Sorenante JoJo? PartOne "Ordinary World"

Episode:Ten

第六幕、開幕


エレベーターでの中。
ミュリエルはジタンに疑問を投げかけていた。

「またどうして…K.U.D.Oを離れたのだ?」

「…あの会社…今年初めまでインフラ料金すらまともに払えるかどうかって零細だったんだぜ?
 俺は自分の力を活かして仕事がしたかったんだ。
 多少ダーティーでも構わないとも思っていたからね、そもそも探偵業は
 法の杓子定規に触れたり外れたりを行ったり来たりする面のある職業なんだからさ」

「そんなに暇だったのか?」

「自分から余り売り込みもしないし…確かに当時から仕事は確実に処理してたんだけどな
 …何か何処かしら…覇気のないというか…運命に任せるにしても身を委ね過ぎなのでは…
 と、思っていたのさ。
 そうしたら…彼女が…ジョーンが現れて少しずつ空気を変えていった」

「…どのように?」

「そうだな…本人達も幾らか語っただろうが…俺の目から見ると…
 ジョーンは「向上心は大切だ」といつも思っている、そして、今それを必要としているのだ
 という人物に引き合わされやすい体質というかな…そういう運命なんだと思うよ
 …結果は、この通りだからな」

「それで…貴方は戻らないのか?」

「戻れないんだ」

ジタンは先ず、ミュリエルの部屋に付き合って(最上階)廊下を歩きながら

「ジョーンってあの通り…謎めいているだろ?
 社としてライバル会社の変化を調べる名目もあったし、調べて回ったよ
 …俺は忘れられないね、彼女の存在を知った時のプレジデントの笑い…
 そしてその事を知った時のジョーンの笑い…
 あの二人には因縁がある、とてつもない因縁が…」

「どういう?」

「そうだな…プレジデントはジョーンという獲物を追うハンターだったのさ
 …ただし、その切っ掛けはもうもの凄く昔だけどな…
 …俺は…奴の能力も知っている…奴を…どこかで止めなければと思っている
 だからK.U.D.Oには戻れない…ただ…社の方で多少業務改善があるから…
 出向という形で世話になることはあるかも知らん」

「止めるってどうやって?」

「さぁ…射程もそれなりに広いし…有効打を与えにくい奴だから…
 それで…ちょっと隙を窺っているんだ…まぁ…K.U.D.Oの奴らも腕を上げているし…
 一種の「挟み撃ち狙い」って所かな?」

「それは…避けられないのか?」

リベラを抱え、今度はミュリエルがジタンの部屋まで送りつつ

「避けられないだろうな、…もうお互いに居場所を知ってしまったからには…
 いつか奴はジョーンを食いに来る」

「食う?」

「奴のスタンドは食うスタンドだ…特に本体諸共で食えば奴はそれを消化し
 少しばかり若返って…そして…食ったスタンド能力も少し手に入れられる
 …ジョーンと奴の因縁だけの話じゃあない…そんな奴を…野放しには出来ない」

ジタンの部屋の前だ、ジタンは扉を開けつつ

「…とはいえ…別に奴も今日明日とは思っていまいよ、こういうのには
 タイミングというか「機」というものがあるからな
 一つだけ言う、俺や…ダビドフには今後ロンドンでは…あまり接触しない方がいい
 君の能力は…奴にとっても欲しい物…だから俺は君が運命という抗いがたいものの中で
 彼らと先に出会うことを待ち望んでいたんだ」

「会っちゃいけないのか?」

「奴のお膝元なんだぜ、君の能力を奴が知ったら…俺は全力で君を守るが
 正直俺の能力は奴をきちんと追い詰める時に使いたい」

「…そうか…私は強くならねばならないな」

「だが…そう焦ることもないさ…ただ…磨ける機会があったら
 磨いて置いてくれ…君の能力は素晴らしい、そして、恐ろしい」

「わかった」

「じゃあ、お休み」

「お休み」

12才の少女にはまだ少しばかり早いプレッシャーだったかな…とジタンは思いつつ
眠りにつく準備を始めた。

ミュリエルはちょっと寂しいなと思った。
凄く格好良くて優しい人なのに、少女らしい思いを胸にエレベーターまで進んだ頃
一旦下に行っていたらしいエレベーターがこのフロアで止まり、扉が開くと

「お、ちょーどよかったぜぇー」

K.U.D.Oのメンツの他、両親もそこにいた。

「ジタンとミュリエルが最初に会ったきりっていうから話したいこともあったろうって
 ケントの読み、当たったな」

ウインストンがエレベーターのスイッチを押しながら、ミュリエルを促す。
階層下からジタン・K.U.D.O・モア一家のようになっているので上に行くついででもあった。
ミュリエルの手に持つ籠のリベラがジョーンの匂いに気付いて甘えた声を出す。

