判ってるのかわかんないけど、ポールも
「よしよし、頼んだよ。」
と言ってる。
男連中は女部屋を出ていった。
あたしもなんかちょっと一息ついて
少しご相伴に預かりながら二人のベッドに。
「…だからひょっとしてさ…貴女の能力なら
人類が今の技術力じゃあ検証できないような
高エネルギー状態も出来るんじゃあないかって思うのよね、
あるいはそこから生まれる「予想された新粒子」の生成とか…」
二人はクッションを枕の上において緩やかな背もたれにしながら
半分体起こしてルナがなんか難しそうな物理の本とか持ち出して
ジョーンに詰め寄ってるんですけど…;
オーディナリーワールドは黙々と二人を治してる。
ああ、勿論二人は忙しく食べたりしながら
ジョーンが口の中の物を飲み込んだらルナが食べ始めつつ
ジョーンが答えるって感じに
「出来るのだけど…意味が無いのよね…
スタンドでそういう状況作りました、では追試も出来ないし
あるいは洒落にならない状態巻き起こす可能性も考えると…」
「じゃあ、やった事は無いのね。」
「人類が到達したよりちょっぴり上のエネルギーレベルまでかしらね。
安全がまだ確率的に高く保障される程度…」
「…そうよね、そっか…やっぱり
あなたが知れば知るほど使い道が無限に広がる替わりに
あなたの選べる道は確実に狭まるわけね…。」
「それがここ数十年のわたしの勉強の成果ね、
それでも知れてよかったけれど。
何も知らずやってから後悔するよりはいいわ。」
「やっぱり使いどころが難しいわね…」
「でもニトログリセリンは助かったわ、覚えておく…
状況を変えるのに、あれなら量と威力を調節できるし…」
「…に…ニトロ?」
あたしが思わず口を挟む。
「今回の切り札よ、まぁ量と威力をというなら
他にも色々手はあるけどね、気体は…毒ガスは
風に流される可能性とか考えてどうしても出来ないって
ジョーンが言うからね。」
「ルナ…結構怖いね、」
「貴女も死ぬか生きるかのこう着状態に置かれてみれば
考えちゃうわよ、きっと。」
「…(あたしは首を横に振りながら)なるべく穏便に…
って向こうはそんな願い聞いてくれないよねぇ、」
あたしが神に祈るようなポーズをおどけてとって見せると
二人とも和んだ。
あたし無神論者ではないけれど、熱心でもないからね。
さて、二人とも食べ終わったね?
でもルナは
「…それで、ジョーン。
あなたの能力だと…」
また別のページめくってジョーンと話す気満々で居る。
ジョーンも自分の能力を理解してくれる人は嬉しいらしくて
聞く気答える気満々で居る。
「二人とも…(- _ -;」
呆れたようにあたしが言う。
「いいじゃない…もう少し…」
ルナがなんかちょっと駄々っ子だよー!
あたしはカーテンを抜け、リベラを連れてきた。
リベラを二人のくっつけたベッドに乗せると、
ルナの左足の無い部分が膨らんでない毛布、
ジョーンの無い左腕の部分のひらひらしたパジャマ。
リベラはリベラなりにその異常事態に
何か文句言いたげな雰囲気。
「大丈夫よ、リベラ。」
ジョーンが体を起こしてリベラの頭を撫でる。
…と、目の前にリベラのスタンドが。
「リベラ…」
「いいよ、リベラ、寝かしちゃいなさい」
あたしが言うと、アイムオンリースリーピングの声が響く。
ルナもそれを見てたから
「ちょ…っ…なにもこんな…」
言いながら二人とも寝た。
あたしはリベラの後ろだから、当然大丈夫。
オーディナリーワールドはジョーンが寝てても
活動できるから彼女がちょっとビックリしてる。
「頼んだよ、寝てるほうが治しやすいでしょ?」
「ア…アノ…ハイ…」
大きくあたしは頷き、
一仕事終えたリベラを撫でながら
「よしよし、いい子だよ。
ご褒美にもう少しチキンあげるね。」
寝室を後にした。
あたしだってやる時はやるんだから。
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二日経った。
アイリーったら急に強気になって
あたしらが起きたと思ったらまたリベラのスタンドで
強制催眠とか…ちょっとやりすぎだわよ…
ああ、やっぱりあたしが〆ってことになるのね。
ルナよ。
…それはそれとして体が痛いったらないわ…
寝返りくらいうたせてくれたっていいのに…
…ジョーンは先ずあたしを優先的に治した。
うん、まぁ…寝てる間のことだから
遠慮することも出来なくってね。
二日経って起きたときにはあたしのフュースモールリペアーで
仕上げるのみになってた。
…ジョーンのほうはまだやっと繋がったところね…
それでも数センチを残してとりあえず表皮まで埋められる。
彼女はまだ寝てる。
…っと…痛…やっぱり九割五分の回復ってところね…
ゆっくりあたしは先ずシャワーを浴びて
…とはいっても、オーディナリーワールド、たいしたもんだわ。
皮脂の汚れなんて出ない。
使えそうな物は再分解して再構築する。
とはいえ、どうしても余るものもあるわけだから、
ジョーンはそれでお風呂にだけは入るって訳。
その人間離れした効率のよさをあたしも今回味わったわ。
二日経ったってのにお腹もすかないし喉も乾いてない。
勿論…その、ね。
トイレも必要ない。
…六百年全てとは言わないけど、殆どの年月を
こんな感じで過ごしてきたのか…
着替えて、事務所に顔を出す。
「やぁ、ジョーン君の言うとおり二日で動けるようになったねぇ。」
ポールが言うと、皆も口々に快気祝いというか、
アイリーがやっと強気からいつもの感じに戻って抱きついてくるんだけど
「ああ…痛たたたッ!