ジョーンはリベラをミュリエルから受け取り撫でるとリベラはベタ甘モードになり
ジョーンもそういう無条件の愛情を受けることが心地よいのか「二人だけの空気」だ。

「皆は当初の予定通りあと三日で帰るのか?」

ミュリエルがそんなジョーンとリベラを見つめながら質問した。

「そうだね、アナウンスではそのように予定してしまったし…
 また次の機会にでも今度こそゆっくり休日を楽しむことにするよ」

ポールが言う。

「まぁまぁ、それでもあと三日あるんだからもうここからは思いっきり羽伸ばそうよ」

アイリーが元気よく言うと、皆頷いた。

「その為にゃあ…先ずはがっつり寝ないとな…」

ウインストンの言が漏れた頃にはエレベーターは一旦再び最上階に上がり
モア家の三人と改めてお休みを言い合い、K.U.D.Oの六人と一匹も部屋に戻った。



全員で固まって行動する事もない…と思いつつ、それは買い物なり食事なりであって
お互いがどこに行きたいなどの希望を述べれば大体「それも体験してみたい」となって
結局はほぼ行動は一緒であった。

スポーツクラブというか、そのような施設でテニスなりを楽しみたいとウインストンが
ジタンを誘えば、アイリーもやったことないけどやって見たいとなるし、
何故かポールも学生時代にはやったことがあるのか結構ノリノリだったりしたのだった。

単独行動だけは一応ヤバいと言うこともあって、このようにメンバーの半分ほどが
意見の一致を見ればそのように団体行動になってしまうのである。

ちなみにウインストンもジタンもなかなかテニスの筋が良く
「ラケット」という自分の体を越えるリーチの道具を使うと言うことで
やはりジョーンはテニスが下手であった。
どうせちゃんとした試合というわけでもないしと素手をラケット代わりにすれば
上手いというヘンな特技まで披露していた。

スポーツが万能そうなジョーンがその有様だとケントやルナもちょっとやってみようとなって
結構いい汗をみんなかくのであった。
勿論、その場にはミュリエルやモア夫妻も居て共に楽しんだりもした。

ジブラルタルは陸地こそ主に開けているのは西側だが、波が穏やかな東側に
海水浴場もあるので、そこで今度は一寸思いっきり泳いでみたり、
特にウインストンとジョーンはかなり本気で泳いだりしていた。
(技術差でジョーンの圧勝なのだが、テニスでの借りとばかりに
 テニスでは一切手を抜かなかったウインストンに対し一切手を抜かなかったジョーンであった)
ルナはちょっと敏感肌の面があり、日焼け止めをがっつりと塗り込み
今度ばかりは海に入るのは拒絶したのだった。

それにしても、ジョーンはその体格やプロポーションからも目立った。
泳ぎの技術的にもそうだが、先のプールよりも伸び伸びと泳ぐ彼女はまるで
海が生来の住み処であったかのように優美で優雅であった。

食事も朝と夕食のみホテルで、昼はジブラルタルをぶらついて何となく決めたところで
食べると言った、緩くも旅行気分を味わった。

小粋はたまに一行の側にあり、散歩やThe Rockへのトレッキングコースに参加したりもしていた。
もう、一般のホテルに忍び込むこともないだろう、その旨はホテルに伝えて約一週間の
ホリデーは終わったのである。

モア一家は後二日ほど滞在すると言う事で、K.U.D.Oの六人+一匹とジタンが先にロンドンへ戻った。



ロンドンに着いてジタンと別れ、彼らの住居に帰ってまずは全てに異常がないかを確認し、
それぞれの荷物を置いてまずは留守中に入った依頼などのチェックをした。
この日は木曜であり、金曜を先ず仕事に充ててから週末に全ての疲れを落とすことにはして居たのだ。

そしてルナが自らの携帯でミルデに電話を掛けた。
それは当然、仕事の結果についてである。

「ああ…ミルデね、ええ、仕事は終わったわ。
 ただ、もう結構遅いし明日は通常営業の予定なのよ、なので土曜辺りに報告
 させていただけないかしら? ええ、報告書も依頼であるからにはまとめて提出したいし」

どうやら、その旨了解を得たようである。

「…さぁ、まだホリデーシーズン中だからそれほど強烈な仕事数ではないが
 ちょくちょく依頼は入っているようだし、ではみんな、明日に備えて休もうか」

ポールの一言で、その場も解散となった。

籠の中という環境から解き放たれたリベラは元気いっぱいだった。



金曜…その日はなかなかに忙しく、ポールにも午後から予定が入ってしまい、
ルナ組(Withジョーン)とウインストン組のいつもの二班の他にまた無人の瞬間が訪れる。
とはいえ、だ、一週間の留守にも何もなかったし、多分大丈夫だろうとリベラの食事を
軽く与えようという時だった。

電話だった、それも王室付けの者からであった。
どうも休みを取っていた一週間の間に何度か直接来たらしいのだが、留守続きで
(確かに事務所に張り紙などはしては行かなかった)この日電話での確認と言う事であったようだ。

ポールはすっかり高揚し、珍しく緊張を感じる言葉で軽い営業トークなどをした。

『依頼については…そうですな、その時が来ましたら…本日は…先の王室由来の資産を
 発見してくださったことに関して宮殿の方で改めて礼を…と…本日これからはいかがですかな?』

それは困った…

「申し訳御座いません、大変名誉なことですが、私もこれから私にしかできない
 仕事が入っておりまして…」

…ただ、ふと思った。

「…しかし、見つけた本人と我が社の副所長が現在共に行動しておりまして…
 彼女たちを窺わせていただくというのは如何な物でしょう」

『なるほど…全員をお呼びして…というわけには参りませんか、本日はこれからしか
 時間がとれませんので…後日また改めて全員をご招待した方がよろしいですかな?』

「実はホリデーが終わって直ぐ今日の仕事ですので…少しの間仕事に調整が
 必要かも知れないほど、先が読めないのです…
 申し訳御座いません、我々もロンドンの小さな…一般の人々のささやかな
 力添えのために働いておりますので…ただ、副所長と…先の税務署で
 同行させていただいた者については今から調整が出来ます」

『判りました…では…』

彼はランバー・ジャックと名乗り、ポールはルナとジョーンが伺うことを伝えた。

そして、電話が終わってから、事務所の電話で

「…ああ、ルナかね? ん? いやいや、追加というか…二人で寄って欲しい所があって…
 うむ、それで午後一杯潰れる可能性もあるだろうから、ウインストン組の方に残りの仕事は
 明け渡して構わないよ」

『で、どこに行けばいいわけ?』

「バッキンガム宮殿」

0.5秒ほどだがルナが固まった。

『は?』

「依頼ではないようなんだ、この間の礼…と言っていたし、まぁ担当官からご苦労と言われる程度かも
 しれないのだがね、二人で行ってはくれまいか」

『…こんな急に? あたしら二人だけでいいわけ?』

「どうも、ホリデー休暇中に何度かご足労賜ったようでね、近日中だと今日これからしか
 時間が空けられないそうだよ、私も今から交渉の仕事が入っているし、
 見つけた本人であるジョーン君と、副所長である君なら大丈夫かなと思って…
 既に話は通してあるよ、後は探偵免許と共にその旨伝えれば通してくれるはずだ」

『なるほど…参ったわね…まぁ…でも判ったわ、失礼のないようにはする』

「しょうがないね、多少至らないところはあったとて全てはいきなりだったで
 流してくれると信じようではないか、うん」

『まぁ…王室とはいえ陛下と直で会うでもなし、恐らく担当官とか或いは
 国防省のスタンド担当とかそう言うメンツでしょうし…あわよくば売り込んでみるわ』

「ああ、そうして呉れ給え」

電話を切って、今度はルナ班の進捗具合をウインストン班に伝えつつ、急な用事で
残り二件ほどを引き継いで欲しい旨をお願いして、ポールもリベラの世話をしてから
出かけるに至った。
まぁ、下手なことにはなるまいと自らに言い聞かせながら。
では、ここからまた実況形式に移ろう。



「バッキンガム宮殿ですって?」

ジョーンがあたしに問いかけてきた。
ややも緊張気味にあたしは頷きながら

「宮殿は今一般公開期間だし…陛下は静養で宮殿に滞在はされていないはずだわ
 …まぁ、さっきポールとも会話したけど担当官とちょっと会う程度でしょう」

「…でも何だか少し奇妙な気分だわ」

ジョーンが少ししみじみと言ったので

「ええと…時期的に貴女が仕えたのはジョージ三世の頃かしら…まだ宮殿なんて
 いい物でもない邸宅だった頃ね」

「そう、ジョージ三世、お子さん達さえしっかりしていれば彼も治世を全うできたのでしょうけどね」

ジョージ三世は非常に上手く政治的にも立ち回りをし、質素を旨とした君主であったけれど、
彼の特に息子達がとても「やんちゃ」だったおかげで晩年彼は精神を病んでしまったのね。
ただ、それで実質的な退位が1811年、当時ジョゼと名乗っていたジョーンがイギリスから去ったのが
1807年から…長く居座っても2,3年だったでしょうから…ジョーンもそのごたごたを
直接見てきたのだろう。

「貴女が直接仕えて未だに続いている「王室」ともなるとここくらいじゃあないの?
 まぁハノーバー朝、サクス=コバーグ=ゴータ朝、ウインザー朝と名目は変わっているけれど」

「そうね…地方領主とか欧州ではそういう人の方に仕えたことが多かったし、19世紀だもの、そろそろ
 そういった活動ではなく全うに生きて行けないかとわたしも手探りを始める切っ掛けだったわね」