全快って訳じゃあないのよ…松葉杖とかない?」
「そんなんあったっけかよぉー?」
「俺はまったく覚えねーけどな、」
「松葉杖は無いね、管理人さんの使ってた杖ならあるが」
「それでもいいわ…ああ、捜査はともかく、報告書の作成は
するから、部屋にこもるわね。」
「ゴメン、ルナ…大丈夫?」
「…悪化はしないと思うから治りかけの痛さ…ってところね…大丈夫よ。」
アイリーに支えられて部屋に戻ると、浴室から音がする。
寝室を見ると、ジョーンが居ない。
「ジョーン、貴女大丈夫なの?」
思わず無事かを確かめるのに浴室のドアを開けて中を見る。
…同性とはいえ、その辺はやっぱり礼儀ってものがあるからね、
でもジョーンは浴槽につかるタイプだから、まぁいいかなと。
ジョーンは左腕をお湯につけないようにしてたんだけど
その腕をちょっと高く掲げて
「…後は表皮だけ…というか八割くらいで「とりあえず」だけれどね。」
「…自分こそ十割近い回復にしときなさいよ…たまには」
そういいつつ、筋肉や腱が丸見えの腕をそのままにするわけにも行かず
フュースモールリペアーで治す。
「…どうやら近い報復…または次の仕掛けはないようよ。
だから…ゆっくり…半分自然に治すのもいいかなってね。」
ジョーンが治った左腕を満足そうに優しく洗いながら(痛いからね)
浴室の外の棚の上を視線で示した。
新聞がそこには入っていた。
何紙も。
「いつの間に…?」
「新聞のデリバリーなんて普段なら有り得ないけれどね
オーディナリーワールドに情報集めのために電話かけてもらったわ。」
「…」
なんていうか、二人合わせて24時間稼動してるようなものね…
それほどまでに気を抜けない生活送ってたって言うの…?
…ともかくもあたしとアイリーがそれぞれ新聞を見る。
…なるほど、向こうも…BCも防御策を色々講じてはいたけれど
情報が出るのが…つまりあたしらがちょっぴり早かった…
大混乱みたいね…
責任の所在とかなんとか。
…まぁ大ダメージにはならないにせよ、なるほど、
今はあたしたちどころじゃあない…ってわけね。
「…気は抜けないけれどね、ただ、ビクついてても
しょうがないって思ったのよ。」
ジョーンはいつの間にか浴室を出ていて、タオルを体に巻いたまま
左腕の慣らしついでに調理を始めていた。
「…ん…力のはいりが悪いわね…」
「余裕がありそうなら、ちゃんと治そうよ…ジョーン。
傷口はふさがってもジョーンなら中を治すことも出来るでしょ?」
アイリーが声をかける。
「また魂抜け出そうなほど気を抜いちゃいそうでね…」
ジョーンがつぶやく。
あたしはそれを見た。
…確かに…こっちの胸が締め付けられそうな…
そんな瞬間だった…。
「…まぁ…少しは緊張も解けるというなら…
うん…いいんじゃあないかしらね?」
あたしが珍しくそんな風に言うと、アイリーは
「う〜ん…しょうがないなぁ…でも、無理はダメだよ?