「渡英の切っ掛けはニュートン辺り?」

「そうね…自然哲学として…力学の方はわたしにとっては能力的などうこうはないけれど
 自然に規則性があると言うことはやっぱり切っ掛けの一つにはなったわ
 ただ、ニュートン単体よりホイヘンスとかとの絡みの方が興味あって
 イギリス入りしたのは18世紀に入ってからね」

「産業革命も絡んでくるし…その原動力としての蒸気機関、それにまつわる科学とか…
 科学がいよいよ大きく前進する時代ね…あたしもちょっとそう言う空気味わってみたかったかな
 …生きるのは大変だったでしょうけど」

「まぁ…わたし一人ならね…どうとでもなったから…
 キャベンディッシュは今でも思い出深い人だわ」

ジョーンがちょっと遠い目をしたのであたしが

「彼ともそれなりに思い出が?」

「思い出というか…ルナは知っているでしょう?彼の人間嫌い、特に女嫌いは」

「彼の目を盗んで研究に触れるのは容易ではなかったでしょうね」

「ええ、1770年代だったと思うけれど…見つかったのよね」

キャベンディッシュは使用人と極力顔を合わせることを避けていて
「顔を見てしまった」という理由だけで使用人を解雇したこともある、なんて逸話もある
ジョーンは話を続け

「ああ、首になるかな、なんて思ったら…『それが何だかわかるのかね?』って」

ジョーンが声帯模写でキャベンディッシュの真似をする…のだけども今や世界中の誰も
その声を知らない、声の記録なんてそこから100年後のエジソンとかそう言う世界だし…
ただ「甲高い声で喋った」という逸話があって、なるほど、ジョーンのそれも
正に裏声のような男性にしては高い声で喋って居る音を見事に再現していた。
ちなみにジョーンの声帯模写はもはや職人芸レベルなのは言うまでもない。
さらにジョーンが続ける

「まぁそれで…彼が今どんな実験をしていてどんな成果が出ているのかと言う事、
 それで結局は何を調べようとしているのかと言う事を喋ったわ」

「そうしたら?気に入られた?」

「…のかしらね…? ラボアジエの所に行って彼の研究を見てこいって
 渡航費用やらその許可やら…全部お膳立てしてくれてフランスに渡ったわ、何度か」

「勿論報告もしたわけよね?」

「ええ、でも、最初の報告書は「ギリギリ及第点」と言われたわ(苦笑
 自分の研究室に忍び込める技能があるならもっと踏み込めるだろう、と
 そして報告書という物は判る人間にだけ判るように書いてはいけない、とね
 それでまたフランスに渡って…」

「貴女の見てきて触れたものそのものは?」

「余り興味がなかったみたい、わたしの科学に対する興味や理解力を
 ただただ試そうとしてたように感じたわね、おかげで報告書を書くのが上手くなったわ(苦笑」

「そうね(苦笑)キャベンディッシュといえば…名誉欲もなくやりたい研究をとにかく
 やる人のようだし…燃焼も「フロギストン説(酸素とは違った燃焼のメカニズム)」を
 採っていた人だし…ラボアジエが何をしていようと余り気にはしてなかったでしょうね」

あたしが言うと

「ただ…ラボアジエが処刑されたことは悔しがっていたというか…わたしが一報を伝えると
 「愚かなことを…」と呟いたのをはっきり覚えて居る…
 その10年ほど前からわたしはキャベンディッシュの推薦もあって王室に仕えていたのよね
 ただ時々やはりラボアジエの進捗を伺ってきなさいって言われて」

「確かに、損失だわね…」

「彼の推薦って言うのもあってわたしが勉学に勤しむための
 稼ぎ作りっていう動機はジョージ三世には受け入れられやすかったみたい」

「なるほどね、そりゃそうだわ人嫌いで女嫌いの彼の推薦だものね」

「1810年にはなっていなかったと思うけれど…Mrスリムの一件で打ちひしがれて
 イギリスを去ることにしたわたしにキャベンディッシュは顔を合わせなかったけれど
 「お疲れさん」とだけ言ってくれたわ」

「まぁ…ある意味責任を感じたのかもね」

「かもしれないわね」

そんなこんなであたしらは宮殿にやってきた。
近衛兵ではなく、警備のための警官に声を掛け、探偵免許と共に中と連絡を取って貰った。
案内までは寄越されなかったけれど、警官に別の入り口の場所を教えられあたしらが
そちらへ歩を進めると、そちらには観光客もなく門の近くに担当官らしき人物がいた。
あたしらは改めて探偵免許と共に
(ちなみにあたしの免許の写真はひと月ほど前から最近の物に差し替えていた)

「K.U.D.O探偵社の者です、私が副所長のルナ=リリー、彼女が由来の
 シガレットケースを発見しました、ジョーン=ジョット」

「彼」はにこやかに

「どうも、お待ちしておりました、わたくしはランバー・ジャックです」

「聞き及んでおります、わざわざお越し頂いたようで、恐縮です」

「時期的に仕方がありませんな、どうもお噂ですと忙しかったようで
 7月辺りはお声を掛けづらくて」

「お伺いすることくらいは出来ましたのに」

「いえいえ…スタンド使いが民間で民間のための企業を営むなど
 今まで無かったケースですし…お手並み拝見と言いますかな…ははは」

「では貴方もスタンドを?」

「いいぇえ、ただ、その存在は確認していると言うところです
 代々使えていた者にも「今思えば」的に能力者も居たようですし…」

彼は単純に「自分の知る中で」その言葉を言ったのだろう、まさか
その当人が「ここにいる」などとは夢にも思っては居ないでしょうね。
あたしがジョーンにちょっと微笑みかけるとジョーンもやや苦笑の面持ちでそれに応えた。

さて、宮殿内の…観光者の立ち入りが出来ない所を歩いていた時である。

廊下の向こうから配下を従えて歩いてくるのは…
あたしは即座に廊下の縁により、その方向に対して正面になり深々と最敬礼で固まってしまった。

「おやおや…宜しいのですよ、そんなに緊張なさらなくても」

「そうは参りません、陛下…」

まさかまさかの女王陛下だ…やれやれ、あたしは突然のことでもう頭を垂れっぱなしにするので
精一杯になっていた。
あたしが固まったままなので、ランバー氏があたしらの事を陛下に告げた。

「あら、貴方たちが。
 わたくしは今日はたまたま急な接見ががありまして…それも終わったしさて
 戻りましょうかと言うところだったのですが、丁度よい、お茶でも如何?」

「そんな…勿体ない…!」

おかしいなぁ…確かにイギリスに忠誠は誓ったけれど、ここまでガッチガチに緊張するとは…

「まぁまぁ…とりあえず頭をお上げになって、ジョージ三世のシガレットケースなんて
 良く見つけた物だと感心しますよ、とっても地味な物ですもの…
 それでも王室にとっては大切な財産ですからね、静養期間中ですしランバーと
 国防省の担当の者に礼は任せてしまいましたけど、今この瞬間なら丁度いいわ」

あたしはやっと正式な礼儀では有り得ないスピードで直立に戻って

「見つけたのは…こちらの…ジョーン=ジョットです…
 私はその…物自体を知らないので…これは個人的に大学で歴史を専攻していたのも
 ありまして…どのような物か…お教え願えませんか?」

「ああ、そうね、写真はあるはずよ、ランバー?」

「はい、御座いますよ」

「それをお見せするのにも丁度宜しいわね、どうぞ、こちらへ
 確かに…歴史を専攻していたってシガレットケースとなると余程の彫金師なり
 装飾でないと後世にはなかなか伝えられない物ですわね」

陛下の後について行き、ちょっとした部屋に通される。
陛下が上座についた時にオーディナリー・ワールドが小声であたしに

「椅子ハ左カラ着席シマス」

ありがたい…助かる、知らなかった…着席にも手順というかマナーがあるとは…
陛下が先に座る事くらいまでは予想の範囲だったけれど…

ちょっとした茶会が始まるわけだけど…味なんか判らないって、もう…
この際も逐一オーディナリー・ワールドであたしに指示が入る、有り難い…

この茶会にもう一人出席者がやってきた。
国防省のスタンド担当で、バイスロイ=ビターバレー、礼を済ませると
また誰かが入室してきたが、それはランバー氏に写真を渡して直ぐに去った。

「こちらになります」

渡された数枚の写真のシガレットケースは…なるほど、特に目立った加工があるわけでもない
一見して地味な…ただ、地味ながらも施された彫り模様などは格調の高さを思わせた。
ケースを開けた裏側になるほど、紋章があると言えばあるので由来は判る。