次もし何か戦いになっても、もう進んで怪我をするような
真似だけはしないって、あたしに誓ってよ。」
あたしはジョーンを見た。
「…誓うわ。」
嘘か本当か、判断のつかないジョーンの語り。
でも、ジョーンだって生活に不便を強いられるわけだし、
実際皆にだって影響はある。
感情を表に出すと泣きそうになるから、そんな風に
あたしは受け取った。
「うん、ルナは?」
えっ…あ、そうか…今回はあたしもか…
「そりゃぁ勿論よ…でも…」
「でもじゃない! 例外は「不意打ち」だけ!」
あたしら二人飲まれた雰囲気というか。
何かアイリーが強くなって行って戸惑っちゃう。
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それからちょっと経つ。
ああ、数時間とか、そんな感じね。
ウインストンやケントが仕事に出つつ、
それとなく尾行や監視にも気を配ったそうだけど、
とりあえずそんな雰囲気も無いそうだ。
ただ、街を歩く時にすれ違ったBCの奴らの憎悪というか、
「すれ違いざまの一発」は前より激しくなった、とのこと。
ただね、ケントの壁がその一撃を受け止めて
そのままの勢いで相手に返す、そんな小技を
身に付けたから、「もうなんてこたーねぇーよ」
なんて切り捨ててる。
アイリーが忙しく事務所で探索をしつつ、
電話でその結果を二人に指示、
あたしは部屋にこもって報告書を作成してた。
ジョーンは食事の後片付けやなにやらの後
「リハビリついでに買い出しに出てくるわ。」
と言っていなくなっていた。
まぁ…街中で油断するとも思えないし、
だけど一応あたしの携帯を持たせてある。
「何かあったら何が何でも電話をかけなさい」
そう念を押して。
…でも何時間経った?
リハビリを兼ねてって言ってたから、
ひょっとしたら多少スタンドを使った修行も
してるかもしれない。
判らないけど…
そしてだいぶ夕方になってからジョーンは帰ってきた。
なにげな顔をして。
調理で戻ってきたジョーンはあたしに携帯返しながら
「…個人的に調べ物をしてたわ、結果については調査中
…だから守秘するわね。」
「…ずるいわね…そういやあなた以前のデパート事件の時に
そんな事言ってたわ、それって貴女本当に個人ごと?
それともひょっとしてあたしらに関係ある?」
「…さぁ…まだなんとも言えないわ、だから守秘というか
言うほどのことでもない…って事なんだけれど。」
たくさんの野菜や根菜やハーブに魚。
いつものメニューに戻るわね、ジョーンは普通に答えながら
材料を洗ったり、調理を始めた。
…その何気な態度と口調…
真実と嘘が絶妙に入っている。
…でもまぁ…確かに本当に個人的調べもので
かなりのプライベートが絡んでいる可能性はゼロじゃない。
気にならないといったら嘘になるけれど、
突付き回すとそれはそれで築いたものが壊れそう。
「…まぁ何してたかを言ってくれるのは嬉しいわね、
いいわ、たかが買い物に4時間かかったのだとしてもね。」
何で皆疑問に思わないのかしらね?
「リハビリがてら」って言葉かしらね?
それともジョーンのプライバシーをそんなに気にするあたしがおかしい?
ジョーンの何気ない一つ一つに意味を求めてる?
なんだろ…あたし、ヘンかも…
「寄り道しすぎちゃったわね…まぁもっと深追いやれば
しちゃってたのだろうけど…
ルナに「深追いしすぎる」って指摘受けたばかりだし、
これでも結構いいところで切り上げてきたのだけれど…」
「…貴女も携帯くらい持ちなさいよ…
アイリーのベイビーイッツユーは身内の所在を
探すためには基本的に使わないってお約束があるんだから。」
「…ベイビー・イッツ・ユーは凄いスタンドだわ…
彼女がそれでも地味な探し物にしか使わないって言う
自制心も尊敬に値する。
いたずらに社会を引っ掻き回さない…
アイリーって、実は一番大人かもね。」
携帯電話の話題からは逃げたわね…
やっぱり苦手なのかしらね。
「…あたしも最近特に思うようになったわ。
いつもバカバカあの子に言ってたけど、
あの子の強さはあたし本当は尊敬してる。
羨ましくもあるわね…」
…ああ、なにかしらね、何かなんでもない話題がどんどん
別な方向に向かってゆくわ。
ジョーンの作戦?
それとも乗るあたしがお人よし?
でもなんだか、ジョーンも何気ない話題を
あたしと話すのが…これはかなり本気で
楽しいみたいよ?
まぁ…今の今まで…故郷を飛び出してからの580年強
友達とかもそうそうは居なかったんだろうし…
同じスタンド使いで…ジョーンの能力にも
結構突っ込めて、
ジョーンってばあたしに親しみ感じてる?
うん、まぁ、
素直に嬉しいかな。
隣の事務所から、わざわざ携帯でアイリーとケントが
「お腹すいたコール」を何でかあたしによこす。
なんであたしなのよ?
思いながらも、ジョーンをせっつくあたしも
配膳を手伝わされたりして、でもそれがなんだか
ちょぴり嬉しい。
我ながら、あたしも変わったんだなって思う。
どんどん気は抜けなくなってゆくけれど、
あたしらの結束はどんどん固まってゆく気がする。
そんなあたしらに待ち受ける次なる出来事は…
まぁ…それはまた今度ね。
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