「質素を旨とされたジョージ三世らしいと言いますか…しかし格調は流石に高い物ですね」

あたしが言うと

「ねぇ…金銀で飾り立てるでもなく見事な七宝があるわけでもなく…
 「スタンド能力」で見つけられたの?」

陛下の言葉に…ジョーンはこれ…応えにくいだろうな…恐らくこれは
「当時見た事がある」という理由だろうから…

「ジョット女史は…登録によると物理法則再現とありますな…」

ビターバレー氏も言うのだが…あたしがちょっと思案して
フューをジョーンの側に出現させる

「…言ッチャッテイインジャナイ? 貴女ノ身ノ保証ハ何トカスルカラ」

ジョーンは少し俯いてあたしの方をちらっと見た、そして…

「金銀については…比重や物理的性質を「見る」事が出来ます
 シガレットケースにつきましては…わたしは…それを実際に見た事があったからです」

その言葉は流石にその場にちょっとした混乱を巻き起こしたが

「…彼女について…一つ願いを聞き入れて頂きたいのですが、構いませんか?」

あたしの言葉にさらにちょっと微妙な空気になりかけたが

「ええと…わたくしに言われましても、わたくしには何の決定権もありませんよ」

「はい、ですがこれは王室の歴史にもまつわる事です、
 彼女は見た目の年齢ではありません、かつて…ジョージ三世に仕えた事があります」

ちょっとした驚きが巻き起こるのがあたしにも判る。
ランバー氏を向きあたしが

「…かつて、ジョゼ=ジョットという者が…ヘンリー=キャベンディッシュからの推薦で
 ジョージ三世に仕えた記録があるはずです、そしてそのジョゼ=ジョットの肖像が…
 かつて芸術家の卵により油彩で描かれた物が…(と言って携帯の写真を画面に出し)
 こちらになります」

ランバー氏がそれを見て驚き、それをさらに陛下に、そしてビターバレー氏にも見せ
あたしに戻しつつ

「…なるほど」

「当時の報告書が現存し、もし指紋が採れるようでしたら…
 今この…ジョーンの物と比較してみてもいいでしょう、一致するはずです」

ここまで言う…と言う事は信じていい事なのだろうとその場の空気を包み込んだ。

「彼女のスタンド能力は確かに物理法則に基づいていますが…どういうわけか
 歳をとれないのです、望んでそうしているわけではなく、死にたいと思っても
 死ねない体なのです、だから…彼女は方々を彷徨い「それが何故なのか」
 知ろうと勉強を重ねてきました、キャベンディッシュ家の女中になったのも
 理由はそこからです、名前も戸籍も…変えて来ざるを得ませんでした」

そればかり言うとランバー氏が

「…なるほど…いやあの…確か当時の記録はあるはずです…
 念のために確かめに行って宜しいですかな?」

するとジョーンが

「1780年代の中盤辺りにあると思います」

短く、余り感情も入れず、呟いて紅茶を一口。
ゴメン、あたしは踏み込みすぎたかも知れない、でも、貴女には…これが必要なの
ランバー氏が退室すると、ビターバレー氏が

「ああ…ではこの戸籍は…」

「月日、ファミリーネーム以外は偽りと言う事になります」

ジョーンがまた短く言う。

「彼女は…方々の諸侯領主に仕えた事はそれまでもありましたが…
 今も続くイギリス王室にも縁のある人物です、表に立つような
 仕事ではなかったでしょうけれど…それでもイギリスのために働きました。
 …彼女の…今後の居住や活動のために…身の保証を…お願いします…!」

「サンジェルマン公爵のようだわ…、あちらは噂レベルですけれど…!」

陛下もお戯れというか、的確な例えを…

「上流に紛れてパーティーの中で隠密…と言う事もさせていただきましたし…
 役割も似ていたのかも知れませんね」

ジョーンが少し微笑んだ。
ランバー氏が箱を持参し戻ってくる、書類入れらしいそれをテーブルの上に置き
(ちなみに彼は手袋をしていた)
箱を開け、ファイリング分けされていた書類から、恐らくほぼ一発でそれを
引き当て、陛下の元に置いた。

「…確かに、ジョゼ=ジョット…国内の勢力の安定化、掌握に向けて
 ジョージ三世をサポート成されたようですわね」

「はい、ジョージ三世の治世のほぼ終焉少し手前でわたしはMrスリムの内偵で
 負傷し、引退する事にしました、その旨も…あるはずです」

ランバー氏はその書類も即座に見つけ

「…確かに…Mrスリムの内偵、及び捜査をしております…」

「ああ…その名は聞いた事があります…彼も今で言う「スタンド使い」でしたわね?」

「はい、19世紀手前くらいでの…学者の名は忘れましたが…エジプトでの発掘で
 発見された石矢…それにより発動した能力です、そして、他にもそのような事例がないか
 彼は片っ端から人体実験をしていました、わたしは…それについて調査を命じられたのです」

「なるほど、その旨も記載されております…ああ、なかなか胸の悪い内容ですこと…
 その調査した貴女もスタンド使いだったというわけですね?」

「はい、結果としてMrスリムの石矢は現存しません」

ランバー氏がそれについて

「…そういえば、原因と行動についての報告はありますが…そこが余りにショッキングすぎたのか
 矢の所在が不明ですな…これも史料通りです」

「その矢は今…彼女のスタンドの額にあります…象徴化してしまいました」

あたしが言う、そして続ける

「…これは…スタンド攻撃でターゲットの過去に遡りその出来事を史実通りに進める
 事で先に進めるというものを…我が社全員で受けまして…私もそれを見ました」

ランバー氏が

「…記録には…ジョゼ=ジョットにも相当な傷跡があり…とまでしかありませんが…なるほど」

ランバー氏がビターバレー氏にも書類を見せる。

「なるほど…それで当時の…ジョージ三世の私物も私物…あのような一件地味なシガレットケースを
 見知っていた…というわけですね?」

ジョーンはその陛下の言葉に

「はい、ご自分で紙巻きタバコを巻いておられました」

「あらあら…こんな所でなんと凄い生き証人が居たものかしら…!」

あたしは少し語気を強め

「ですから…、彼女の身の保証をお願い致します
 彼女の能力は物理現象の操作です、その気になればどんな破壊活動でも出来たでしょう
 でも、いつだろうとどこだろうと彼女はそれをしませんでした
 熟練したスタンド使いがさらに矢を受けると「レクイエム」という状態を得る事が出来ます
 その状態になればもっと広範囲に問答無用な効果も発揮できますが、彼女はそれもしませんでした
 Mrスリムと言った…人道的にも絶対に許し難い者と対峙した時だけ、それらは発揮されました
 彼女は…破壊するために存在しているのではないと言う事を…どうか、
 今後何が起きようともイギリスだけは彼女の身の保証を出来ますように…お願い致します」

「死にたくても死ねない体…なるほど…今後も死期も何も判らないとあっては…
 またいつか戸籍もいじらねばなりませんものね、確かにいつまでも繰り返せる事ではありません」

陛下が呟くと、ビターバレー氏が

「…ううむ…単なる礼とK.U.D.O社のスタンド使いとしての人員確認の為と
 結構気軽に参じましたが…」

「わたくしは先ほども申しましたが、決定権はありません、ですけど、推薦は致しますよ
 今後もイギリス人として生きるつもりは勿論ありますね?」

ジョーンがあたしを見る、あたしは頷く。

「はい」

「推薦だけは、致しましてよ、ねぇビターバレー」

「はい…ちょっとこれは…しかし今ここで可否は言いにくいですな…ですが
 私の方からも、その旨は推しておきます」

「王室を陰から支えてくださって、本当に頼もしいお方だわ
 ああ、そう、でもね、といって王室の仕事をすぐ…とも参りませんのよ
 今…お付きの専用がおりましてね」

「やはり…そのような自衛手段もお持ちなのですね」

あたしが言うと

「そりゃあまぁ…色々と大変ですもの、メディアが発達した今
 昔より余計なものも一杯漏れてしまいますから」

「真意も曲げられますね」

「ええ、もう、悪意の固まりで探りに来るようなのもね、「特殊能力」を持って…」

「そうですか、今すぐ陛下のお力にはなれないようで、残念です」

「でもほら…同時に二箇所以上…と言った時には…また…頼む事もあると思いますよ」

「宜しくお願いします、光栄です」

では、そろそろ…とハプニング付きのお茶会は終了し、陛下はまた静養先へ戻られた。
ランバー氏とビターバレー氏と共に「本来の」接見の場所だったのだろう場所に移動する途中…
廊下ですれ違う30代ほどの人物…
軽く礼をして通り過ぎようとした時に、その人物からスタンドが沸き起こり、
ジョーンに殴りかかってきた!

…それは当然オーディナリーワールドによって受け止められたし、あたしのリペアーが
迎撃態勢にも入ったところで

「…なるほど…確かに「矢」は象徴化している」

先を行こうとしていたランバー氏とビターバレー氏が驚いて振り返る
あたしは少し怪訝に

「『見せてくれ』と言えば応えましたのに」

「申し訳ない…ある程度パワーなども知りたかった物で…どうしても
 一見野暮で無粋なこの方法が一番確実でね」

ジョーンはそれに

「理解します、わたしも相手の正体が掴みにくい時には確かめに使う手段の一つですから」

特段気にしてないという感じで応えた。
その男性は改めて礼をしながら

「私はベンソン=ビッグホーン、スタンドは『グラス・オニオン』」

そこへビターバレー氏が

「彼のスタンドは登録除外されている、私共も名前しか知らない」

「いいですよ…ビターバレー少佐、陛下からもその旨伝えて良しと許可もおりましたので
 …能力はフィールドを作り上げる能力です。
 そこであってそこでない…数百メートル四方を「現実をコピーしたフィールドに仕立てる」
 能力です、相手に気付かれない間にその中に包み込めば後はどれほど存分に暴れようと
 現実には一切その破壊は伝わりません、逆に距離を置くべき相手には「閉じ込めて」
 自分はその空間から脱し距離を置く事も可能です」

ジョーンがそこに

「生まれついての能力でしょうか?」

彼がその質問は少し意外だったという表情をし

「そうですね、陛下のご即位の数年後から代々仕えております」

「では…1986年冬…貴方…もしくはご両親のどちからに…「彼」が現れませんでしたか?」

DIO=ブランドーね…
なるほど、ロンドンにそれなりに能力者が集まっている事を嗅ぎ付けた上で
彼がここまでやってきて…そこでジョーンとも遭遇した…

「そこが代替わりの瞬間でした、父はDIOに魂を売ることなく散り、
 私がフィールドに包んでとりあえず場を収めました、まぁ、射程外まで
 退いたという方が正しかった、彼は化け物だった」

「ええ、「時を止める」能力の他に彼は吸血鬼でもある、
 その身体能力も人外の物…良く生き延びられたと思いますわ」

「貴女も接触がおありのようで」

「彼が気紛れで助かりましたわ」

なるほど、戸籍の年齢であらば有り得ない時代の会話もしている。
ビッグホーン氏もビターバレー氏もランバー氏もジョーンが見た目の年ではない事
それなりの修羅場も確かにくぐった事を確認した。

「ああ…そういえば…」

あたしが口火を切る。

「ニル=ソルテ氏の遺したビデオ…その依頼人もまた彼女です、
 DIOとの遭遇で警戒のためにモニタリングした物を記録したのがソルテ氏」

「なるほど…大変合点が行きました…ソルテ氏とは?」

ビターバレー氏の発言にジョーンが

「空気分子も距離で倍率を絞って「見える」体質ですので…
 彼の密かな能力…空気に効果を付与できるというのを「見た」訳です
 その使い方などもスタンド使いとして初心者であった彼に少しアドバイスを進言しました」

ビターバレー氏は大きく何度も頷いた。
件のビデオの研究などは彼も携わったのだろうから「そもそも何故こんな物が
 ピンポイントに存在するのか」という疑問が氷解したのでしょうね。
ビッグホーン氏も解析に協力したのでしょうから、彼も頷いている。

「なるほど、貴女の身の保証、私も推薦します」

ビッグホーン氏がそう言うとランバー氏が

「ああ、彼のお墨付きも得たと言う事は…承認を待たずほぼ確定とお考えください
 詳しい戸籍の調整時期などについてはまた後ほどという形になりますが」

「では…ビッグホーン氏も何らかの政治的立場が?」

あたしが問うと

「いえ…ただ…裏に立つとは言え公式な立場でのスタンド使いなど
 そんなに居りません、一般のスタンド使いの軽い認証や判断は…
 貴女方も知っているでしょう、モア警部に委ねられていますし、
 彼の細君もまた少し違う分野…軍の伍長以下での管理の役目もあります」

「なるほど…特に重要と思われるスタンド使いになると、貴方の調査が入ると言う事ですね」

あたしが言うと、彼がまた少し深くお辞儀をした。

「…と、言って立場を縛るつもりもありませんよ…まだまだスタンド使いは
 公式に知るところではありますが公(おおやけ)の存在ではありませんから」

それについてはあたしら二人がお辞儀で返す。

「…ただ…私一人では手に負えないと言うような事がありましたら…
 その時は来ていただきます、基本的に拒否権はない物と思ってください」

「それについては…覚悟の上で彼女の身の上の保証を頼みました
 その際は私も同行と言う事で宜しいでしょうか?」

あたしが聞く。

「貴女のスタンド…最近登録が変わりましたね、ビターバレー少佐」

「ええ、特殊能力には変化はなく、ただ特殊能力を伴わなければ射程がかなり伸びたということで」

「とても早かった、スピードはA+…下手をしたら++かもしれないほどに
 そして確実に私の眉間も狙っていた、覚悟のあるお方だと判断しました、いいでしょう
 貴女も緊急時にはお願いしたいと思います」

「宜しくお願いします」

ビッグホーン氏はそして、この事を陛下に報告する目的と、本来の王室警護で
またその場を去っていった。

「やれやれ、なぜ一般人である私が担当官なんでしょうな」

見送りながらビターバレー氏が呟いた。

「生まれつきでもない限りスタンド使いになるかならないかは非常に危険な賭です
 そうそう都合良いものではありませんよ」

「そういえば…貴女は矢によっての発現ですな」

「ええ…その後BC社の刺客…狙いはジョーンでしたが…その戦いの中で成長できました」

「スタンドの成長ですか…確かに事例はあるようです、そのBCの者は?」

ジョーンがあたしを心配するように見る

「…その前に…その話題…宜しいのでしょうか?」

ビターバレー氏がこれまたモア警部の時のように「やれやれ」と言った面持ちで

「担当が違うのですよ、王室の裏警護は先ほどのビッグホーン氏、
 BCと言った手合いは政府の裏…私は表の管理なのでそちらにはタッチできませんで」

「なるほど…何しろその舞台は1945年のベルリンの地下…証拠もない事ですので
 証言のみになりますが、その刺客…ゼファーは私が殺しました」

なるほど…という面持ちでビターバレー氏が少し硬い表情をする。

「少し…話せる範囲で構いません、今までの事を幾分お教えください」

ビターバレー氏の言葉にあたし達はYesの方向で、ランバー氏と共に
夕方近くまでこの半年の間の出来事を幾らか話した。


第六幕 閉

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